石碑が伝える古代の半島と倭国の関係【輪読座「『古事記』『日本書紀』両読み」第二輪】

2024/11/29(金)22:19 img
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本楼で飲むホットコーヒーの温かさにホッコリする季節になってきた。地上波のニュースでは紅葉を楽しむインバウンド観光客のインタビュー映像なども目に入る。21世紀は多くの国との交流が活発で、テクノロジー進化によって多言語でのコミュニケーションも日常的になった。輪読座「『古事記』『日本書紀』両読み」は、東アジアの国々の間の交流がありつつも交戦も活発で、多言語の国々を編集によって統治しようとしていた人々の記録を輪読している。第二輪の図象解説は『三国史記』に見る3世紀から5世紀の朝鮮半島について輪読師バジラ高橋のナビゲートで浸っていく。

 

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317年、中国大陸で東晋が建国された。華北が五胡十六国に分割されていた間、東晋は約100年間漢民族の文化を維持し、発展させていく。東晋の都である健康は南朝の都として繁栄し、現在の南京となっている。

 

バジラ高橋
バジラ高橋
五胡十六国は5つの異民族言語をもつ国がやがて「十六国」となり北中国がぐっちゃぐちゃになったんです。誰が敵で味方がわからない。そういう中で軍隊化されるのを嫌がった集団がいて、これが高句麗になったわけ。軍閥がいやになった人たちを集めて国をつくろうと。

 

魏晋南北朝の変遷図。高句麗が勢力を拡大している様子が見てとれる。
『最新世界史図説 タペストリー』帝国書院 より

 

半島では高句麗が遼東半島まで攻略した。このことは漢民族による朝鮮半島直接支配が終わったことを意味し、半島南部の自立の動きを早めた。百済、新羅がそれぞれ成立し4世紀後半からの朝鮮半島は三国時代へと移行する。高句麗の南下は主に百済に向けられ、百済は対抗上、中国の南朝や倭国とも結んだ。一方、新羅とは比較的友好関係を保ちながら、勢力を南下させていった。

 

同じころ、倭国(日本)はどうしていたか。

中国に残る文献に邪馬台国の女王として卑弥呼が登場するのは『魏志倭人伝』である。239年、魏の皇帝から「親魏倭王」の称号を与えられている。その後、100年以上にわたり倭国についての記述はパタリと途絶えるのだが、421年に倭国の王「讃」が朝貢して爵位を受けたことや、5世紀には五人の王が相次いで南朝の宋に使いを送っていることが『宋書』倭国伝に記されている。

 

バジラ高橋
バジラ高橋
「讃」は、言語も全部違う東アジア中の人材を集めて、一大編集圏を築いた。辞書はまだないけど、共通の言語を編集し、共通の歴史を構築し、共通の経済活動をやり始めた。彼は自分の事を「倭の王」だとは言っていないんですね。姓が「倭」で、名が「讃」です。現在では、倭讃は応神天皇だろうということになっている。


同時期の倭国の動きが見える石碑、広開土王碑が中国に残っている。広開土王(在位391~412年)は高句麗の第19代の王で永楽王ともいうが、後に広大な領土を広げた王として広開土王、あるいは好太王と呼ばれた。盛んに遠征して南方に領土を広げ、その勝利を記念する石碑である広開土王碑は、414年に広開土王の息子である長寿王によって建てられた。碑文によってこの時期に倭が朝鮮半島に進出し、396年には高句麗が朝鮮半島に進出した倭人(倭国)を破っていることが明らかになった。

 

百済・新羅はもと高句麗に服属する民で、これまで高句麗に朝貢してきた。ところが、倭が辛卯の年(391)以来、海をこえて襲来し、百済や新羅などを破り、臣民とした。そこで好太王は、396年にみずから水軍をひきいて百済を討伐した。百済王は困って好太王に降伏して自ら誓った。「これからのちは永くあなたの奴隷になりましょう」と。399年、百済はさきの誓約をやぶって倭と通じたので、好太王は平壌へ行った。そのとき新羅は使いを送ってきて好太王に告げた。「倭人が国境地帯に満ちあふれ、城を攻めおとし、新羅を倭の民にしてしまいました。私たちは王に従ってその指示をあおぎたいのです」と。400年、好太王は歩兵と騎兵あわせて五万の兵を派遣して新羅を救わせた。軍が男居城から新羅城に行ってみると、倭の兵がその中に満ちていたが、高句麗軍が到着すると、退却した。

好太王碑碑文

 

 

広開土王(好太王)碑と碑文拓本。
左図 by Prcshaw CC BY-SA 4.0 右図 by JakeLM CC BY-SA 3.0
※千夜千冊#1799夜『ヤマト王権』吉村武彦 より

 

バジラ高橋
バジラ高橋

この碑文は近代でも日本に影響を与えることになる。日本列島の軍隊が、百済や新羅、伽耶を支援して高句麗と戦って互角の勝負をしたのだと、そういう解釈になっている。これが明治維新における日本の朝鮮史の重要な局面が出現するたびに引用されている。



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『古事記』『日本書紀』の両読みに留まらず、朝鮮半島の『三国史記』まで合わせ読みをしている輪読座。中国大陸との関係性に比べると朝鮮半島と日本の関係線には知らないことがいかに多いのかということに気付く。倭国から見た朝鮮半島ではなく、朝鮮半島側から見る倭国。そんな見方の切り替えに意識が向くのも、輪読座ならではである。

 

輪読座は毎月最終日曜日の13:00、本楼での対面・オンライン配信のハイブリッド形式で開講中である。既に第二輪までは終了しているけれど記録映像でキャッチアップ可能である。

 

 


日本古典シリーズ「輪読座」2024秋冬

『古事記』『日本書紀』あわせ読み(+『三国史記』)

 

●日時 全日程 13:00〜18:00

 2024年10月27日(日)

 2024年11月24日(日)

 2024年12月22日(日)

 2025年1月26日(日)

 2025年2月23日(日)

 2025年3月30日(日)

●受講資格 どなたでも、お申し込みいただけます。

●受講料

 ◎リアル参加◎6回分 55,000円(税込)

 ◎リモート参加◎6回分 33,000円(税込)

   ★リアル/リモートともに全6回の記録映像が共有されますので

  急な欠席でもキャッチアップいただけます

 

●詳細・お申込はこちら

 ★講座スタート後でもお申込みOK!見逃した回は記録映像でお愉しみください。

 

 

https://edist.ne.jp/just/rindokuza_kiki2/

 

「三冊屋」スタイルの輪読で日本古代史“空白の4世紀”に迫る【輪読座「『古事記』『日本書紀』両読み」第一輪】

  • 宮原由紀

    編集的先達:持統天皇。クールなビジネスウーマン&ボーイッシュなシンデレラレディ&クールな熱情を秘める戦略デザイナー。13離で典離のあと、イベント裏方&輪読娘へと目まぐるしく転身。研ぎ澄まされた五感を武器に軽やかにコーチング道に邁進中。