初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。

「クロニクル編集の稽古を通じて、家族との関係性が変わった」
ISIS co-missionメンバーであり、文化人類学者・今福龍太さんが登場した9月27日の第180回伝習座が終わった翌日、55[破]応用コースに登板する師範代を含む指導陣が決起する場「突破講」がオンラインで行われました。10月13日からの破教室における編集稽古のスタートに向けて、破のお題の背景を理解し、指南方法を身体化するためプロセスが進んでいたのです。
今回、突破講の前半に行われた「クロニクル編集術」にフォーカスを当てながら、レポートいたします。
クロニクル編集術の紹介前に講座運営を支える番匠・白川から破師範代向けの稽古のカマエについてのレクチャーがありました。
破講座では突破(修了)まで「喝破・打破・走破」というプロセスが大切にされています。千夜千冊1252夜『守破離の思想』では、「破」は何かを破ることによって、その奥に蟠(わだかま)っていた本来がガバッと顕在してくる動向を示す、と記述されていましたね。
1番目の喝破では、蟠っている自己を取り出すことになります。本来の自己というものはすぐに出てくるモノではありません。稽古での問感応答返のサイクルを再回答を繰り返した先の裂け目から出てくるものです。師範代は学衆(生徒)一人ひとりの可能性を引き出す指南を行います。
壁やしきりといったものが編集には必要です。2つ目の打破として、師範代が壁となる役割を果たします。最後の走破は4か月間の稽古をやりきり、限界を超えることを意味します。師範代と学衆が極度の相互関係に入り、回答の推敲を進めながら、瞬時に抜ける感覚を何度も味わうことが重要ですね。
クロニクル編集術のレクチャーを担当したのは52[破]から連続で登板している師範の桂大介でした。この編集術は「自分史」を作る稽古だと捉えられがちですが、本質は「歴史」や「年表」を編集する稽古です。例えばプロ野球選手・大谷翔平の歴史化であれば、二刀流という全歴史と重ね合わせることで新たな意味を発見し、意外な対角線を引くことができるようになります。
◎年表が持つ力
物語形式の歴史が感情に訴えかけやすいのに対して、年表形式のクロニクルは一見とっつきにくいものの、知的な楽しみ方ができます。年表の威力は個々の出来事を示すだけでなく、歴史の厚みや過去の積み重ねという存在感を示す点にありました。
歴史は常に編集されるものであり、自分史とともに年表を作るための課題本『僕たちのゲーム史』さやわか/星海社新書の前書きに書かれているような、「何を書くか」よりも「何を書かないか」を選択することが、クロニクル編集の本質を浮き彫りにするのです。
最初の課題本選びでは、学衆さんの読む力をスコアリングしつつ、読みやすい本や少し挑戦的な本を選ぶことが推奨されますね。
レクチャーの中で、学匠・原田淳子がクロニクル編集の課題本を提示する場面もありました。55[破]で数冊、変更があるようです。鉄道オタクの属性があると年表作りを楽しめそうな新書が挙げられていましたね。
◎歴象データを抽出した年表からの発見
クロニクル編集の稽古中盤にかけて、抽出した歴象データを構造化していきます。
課題本から歴象データを複数抽出する稽古では、単なる年号と事件の取り出しではなく、著者独自の歴史観や編集方針を要約する行為と捉えたいですね。後半での稽古で迷路に入らないように、他の情報と関係づけを意識しやすい文脈が感じられる枝と房のある記述を心がけたいです。
クロニクル編集術の一連の稽古を通じて、最終的には過去と現在を貫く大きな視点となる「歴史的現在」に立つことを目指します。
55[破]の師範代・加藤則江(カエル・カワル教室)もクロニクル編集術を体験するために進破していたことを明かしていました。稽古での課題本と自分史の歴象データのインタースコアを通じて、家族との関係が変わっていったのです。
破講座の稽古では、学衆さんの生活や仕事、社会といった外部の情報が回答に持ち込まれます。師範代も外部情報と関係づけしながら指南することが求められるのです。
『知の編集工学 増補版』の序章において、校長・松岡正剛は編集的世界観を持ちつづけることを提案していました。政治や経済、アートなど全てが編集されていたことに注意を向けておきたいですね。
学衆さんのクロニクル編集術の回答と向き合うことで、師範代も編集的世界観を実感できるでしょう。近親者との関係に対する見方づけを改め、再編集する機会が増えそうです。
今回の突破講に臨んだ師範代たちは、明日から実践的な指南演習の場へと進み、10月13日からスタートする55[破]講座での編集稽古の用意を進めます。55[破]に申しこんだ受講者のみなさんは開講まで、守で学んだ方法の型を復習しておきましょう。
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
<速報>43[花]花伝敢談儀:千夜千冊エディション『少年の憂鬱』の図解レポート
「「つもり」と「ほんと」を分けちゃだめ」 8月に入るとともに大型の台風9号が本州近くの関東に接近しました。暴風雨は遠ざかりましたが、猛暑の影が忍び寄っていますね。気温の上昇とともに、イシス編集学校の編集コーチ養成コース […]
<速報>「いったん死んでよみがえること」物語編集術レクチャー54[破]破天講
「神話が足りない」 5月も終盤へと向かい、6月の梅雨の時期に入ろうとしていますね。日本国際博覧会協会(万博協会)が大阪・関西万博の5月23日の一般来場者数(速報値)が約13万9千人だったと発表しました。開幕日の約12万 […]
「言葉の学校であるが、イメージについて語りたい」 4月末からのゴールデンウイークが終わり、初夏に向けて最高気温も上昇中です。フィクションでの枢機卿たちの思惑を描く『教皇選挙』が上映されて架空の教皇が選出されていました […]
<速報>REMIX校長校話「あやかり編集力」三匠対談に迫る(179回伝習座)
桜の開花とともに4月に入り入社式、入学式、始業式が一斉に行われていますね。イシス編集学校も4月から5月にかけて、55期の基本コース[守]、54期の応用コース[破]の講座がスタートします。フレッシュな顔立ちをした通勤、通 […]
「可能性を生み出すカオスをいつも保ちなさい」田中晶子所長メッセージ【86感門】
イシス編集学校には学衆から師範代へと衣替えするための編集コーチ養成所「ISIS花伝所」があります。花伝所での5М(Model、Mode、Metric、Management、Making)を通じた8週間の短期間で、師範か […]
コメント
1~3件/3件
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。
2025-09-23
金緑に輝くアサヒナカワトンボの交接。
ホモ・サピエンスは、血液循環のポンプを遠まわしに愛の象徴に仕立て上げたけれど、トンボたちは軽やかに、そのまんまの絶頂シアワセアイコンを、私たちの心に越境させてくる。
2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。