外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。
12時55分。あと5分で始まる。私はそわそわしながらパソコンの前に座った。部屋に差し込む日差しは柔らかに、豪徳寺の本楼にて、感門之盟が始まった。軽快なレコードのスクラッチ音とともに、リミックスされた映像が次々に流れる。安倍首相、新型コロナウイルス、エヴァンゲリオン。政治も社会も文化も混ざり合うスタートは、あらゆるものが編集の対象であることを伝えている。
突破した学衆、全力でロールをやりきった師範代、編集工学を支え、編集を愛するすべての人たちが、全国、いや海を越えて集まった。4ヶ月間の稽古と指南を讃えあうお祭りは祝福の色につつまれていた。
惜しみない愛と情熱の指南を受けた学衆として、見逃せないものがあった。万事セッケン教室率いる堀田師範代へ贈られる先達文庫である。汁講でお会いしたとき、先達文庫の魅力を嬉しそうに語ってくれた師範代。「表舞台は苦手」とぽろりとこぼしてくれた弱気な姿は、本番では少しも感じられなかった。堀田師範代がこれまで積み上げてきた指南の熱こそが涙とともににじみ溢れ、石鹸の香りとともにふわりと私まで届いた。アイヌの衣装に身をつつみ、誰よりもこの場を楽しむ姿に、最後の最後まで編集の奥深さを教えていただいた。
本楼は、編集の喜びも苦しみも湧き上がる不思議な空間である。ただ、根底にあるのは稽古を楽しむ人を等しく尊重し、受け入れてくれるということ。
「たのくるしい」
型を使い倒せていない私には、まだ苦しさがつきまとう。だが、この4ヶ月間走り抜けられたこと、バンジーズという頼もしい仲間がいることをいつだって思い出そう。自分の不足に不甲斐なく思う日も、編集の真髄に少しだけ触れることができたあの感覚が私を励ましてくれる。いままで目に見えていなかったものが立ち現れるあの瞬間は、編集をすることでしか味わえないのである。
松岡校長の「体験したことを思い出すことが編集である」という言葉は私の胸に深く刻まれた。忘れてしまっては意味がない。目にしたこと、感じたことを振り返り、多様な角度から捉え直し、自分の言葉で語れるようになったとき、その体験はさらに輝きが増す。
これからもたのくるしく、もがきながら新しい景色の探索に出よう。いざ新しい私に会いに行こう。
文:水谷知世(47[破]万事セッケン教室)
撮影:上杉公志(エディスト編集部)
編集:師範代 堀田幸義、師範 新井陽大(47[破]万事セッケン教室)
▼番記者梅澤コメント
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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