この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。
「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。
そらをとぶバイクみたいなはちがくる
千夜千冊362夜『小学生の俳句歳時記』(金子兜太・あらきみほ)でピックアップされていた小一男子の句だ。バイクに見立てられたはちさながらの速度と勢いで、アイディアを実現していくのが子どもフィールドだ。
子どもフィールドでは、2ヶ月に一度、千夜千冊共読会をオンラインで開いている。今回は、佐々木千佳学林局局長、松井路代冊師、ライター・林愛の3名で、362夜を読んだ。
当夜のほとんどは、小学生の俳句とそれを感じた松岡校長の評で構成されている。まずは3句ずつ交代で音読した。違う声、違う地域に住むメンバーのイントネーションによって、ひとりひとりの子どもたちの息遣いが想像される。
それを味わった後は、図解ワーク。俳句と評の連打の一夜をどうやって一枚の紙に展開するか。難問だ。
メンバーの図解が画面に現れると、自分が探り探り表したそれとの違いにハッとする。そうか、そういう見方があったんだ。松井冊師は、小学生の俳句と校長の評との間に、子ども編集学校が実装したい評価のモデルを見出した。佐々木局長は、校長も「ドカン!」と衝撃を受けた子どもたちの発想の方法を分類し、情報を動かしていくツールがつくれると話した。
松井冊師の図解
ではこれをどう子ども編集学校に乗せていこうか。即座にこの問いにつなげるところが、バイクみたいな子どもフィールドの推進力だ。まして、今回のテーマである俳句は、いかようにもお題を引き出せる粘土のようなのだ。共読会の後半では、まずメンバーがあれこれ粘土をこねて遊んだ。
その中のひとつ。子どもが取り組みやすいお題にするための導入を考えながら、まず5音7音の単語リストをつくるというのはどうか、という案が出た。リズムに慣れることができるし、そこから五七五に組み立てるのも、アワセの妙がたのしめるのではないか。
「じゃあ、やってみましょう!」さっそくワークへ促す松井冊師。3分間で思いつくままに5音の言葉をZoomのチャット欄に並べていく。はじめのひとつが出ると、思ったよりもするする出てくる。ちなみに、ライター・林の蓋を開いた5音は「はしご酒」・・・。ずらっと並ぶとその人が露呈するのもおもしろい。
次は7音。あれ、5音と勝手が違う。7音の名詞はなかなか出てこない。「遠い夏の日」などの形容詞+名詞、「肩を並べて」などの名詞+動詞も射程に入れるとまたどんどん出てきた。
さあ、これを五七五に組み合わせる。なんとかひねり出すようになるかと思われたが、これが結構どんなアワセでも物語が見えてくる。たとえば、「胸騒ぎ津軽海峡ひざ枕」「誕生日軽いしもやけ胸騒ぎ」…言葉と言葉を両手に、胸騒ぎも心躍りも、好きな化学変化が起こせる。子どもとだとさらに飛躍がありそう!とメンバーは口を揃えた。
ほかにも「じゃあやりましょう」というアイディア即プランが生まれ、ブンブンと飛ばしながら、ツーリングをたのしんだ。
子どものような思いつきが言える場所、それですぐに遊べる場所、放課後まず行ってみる公園のように、4月も共読会は開かれる。予定しているのは、1764夜『ホモ・デジタリスの時代』(ダニエル・コーエン)。「Hyper-Editing Platform[AIDA]」ではボードメンバー・武邑光裕さんが「2035年には仕事の半分はメタヴァースで行われ、2050年にはメタヴァースのGDPが現実の国家経済を追い越すだろう」とレクチャーしている。これから子どもたちが生きていく「時代」に思いを巡らせたい。
付録:共読会で持ち寄られた子ども×俳句本
金子兜太・監修『子どもと楽しむ俳句教室』(誠文堂新光社)
あべ弘士『どうぶつ句会』(学研)
谷川俊太郎・皆川明『はいくないきもの』(クレヨンハウス)
文:林愛
イドバタ瓦版組
「イシス子どもフィールド」のメディア部。「イドバタイムズ」でイシスの方法を発信する。内容は「エディッツの会」をはじめとした企画の広報及びレポート。ネーミングの由来は、フィールド内のイドバタ(井戸端)で企画が生まれるのを見た松岡正剛校長が「イドバタイジング」と命名したことによる。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
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2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。