中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
乱世には理想に燃える漢が現れる。
55[守]近大番に強い味方が加わった。その名もハンシ。「伴志」と書く。江戸時代の藩を支えた武士のようであり、志高く新時代を切り開いた幕末の志士のようでもある。近大番が、主にペースメークやお題解説、稽古の仕方を近大生に伝えれば、伴志はよりメタな視点で編集を語る。
その新しいロールを担ったのは蒔田俊介。44[守]間架結構教室、44[破]ミドル永字教室の師範代を経て、花伝師範を務めた。また黒膜衆としてイシス編集学校のイベントを支えている。感門之盟で司会を務めるなどトークにも定評がある。仕事は「資本主義のど真ん中」と言うが、編集工学に軸足を置き、近大生と編集工学、近大生と世界をつなぐ。侍の目をしている。
黒膜衆としても活躍。青眼の構えでカメラを持つ蒔田
蒔田は言う。「『はんし』という音はいろいろな連想を呼び込めそうで膨らませていきたい。そのとき真ん中に置くのは、字義からも何かやろうとしていることへの伴走。本人も気づかぬ志にカーソルを向けられるようにできたらいいと思っています」
稽古に伴走し、近大生のカーソルを刺激すべく、「志便(しび)」と名付けた編集語りを数日おきに届けている。
初回は55〔守]開講翌日の5月13日。編集稽古ではなぜ振り返りが必要なのかを、AI資格を必修化した企業とつなげて語った。情報をインプット・アウトプットする際、ヒトとAIにはどんな違いがあるのか-正解を示すわけではなく、学生にも考えさせた。
以降、『情報通信白書』とフィルターを重ね、池上彰・入山章栄の対談本『宗教を学べば経営がわかる』で地と図を、アートとサイエンスをカブキっぽいことに、2歳の愛娘も登場させ(寝起きは機嫌がよくないらしい)レッテルとラベルを、たくさんのわたしをキャリアにつなげて語った。稽古の進捗に合わせて届ける話題が変幻自在なのだ。
蒔田は伴志として近大生に何を伝えたいのか、最後に聞いてみた。
「リカレント教育なんて言われていますが、そんなこと言われる前から、場はどうあれ、仕事と学びは循環(リカレント)していたと思います。仕事柄、新卒社員やその直前の内定者/候補者と面談や面接をします。そうした接点から感じること、こうしておくと良かったと思うことを取っ掛かりに、どんなことを伝えるか考えています。考えているのは結局のところ、これからも続けていく学びにきっと必要になってくるであろう編集工学の考え方、その一端だけでも伝えたい」
最新の「志便」では、ロジカル・シンキングに触れ「論理ではなく物語、物語という方法が求められつつある」と書いた。蒔田の編集工学ど真ん中の言葉が、近大生の志を動かす。
人を見つめる眼差しはやさしい
写真提供/蒔田俊介・衣笠純子
アイキャッチ/稲森久純
文/景山和浩
週刊キンダイ 連載中!
週刊キンダイvol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
週刊キンダイvol.002 ~4日間のリアル~
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
かなりドキッとした。「やっぱり会社にいると結構つまんない。お給料をもらうから行っておこうかなといううちに、だんだんだんだん会社に侵されるからつらい」。数年前のイシス編集学校、松岡正剛校長の言葉をいまもはっきりとはっきり […]
花伝所の指導陣が教えてくれた。「自信をもって守へ送り出せる師範代です」と。鍛え抜かれた11名の花伝生と7名の再登板、合計18教室が誕生。自由編集状態へ焦がれる師範代たちと171名の学衆の想いが相互に混じり合い、お題・ […]
これまで松岡正剛校長から服装については何も言われたことがない、と少し照れた顔の着物姿の林頭は、イシス編集学校のために日も夜もついでラウンジを駆け回る3人を本棚劇場に招いた。林頭の手には手書きの色紙が掲げられている。 &n […]
週刊キンダイvol.018 〜編集という大海に、糸を垂らして~
海に舟を出すこと。それは「週刊キンダイ」を始めたときの心持ちと重なる。釣れるかどうかはわからない。だが、竿を握り、ただ糸を落とす。その一投がすべてを変える。 全ては、この一言から始まった。 […]
55[守]で初めて師範を務めた内村放と青井隼人。2人の編集道に[守]学匠の鈴木康代と番匠・阿曽祐子が迫る連載「師範 The談」の最終回はイシスの今後へと話題は広がった。[離]への挑戦や学びを止めない姿勢。さらに話題は松 […]
コメント
1~3件/3件
2025-10-29
中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
2025-10-28
松を食べ荒らす上に有毒なので徹底的に嫌われているマツカレハ。実は主に古い葉を食べ、地表に落とす糞が木の栄養になっている。「人間」にとっての大害虫も「地球」という舞台の上では愛おしい働き者に他ならない。
2025-10-20
先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。