49[破]師範代が選ぶ「秋に読みたい千夜千冊」

2022/11/19(土)08:08
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 「ナツセン」に続く第2弾として「アキセン(秋に読みたい千夜千冊)」がやってきました。今回は49[破]師範代10名がこの秋に読みたいとっておきの一夜を選びます。ISIS編集学校のInstagramとFacebookで先行して連載公開したアキセンを遊刊エディストでは一気にお披露目します。今まさに教室で指南を繰り広げている師範代がセレクトした本はどれもじっとしていられない一冊です。それゆえエディストカメラ部も前回に増して外撮影に挑戦しました。アキセン本はおでかけが似合う。

選本:49[破]師範代

撮影:エディストカメラ部


 

選者 古澤正三(49[破]ザリガニ脱走教室 師範代)

0464夜『虫をたおすキノコ』吉見昭一

 子供の頃、冬虫夏草を見たことがある。小学生のとき担任の先生が毎日書きなさいと渡してくれた「さわやかノート」に好きなことを書くとたくさん感想を書いてくれたことを思い出した。冬虫夏草と松岡校長の特製エンジンの話、たまりません。

写真 木藤良沢

 

 

選者 宮坂由香(49[破]おにぎりギリギリ教室 師範代)

1687夜『日本の伝統 発酵の科学』中島春紫

 普段口にする醤油や味噌の原型を辿り、麹菌の働きを知って、発酵を促す微生物に思いを馳せてみる。腐っていると思う「それ」も、地を変えると発酵なのかもしれない。食欲の秋を目で味わってみよう。

写真 後藤由加里

 

 

選者 大塚信子(49[破]唐傘ダムダム教室)

1523夜『バッハ 神はわが王なり』ポール・デュ=ブーシェ

 聴きながら読む『今夜のバッハは「まだまだバッハ」です』。ピアノの複雑華麗な旋律と、取り残されるも頑なな人生が、音楽の集大成を作り上げました。「傷つきやすさ」を湛えたバロック音楽が秋によく似合うのです。

写真 木藤良沢

 

 

選者 安田晶子(49[破]ヤマネコでいく教室 師範代)

1710夜 『ダロウェイ夫人』 ヴァージニア・ウルフ

 秋の夜長、虫の声を共に読みたいのは、仄暗さの中に放たれた無の一滴。日常と喪失を長い一日に重ね、書くことを渇望したウルフの面影に会いたくなる。文学賞候補に女性が並ぶ時代にも疼く、ジェンダーロールの創を庇いながら。

写真 牛山惠子

 

 

選者 田中香(49[破]縞状アンサンブル教室 師範代)

1297夜『本の本』斎藤美奈子

 秋とくれば読書。本の辞書のようなこちらをオススメしましょう。この著者の筆はたまらなくなめらかにリズミカルでかつ鋭い。既読本も、もう一度読んでみたくなる。千夜千冊とともに秋の読書リスト作成にどうぞ!

写真 後藤由加里

 

 

選者 石黒好美(49[破]まんなか有事教室 師範代)

1192夜 『DJバカ一代』高橋透

 夜が長くなる季節に、ディスコの千夜をどうぞ。最近のイシス編集学校は品行が方正すぎやしないかと欲求不満気味のアナタ。「闇」や「毒」をあやしく演出するプランニングに遊んでみませんか。

写真 阿久津健

 

 

選者 西村慧(49[破]臨刊アフロール教室 師範代)

0827夜『スタンド・バイ・ミー』スティーヴン・キング

 あの夏の日を思い出すなら、少し肌寒くなった今頃の季節がいい。少年が大人になるイニシエーションの旅の記憶。ずっと死の影がまとわりつく物語は、同タイトルのベン・E・キングの名曲を伴って何度でもよみがえる。

写真 林朝恵

 

 

選者 福井千裕(49[破]ちちろ夕然教室 師範代)

0546夜『雨の念仏』宮城道雄

 少年期に失明した宮城道雄の心を慰めてくれたのは、音楽や春夏秋冬の音であった。暗闇のなかで声を見、音に生きる者の「余人を絶する感覚」には遠く及ばずとも、秋風に吹かれながらただ静かに耳を澄ませてみたい。

写真 後藤由加里

 

 

選者 古谷奈々(49[破]藍染発する教室 師範代)

1219夜『ささめごと・ひとりごと』心敬

  今年もあっという間だったなぁ。肌寒くなると、心もとなくなってくるのだが、心敬は「氷ばかり艶なるはなし」と言ってのける。花が散り、緑が枯れ、日が暮れていく季節や景色にしかない味わいを教えてくれる千夜千冊。

写真 阿久津健

 

 

選者 齋藤彬人(49[破]赤ラン十徳教室 師範代)

0110夜『華氏451度』レイ・ブラッドベリ

 手元には禁書が片端から燃やされる近未来、足下には何事も炎上しかねない現代電子社会。わたしたちの自然発火点はどこまで来てしまったのか。たっぷりとした古い精神にお化けを呼び覚ます作法をまねびたい。

写真 阿久津健

 

 

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  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025