過去最多の座衆を迎えHyper-Editing Platform[AIDA]Season4「意識と情報のAIDA」開幕!

2023/10/22(日)07:00
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10月に入るや、2022年度の小中学生の自殺者が過去最多と発表された。中東からはハマスとイスラエルの武力衝突により街中に真っ赤な炎と黒煙が立ちのぼる映像が速報され続け、「人間とは何か」「生とは何か」という問いが秋雨のごとく降り注ぐ。10月14日(土)に開幕したHyper-Editing Platform[AIDA]Season4は、まさにこうした問いに高速・高密度・高濃度に切り込み「編集的社会像」を構想していく比類なき「知のコロシアム」である。

 

[AIDA]とは?

[AIDA]は2005年にHyper-Corporate Universityとしてスタートし、以後15年にわたり世界で活躍する次世代リーダーを育成し続けてきた。コロナ禍の2020年、「《知を授かる場=ユニバーシティ》では間に合わない」という危機感のもと、《知を創発し合う場=プラットフォーム》として仕立てを刷新。「編集力」をより前面に打ち出し、Hyper-Editing Platform[AIDA]の名であらたな世界編集に乗り出した。

 

◆座長ははじめに何を語ったか

Season1【生命と文明のAIDA】、Season2【メディアと市場のAIDA】、Season3【日本語としるしのAIDA】に続くSeason4のテーマは【意識と情報のAIDA】だ。2023年10月から2024年3月までの6カ月間、「月に1度のリアルセッション全6講」と「常時オープンのオンラインラウンジ」にて対話と思索を深めていく。

 

「今季のテーマである【意識と情報のAIDA】は、どうしてもみなさんに総ざらいしてほしい、ずっと考えてもらいたいことです」。リアルセッション初日、導入講義でこう切り出した座長松岡正剛は、「情報」の歴史を宇宙の発生にまで遡り、生命、文明、メディアと一気通貫してみせたかと思えば、「意識」についても脳、共同体、神、社会、遊び、アカデミー、仏教と超領域にキーワードをつないでいく。さらに【意識と情報のAIDA】の旧来の見方A、転倒してきた見方B、AにもBにもない見方Cを示し、科学やARS(方法)を加えて「編集的世界観」へと向かった。時間にして約1時間、配布資料の厚さにして1mmにも満たないなかに縦横無尽に連打・連結されていく「あいだ」の数々に、受講者である座衆たちは圧倒されながらも必死で食らいついていた。

▲多数者を相手に万人受けを狙うのではなく「少数なれど熟したり」を信条として場を編集してきた松岡座長であるが、時代が[AIDA]を求めるようになったのか、今季は過去最多の41名を座衆として迎えた。

 

▲「編集的世界観へ」のあとに記された「情報と意識の由来と将来を関係編集するべき」という言葉に何度も目をやる座衆たち。

 

◆座長はおわりに何を語ったか

[AIDA]第1講ならではの光景といえば、AIDAボードの全員集結だ。今季のボードメンバーはメディア美学者の武邑光裕情報工学者の村井純作家で元外務省主任分析官の佐藤優社会学者の大澤真幸元法政大学総長で江戸文化研究者田中優子文筆家で編集者でYouTuberでもある吉川浩満の6名。情報の握りを変え、球速も球筋もさまざまに【意識と情報のAIDA】を巡る「見方」や「問題意識」をつぎつぎと場に投げ入れる。そこに座衆も加わっての交わし合いが続き、最後は松岡座長のメッセージで第1講は締めくくられた。

 

▲世田谷豪徳寺の「本楼」を埋め尽くす座長、ボード、座衆。松岡座長が「このプラットフォームは編集工学研究所の看板だ」といった[AIDA]Season4がここから加速していく。

 

生成AIの話題がことのほか多かった第1講を振り返りながら、松岡座長が場に放った問いをすこしご紹介しよう。

 

1.生成AIに似たようなことは文明のなかにかつてあったのか?諸子百家は?活版印刷は?電話は?

 

2.すでに地球上の多くの、特に高度資本主義、高度情報社会を成し遂げた先進国は、生成AI以前に生成AI化していたのではなかったか?ピアソラ以降ピアソラはいない。シェーンベルク以降シェーンベルクはいない。ジョン・ケージ以降、イサム・ノグチ以降、彼らはいない。いまのアートもJPOPもシャンソンも日舞も非常に平均化され、生成AI化されてまったく面白くない。僕はずっとそれを言い続けてきた。

 

3.われわれは想像力を自分たちに戻し過ぎているのではないか?過去の文明のなかの画期的なものが、未だ見ぬ夢を見ていたかもしれない。ヘーゲルや空海やアインシュタインが果たせなかったこと、チューリングやガロアがやり残したこと、グラハム・ベルやグレン・グールドやマダムキュリーやフリードリッヒ・ガウスが思い描いていたこと…歴史のなかで暗闇に置き去られ、光が当たらなかった知も含めて、文明の成果は果てしないほどにある。

 

『ルナティックス』や『フラジャイル』を持ち出しながら「壊れやすいなにかを探す編集力」というキーワードにも言及した。

 

冒頭と締めの松岡座長メッセージの「あいだ」でいったい何が交わされたのか。そこはぜひみなさんに想像していただきたい。

 

 

 

 

アイキャッチ画像:編集工学研究所デザイナー穂積晴明

 

 


  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。