「僕は何かを始めるとき、託せる人を、まず決めている」
ロールに人を充てるのではなく人からロールをつくる松岡正剛が、今期、[守][破]のカット編集を託したのが、この二人だ。2021年春期に誕生した新ロール“番記者”。47[守]に上杉公志、46[破]に梅澤奈央。共に松岡が「彼らこそ次代のスター」と希望を託すiGenセブンの一角を担う。
オモテもウラも舞台裏に張り付き続けた番記者が、[守][破]5人衆を本楼に迎えた。そこで語られたそれぞれの「DANZEN」と稽古の行方を連写する。
■川崎継子さん
47[守]ピアソラよろしく教室(北條玲子師範代/武田英裕師範)
ある日訪れた角川武蔵野ミュージアムで、アルス・コンビナトリアな編集空間に撃たれて、イシスに入門。[守]名物お題のひとつ「豆腐で役者をわける」では、近代日本文学の作家をお酒で分類し、師範代をも夢中にさせた。コインランドリーの20分間で回答し、コラージュ文学に自分の目をパーツとして入れ込む。そのルール編集の心意気に、世界を律するラディカルな気概が見え隠れ。知も美も快も闇も束ねた次なる角川武蔵野ミュージアムを地元新潟につくらんと欲する“つぐちゃん”は、[破]のプランニング編集術で<よもがせわほり>を得て鬼に金棒。
わたしのDANZEN ◆ 萩原朔太郎の猫町を表現したコラージュ文学
■石倉徹さん
47[守]本達ビードロ教室(下田富美子師範代/吉居奈々師範)
2019年度ハイパーコーポレートユニバーシティ最終期の塾生。先輩塾生で[離]千離衆でもある福元邦雄のふるまいに感服し、心残りを抱えてイシスの門を叩く。稽古の借りは稽古で返す。自ら切り込み隊長と称し速攻回答で独走しつつ、教室の全学衆の回答に即応コメントを返し、あのときできなかった共読を起こし続けた。感銘を受けた他者の回答の話になると止まらない。HCU最終講義で塾長松岡正剛が迸らせた「引き受ける」覚悟に感応した以上、編集を終えようとする世界をみすみす見てはいられない。どんな教室名が命名されるか、楽しみですね。
わたしのDANZEN ◆ デザインに一目惚れしたヴィヴィアン・ウエストウッドの長財布
■加藤陽康さん
47[守]アレンジ万端教室(中原洋子師範代/中村麻人師範)
受験期に『多読術』と『知の編集工学』と出会い、救われた。「その時から生きてるなという感覚になったので、松岡校長に感謝しています」。何もかもが嫌すぎた世界が一変する衝撃の瞬間を体験して、音大とイシスへ。網戸を渡る蝉に自由の使者の気配を見、『多読術』から「早く着替えて、この部屋を出て遊びに行こうよ」という声を聞いた察知力は、イサムノグチ展での松岡校長との偶然の邂逅までも引き寄せた。「僕は蝉になれたかな」という吐露に、眼前の松岡校長が『日本流』序章の三木露風で返じた一幕は今も深く残響している。
わたしのDANZEN ◆ 愛用のテナー・サキソホン
■義原星乃さん
46[破]あたりめ乱射教室(森本康裕師範代/天野陽子師範)
46[破]知文AT賞でアリストテレス賞大賞を受賞した。選本は白川静『文字逍遙』。「何万本もの針が身体を貫通したかのようにヒリヒリする」と語り起こした5つのカメラは、真っ赤な表紙の女性に、担う強さと弱さの一種合成を読み取った。学生時代には全国入賞歴もある英語ディベーターだったが、相互編集で正しさの二項対立を超えていくイシスの世界観が琴線に触れる編集の申し子。勤務先の本部長との文通により「松岡正剛」の名を知ったころ、ヨガを習い始めればその教室の先生はイシスの師範。純度満点の好奇心が引き寄せた“あたりめ”の強さでさらなるダンゼンへ。
わたしのDANZEN ◆ 雑誌『STUDIO VOICE』
■宮川隆さん
46[破]互次元カフェ教室(品川未貴師範代/新井陽大師範)
2008年入門。20守破から多読ジムを経て、13年ぶりに帰り咲き。校長直伝の読相術を実践し、毎日90分読書を継続中の剛の者ミヤガワ。隆々の読筋と編集の型で、知文AT賞では『万物理論』に挑み、プランニング編集術では語られてこなかった日本と岩波文庫のインタースコアに向かった。圧巻の本棚と寅さんスタイルでzoom登壇。教室代表として皆でプランを磨いていく過程を「まるで一冊の本をつくるような体験」と見立てた多読の申し子は、交わしあう中で刻一刻と変化していく姿に編集のアクチュアリティを体感した。焚書帝国への逆襲、本人間万歳!
わたしのDANZEN ◆ 千夜千冊 数寄三冊
1000夜『良寛全集』 良寛
1283夜『縄文人の文化力』小林達雄
1418夜『日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る』梅原猛
「学衆がいいねえ」と松岡校長も終始目を細めていた五人衆。学衆がダンゼンなら、バンキシャもダンゼン。Wボケツッコミの凸凹コンビを束ねて仕切って薙ぎ払った「編集力」の林朝恵もダンゼンだった。
左から、半地下の男こと守バンキシャ・ヤドカリ上杉、ツッコミ精神とリスペクトの破イブリッド記者うめこ。
登壇が終わるやマイクをビデオカメラに持ち替えた林は2日間ぶっとおしで動画記録を撮影しつづけた
写真 記事本文:福田容子
アイキャッチ:池田かつみ
義原さん:後藤由加里
福田容子
編集的先達:森村泰昌。速度、質、量の三拍子が揃うのみならず、コンテンツへの方法的評価、厄介ごと引き受ける器量、お題をつくり場を動かす相互編集力をあわせもつ。編集学校に現れたラディカルなISIS的才能。松岡校長は「あと7人の福田容子が欲しい」と語る。
書籍『インタースコア』の入稿間際、松岡校長は巻頭書き下ろしの冒頭二段落を書き足した。ほぼ最終稿だった。そろそろ校了か、と思ってファイルを開いて目を疑った。読み始めて、文字通り震えた。このタイミングで、ここにこれを足すのか […]
▼辰年と聞くと義兄の顔が浮かぶ。辰すなわち龍は十二支唯一の空想動物なわけだが、これがウズベキスタンでは鯨になるのだと、そのウズベク人の義兄から聞いて驚いたことがあるためだ。前の辰年より少し前のことだったと思う。なぜそんな […]
京都は神社が少なく教会が多い?◢◤[遊姿綴箋] リレーコラム:福田容子
▼京都はぞんがい教会が多い。人口10万人あたりの教会数は、全国47都道府県中じつに5位。寺院が意外にも13位どまり、神社に至ってはまさかの32位(つまり下から16位)だから、相対的に見て全国平均より神社が少なく、教会は多 […]
48[破]が始まった。 2022年4月2日(土)第一回伝習座。今期[破]で新たに師範として登板する戸田由香が、48[破]師範代陣に向けて、文体編集術の骨法をレクチャーした。 戸田といえば、エディストの […]
律師、八田英子の不意打ちには要注意だ。 半年ぶりにISISロールに復帰し、48[破]で初番匠に挑もうという2022年春。水ぬるむ3月にそのメッセージはやってきた。 「ふくよさん、お帰りなさーい」 八田 […]