空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。

編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。
「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。
そらをとぶバイクみたいなはちがくる
千夜千冊362夜『小学生の俳句歳時記』(金子兜太・あらきみほ)でピックアップされていた小一男子の句だ。バイクに見立てられたはちさながらの速度と勢いで、アイディアを実現していくのが子どもフィールドだ。
子どもフィールドでは、2ヶ月に一度、千夜千冊共読会をオンラインで開いている。今回は、佐々木千佳学林局局長、松井路代冊師、ライター・林愛の3名で、362夜を読んだ。
当夜のほとんどは、小学生の俳句とそれを感じた松岡校長の評で構成されている。まずは3句ずつ交代で音読した。違う声、違う地域に住むメンバーのイントネーションによって、ひとりひとりの子どもたちの息遣いが想像される。
それを味わった後は、図解ワーク。俳句と評の連打の一夜をどうやって一枚の紙に展開するか。難問だ。
メンバーの図解が画面に現れると、自分が探り探り表したそれとの違いにハッとする。そうか、そういう見方があったんだ。松井冊師は、小学生の俳句と校長の評との間に、子ども編集学校が実装したい評価のモデルを見出した。佐々木局長は、校長も「ドカン!」と衝撃を受けた子どもたちの発想の方法を分類し、情報を動かしていくツールがつくれると話した。
松井冊師の図解
ではこれをどう子ども編集学校に乗せていこうか。即座にこの問いにつなげるところが、バイクみたいな子どもフィールドの推進力だ。まして、今回のテーマである俳句は、いかようにもお題を引き出せる粘土のようなのだ。共読会の後半では、まずメンバーがあれこれ粘土をこねて遊んだ。
その中のひとつ。子どもが取り組みやすいお題にするための導入を考えながら、まず5音7音の単語リストをつくるというのはどうか、という案が出た。リズムに慣れることができるし、そこから五七五に組み立てるのも、アワセの妙がたのしめるのではないか。
「じゃあ、やってみましょう!」さっそくワークへ促す松井冊師。3分間で思いつくままに5音の言葉をZoomのチャット欄に並べていく。はじめのひとつが出ると、思ったよりもするする出てくる。ちなみに、ライター・林の蓋を開いた5音は「はしご酒」・・・。ずらっと並ぶとその人が露呈するのもおもしろい。
次は7音。あれ、5音と勝手が違う。7音の名詞はなかなか出てこない。「遠い夏の日」などの形容詞+名詞、「肩を並べて」などの名詞+動詞も射程に入れるとまたどんどん出てきた。
さあ、これを五七五に組み合わせる。なんとかひねり出すようになるかと思われたが、これが結構どんなアワセでも物語が見えてくる。たとえば、「胸騒ぎ津軽海峡ひざ枕」「誕生日軽いしもやけ胸騒ぎ」…言葉と言葉を両手に、胸騒ぎも心躍りも、好きな化学変化が起こせる。子どもとだとさらに飛躍がありそう!とメンバーは口を揃えた。
ほかにも「じゃあやりましょう」というアイディア即プランが生まれ、ブンブンと飛ばしながら、ツーリングをたのしんだ。
子どものような思いつきが言える場所、それですぐに遊べる場所、放課後まず行ってみる公園のように、4月も共読会は開かれる。予定しているのは、1764夜『ホモ・デジタリスの時代』(ダニエル・コーエン)。「Hyper-Editing Platform[AIDA]」ではボードメンバー・武邑光裕さんが「2035年には仕事の半分はメタヴァースで行われ、2050年にはメタヴァースのGDPが現実の国家経済を追い越すだろう」とレクチャーしている。これから子どもたちが生きていく「時代」に思いを巡らせたい。
付録:共読会で持ち寄られた子ども×俳句本
金子兜太・監修『子どもと楽しむ俳句教室』(誠文堂新光社)
あべ弘士『どうぶつ句会』(学研)
谷川俊太郎・皆川明『はいくないきもの』(クレヨンハウス)
文:林愛
イドバタ瓦版組
「イシス子どもフィールド」のメディア部。「イドバタイムズ」でイシスの方法を発信する。内容は「エディッツの会」をはじめとした企画の広報及びレポート。ネーミングの由来は、フィールド内のイドバタ(井戸端)で企画が生まれるのを見た松岡正剛校長が「イドバタイジング」と命名したことによる。
【よみかき探Qクラブ】ことば漬になって遊ぼう_秋メンバー募集中!
「よみかき探Qクラブ」では、ナビ役書民(しょみん)とクラブメンバー(Q人_キュート)が日々にぎやかに、「読み手」「書き手」になりながら、「よみ」「かき」の方法を探究しています。自らの読み書きを磨きながら、イシスの内と外 […]
よみかき探Qクラブ・ヒビ vol.1疲れすぎて読めない夜のために
多読アレゴリアよみかき探Qクラブでは「ヒビ」という文章が広がりつつあります。松岡校長の短信「セイゴオひび」に触発されて生まれたスタイルです。 書き手はふと触れた日常のひび割れをすかさず綴り、読み手はそれに誘発されてまた別 […]
【よみかき探Qクラブ】日記・焼きそば・新幹線〜「書く」についてのイドバタトーク
よみかき探Qクラブでは、ざっくばらんに「読むこと」「書くこと」について語らうイドバタトークを定期的に開いています。 54守で師範代を務めた美濃万里子さんのほのぼのツッコミとともに、当日のキーフレーズをご紹介します。 &n […]
【よみかき探Qクラブ】メンバー募集中!8人の書民の横顔とたくさんのQ
「よみかき探Qクラブ」は、愉快に生きるための言葉・心・体をつくる方法をブラッシュアップし、伝えていく場です。ただいま、秋の読み・書き・学ぶ探Q人を大募集中です。 「読む」「書く」を続けるコツは、読み手がいること、書く場 […]
【よみかき探Qクラブ】夏メンバー大募集!愉快に生きるための「読み」「書き」をヒビに挟もう
☆愉快に生きるための言葉・心・体をつくる☆ 「よみかき探Qクラブ」では、クラブメンバー(Q人_キュート)が日々にぎやかに、「読み手」「書き手」になりながら、「よみ」「かき」の方法を探究しています。自らの読 […]
コメント
1~3件/3件
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。
2025-09-04
「どろろ」や「リボンの騎士」など、ジェンダーを越境するテーマを好んで描いてきた手塚治虫が、ド直球で挑んだのが「MW(ムウ)」という作品。妖艶な美青年が悪逆の限りを尽くすピカレスクロマン。このときの手塚先生は完全にどうかしていて、リミッターの外れたどす黒い展開に、こちらの頭もクラクラしてきます。
2025-09-02
百合の葉にぬらぬらした不審物がくっついていたら見過ごすべからず。
ヒトが繋げた植物のその先を、人知れずこっそり繋げ足している小さな命。その正体は、自らの排泄物を背負って育つユリクビナガハムシの幼虫です。