ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
ひきこもりライフ只中の日本列島。呼吸も浅くなりがちな日々だが、ひときわ鼻息荒く噴いているのは九州支所「九天玄氣組」である。4月より週一回「千夜郷読会」をオンライン(Zoom)で開催、九州にまつわる千夜千冊を皆で読み、セイゴオフィルターで九州を読み解く方法を探求している。
組長の中野由紀昌はこのネーミングに郷土への思いを込めた。
「“郷読”はキョードク。組員それぞれの故郷、郷土、土地の体験や記憶フィルターと松岡校長の視座を重ねて、九州本来の姿を探求しようという試みです。毎回20人近くが参加してくれていて、1ヶ月続けてみたけれど組員それぞれの思い描く九州は実に多彩でね。これまで思い込んでいた九州イメージをいい意味でスクラップ&ビルドしてくれています。九州人も九州をわかっているとはいえないからね」
たとえば千夜千冊『九州水軍国家の興亡』(#1157)には〈海〉というキーワードがある。しかし組員それぞれに思う海は玄界灘もあれば、有明海もある。宮崎や大分は太平洋だ。それぞれに地理も風景も気象条件も、そこに根づく習俗や方言も異なる。
「私なんて生まれは関門海峡をのぞむ下関だから右向きゃ日本海、左向きゃ瀬戸内海。海一つとってもこれだけ多彩なんだから、九州だって安易に一括りできるわきゃない。九州を読み直す絶好の場になっています」
これまで郷読した千夜千冊は順番に『九州水軍国家の興亡』、『俗戦国策』(#1298)、『南北朝の動乱』(#1224)『西郷隆盛語録』(#1167)。最新は5月6日に読んだ宮崎滔天『三十三年の夢』(#1168)。この間、思いがけず千夜千冊エディション『大アジア』も刊行、最高のタイミングで手元に届いた。
「『大アジア』は九天にとっちゃ鼻血モノエディション。頭山満、宮崎滔天、杉山茂丸、権藤成卿と幕末〜明治をかけぬけた傑物の九州人がデデデンと登場するじゃない。なにしろ九天が登場する一冊でもある。千夜郷読会の熱気は充満してますよ」とコーフンを隠さない。

DVD『XYZ日本史』と『新代表的日本人』で歴史の学び直しをしながら千夜千冊を郷読中
お題の一つは鹿児島の西郷隆盛の背負った「負」とはなにか、そこにつながる熊本・荒尾の宮崎滔天の「落花の夢」とはなにか。解題のためには『XYZ日本史』や『新代表的日本人』(ともに松岡正剛監修・出演)の映像も入手して連日連夜にわたり観賞、全体を俯瞰しながら時代の裂け目を生きた九州ゆかりの人物の面影を追い求めている。
「古来より時代の先端を切り拓いてきた九州ゆえの勇気とフラジリティを、今の九州人はもっと知るべきだと松岡校長は教えてくれた。イシスの地縁で結ばれた九天はここに果敢に分け入っていきたい。元気より玄氣でね!」
次週は『横井小楠』(#1196)、その翌週は『廃仏毀釈百年』(#1185)と続く。いずれも「痛み」を伴う郷読だ。「郷読は強毒? ふふ、少しは必要でしょ?」手応えを感じるからこその笑みである。
オンラインシステムを活用することで、遠方にいる組員とも顔を合わせる機会が倍増した。以前に増して相互編集が加速しているのだ。これが切込隊長役の組長にとっての追い風ともなっている。郷読は共読=境読=響読。九州に縁のある人ならではの鍵と鍵穴を求め、今夜も出遊する。

福岡、鹿児島、大分、熊本、東京、千葉などに点在する九州ゆかりの組員たちが夜な夜な集う
中野由紀昌
編集的先達:石牟礼道子。侠気と九州愛あふれる九天玄氣組組長。組員の信頼は厚く、イシスで最も活気ある支所をつくった。個人事務所として黒ひょうたんがシンボルの「瓢箪座」を設立し、九州遊学を続ける。
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コメント
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2026-02-10
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2026-02-05
誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
2026-02-03
鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。