エディスト記事にも「読前」を活かすべし

2020/03/07(土)19:00
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編集学校では、読書における「読前・読中・読後」がジョーシキになっている。

 

本は、本文だけが情報ではない。表紙もカバーも帯もソデもフォントもイラストも情報だ。触れた紙のざらつきも、タイトルから想起される胸のざわつきもすべて情報である。

 

漫然と1ページ目から読みはじめていてはもったいない。著者のねらいに思いをめぐらせ、自分の興味・関心や疑問に耳を傾け、自分なりの「読みのブラウザー」を起動させて読書に臨む。「読前」のヒケツだ。

 

12歳の少年も、編集かあさんと一緒に最新の千夜千冊エディション『心とトラウマ』の「読前」をやってのけている。

 

***

 

記事の執筆にも「読前」がある。

 

遊刊エディストの編集部ミーティングでは、ライターや編集学校ボードメンバーとの意見交換の場を定期的に設けている。

 

3月6日の[破]ボードメンバーとのオンラインミーティングで、原田学匠は「何が起こるか想定し、取材する前提で臨まないと記事も書けないですよね」という。

 

ボードメンバーはEdit Cafeや汁講の様子をキャッチして「これは!」というネタを記事化するわけだが、取材・執筆のための「読前」がカンジンになってくる。

 

現役師範の小路千広とわたなべたかしが、おおいに「読前」しつつ、物語編集術の大賞受賞者にインタビューをおこなった。

 

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「読前」を意識しつつ一読してほしい。

 

二人が注目するのは、受賞学衆の編集プロセスだ。緻密な翻案に[守]の編集術が明示・暗示されている。

インタビュー記事そのものが、師範によるリバースエンジニアリングであり、師範の「読みのブラウザー」を借りた読書体験であり、インタビュー編集術の実践そのものである。自身のインタビュー稽古の回答との照合をすすめたい。

 

小路・わたなべ両師範も

「受賞者の稽古を、学衆さんが自分の稽古と重ね合わせて読んでくれていた」

「インタビューを通じて稽古のプロセスがオープンになっていく過程が楽しかった」

という。

 

一部の教室では、師範の「読みのブラウザー」を通じた方法の交わし合いが始まっている。

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025