地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。
今日は何の日? 正解は「防災の日」。祝日ではありませんが、敬老の日や勤労感謝の日のように、その名のとおり、災害についていろいろ考えてみましょうという日なのですが、なぜ9月1日が防災の日なのか知っていますか?
防災の日は、97年前の今日、11時58分に発生した関東大震災にちなみます。大正の末期、震災は東京の地盤だけでなく、日本と世界の歴史をも大きく揺るがしました。アナキストの大杉栄は虐殺され、浅草を中心とした江戸文化は焼滅し、大正ロマンも一時中断。帝都復興の掛け声とともに、またたくまに満州事変、 五・一五、二・二六事件と暗黒の昭和史に突入していきます。松岡正剛『フラジャイルな闘い 日本の行方(連塾 方法日本Ⅲ)』では、大正時代は「現代史へのトランジット・エイジ」だったと書かれています。
また、千夜千冊で調べてみると、1367夜『マネーの進化史』のニーアル・ファーガソンが興味深い見方を提示しています。関東大震災が日本をして世界最初の保険国家に仕立てたというのだというのです。興味のある方は千夜千冊を読んでみてください。

水木しげる『コミック昭和史 第1巻 関東大震災〜満州事変』(講談社)
「ゲゲゲの鬼太郎」でよく知られている水木しげるに、「コミック昭和史」というシリーズがあります。その第一巻が「関東大震災〜満州事変」です。「コミック昭和史」と謳いながら、あえて大正末期の関東大震災から描き始めているのは、水木の誕生日が震災の前年の1922年だったからなんですが、昭和の序章が震災から始まったとも言いたかったのかもしれません。余談ですが、そういえば堀江純一の「遊刊エディスト」人気連載「マンガのスコア」で、水木しげるはまだ登場していませんね。そろそろかな。
さて、なぜわざわざ「防災の日」のお知らせジャストを書いたのかというと、記事のタイトルにもあるように、今日からスタートしたできたてほやほやの連載マンガ「GOZ」のご紹介が最終ターゲットです。その「GOZ」というのが実のところ、筆者である金宗代の自主編集企画なのです。言っちゃえば、宣伝となんら変わらないのですが、この企画は金宗代なりのオグカナ=タレブの「身銭を切れ」ふうの編集的実践でもあり、どうか手前味噌で僭越ながら、物語のあらすじと、このたびタッグを組んだ漫画家の駕籠真太郎さんのプロフィールを簡単にナビらせてください。
本作は、ペリーの黒船来航から関東大震災にいたるまでの日本近代史SFです。物語のメインは大正時代で、話題作の「鬼滅の刃」をはじめ、マンガではよく使われる時代設定ですが、97年前の今日、歴史を変える大惨事となった関東大震災は、実はこれまでほとんどマンガで描写されることはありませんでした。宮崎駿のアニメ「風立ちぬ」が珍しいくらいで、その主題へのチャレンジの意味を込めて、防災の日である9月1日、11時58分に連載を始めることを決めました。

Flying Lotus『You’re Dead!』(Warp Records)
駕籠真太郎さんは知る人ぞ知るの方ですが、「駕籠真太郎は日本のダリだ」(『超動力蒙古大襲来』帯文)と言れたり、世界の権威ある漫画賞イタリア・グラン・グイニージやサロン・デル・マンガ・デ・バルセロナなどを受賞し、フライング・ロータス『You’re Dead!』のジャケットワークを手がけたこともあります。また、フランス、アメリカ、香港はじめ各国で個展を開催するなど、海外で高く評価されています。「駕籠真太郎」でググってみるとこれはなんだか凄いなというのは伝わると思います。
ちなみに「GOZ(ゴズ)」というタイトルは、駕籠さんの発案なんですが、コロナ禍で大きく注目を浴びたアマビエと同じく悪疫(疫病)を防ぐ神の牛頭天王 (ゴズテンノウ)に由来するとか、しないとか。インスタグラムその他SNSで、ちょっとずつですが、毎日連載するので、ぜひちょこちょこ覗きにいらしてください。さっそくコミックナタリーでも取り上げてもいました。なにとぞご贔屓に。
「GOZ」の連載はこちらのSNSから。
◉Instagram:
https://www.instagram.com/goz_official/
◉Twitter:
https://twitter.com/GOZ0901
◉Facebook:
https://www.facebook.com/GOZ0901
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:夢野久作
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
募集開始★多読アレゴリア2026 料理?源氏? 新クラブ紹介
多読アレゴリアの新シーズン(2026・冬)の募集が始まります。 先月は創設1周年を記念して、多読アレゴリア主催の「別典祭」が開催されました。ほんのれんクラブやオツ千の生ライブ、着物コンパクラブのファッションショーなど […]
募集開始★津田一郎の編集宣言《カオス理論で読み解く「守破離」と「インタースコア」》 イシス編集学校[守]特別講義
●「編集宣言」とは? イシス編集学校の基本コース[守]では、毎期、第一線で活躍するゲストを招いた特別講義「編集宣言」を開催しています。これまで“現在”アーティストの宇川直宏さん、作家の佐藤優さん、社会学者の大澤真幸さんら […]
11月は別典祭へいこう! 二日限りの編集別天地?【11/23-24開催】(11/21更新)
11.21更新 2日間通しプログラム詳細(EDO風狂連)を更新しました。 11.20更新 2日間通しプログラム詳細(勝手にアカデミア、イシス編集学校、別典祭感門団)を更新しました。 11.18更新 2日間通しプログラム詳 […]
【12/9ライブ配信】田中優子×鈴木健「不確かな時代の方法としての政治 Pluralityと相互編集」
12月9日(火)14時より、イシス編集学校の学長・田中優子と、co-missionメンバーの鈴木健さんによる特別対談を開催します。タイトルは「不確かな時代の方法としての政治 Pluralityと相互編集」です。 &nbs […]
小倉加奈子さん新刊『まぢすご』は何が「すごかった」? 特製しおり付で販売決定@別典祭(11/23-24)
編集学校の小倉加奈子さんが新書を出した。松岡正剛校長と田中優子学長を除けば、編集学校で新書を書いたのはおそらく唯一、小倉さんだけだろう。これは快挙だ。 また、新書といえば、優子学長の『不確かな時代の「編集稽古」入門』 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-09
地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。
2025-12-02
{[(ゴミムシぽいけどゴミムシではない分類群に属している)黒い星をもつテントウムシに似た種]のように見えるけど実はその偽物}ことニセクロホシテントウゴミムシダマシ。たくさんの虫且つ何者でもない虫です。
2025-11-27
マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/