エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。

福地恵理さんはウルフル弘法教室師範代として、54[守]を走り抜けたばかりだ。そして今、福地さんの胸に去来したものとは何か。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。今回は、福地さんの「決意」をお届けします。
■■感門之盟で誓ったこと
2025年3月15日、師範代として迎えた感門之盟で、わたしは着物を纏った。
黒地に、流れるような直線。決められた道のようにも見えるが、まっすぐではない。
揺らぎ、交わり、逸れながら、どこか自由に模様を描いている。わたしの歩んできた道のようだった。学衆として迎えた一年前の感門では、「編集を止めない」と誓った。学び続けること、問い続けること。その思いが、わたしを動かし、気づけばこの場に立っていた。
▲感門之盟「卒門式」で挨拶する福地師範代。後ろで見守るのは北條玲子師範。
そしてこの日はもうひとつの節目でもあった。偶然にも、起業してちょうど1年を迎えた日だった。社会にでて仕事をするたび、関係が生まれるたび、わたしには肩書きができた。「〇〇の××さん」「○○部の○○担当」。それは、社会の中での役割を示すものだった。けれど、与えられるたびに、わたしの意志とは関係なく、輪郭が決められていくような気もしていた。そんなとき、編集学校で取り組んだ《たくさんのわたし》に出会うお題。
肩書きや立場という属性を超え、自分の好みや価値観で「わたし」を自由に語ることができる。
私は感情が揺れ動く空の雲である。
私は1日3回通うほどのアフタヌーンティー好きである。
私は色で表現するならばブルーである。
わたしの学衆時代の回答だ。甥っ子にとっては”お馬さん”になるし、仕事関係者から見れば、出張ばかりのジョブマニアだ。わたしを表す言葉はこんなにもある。そんな断片を拾い集めるうちに、名付けられる前の、もっと自由な「わたし」が見えてきた。
広報、IR、秘書。思い返せば、様々な仕事を通じて、わたしは人と人、情報と文脈、点在するものを結び、新たな関係を編み直してきた。――そうか、わたしはずっと結んできたのか。そう気づいたとき、「yuiya(ユイヤ)」という会社の名前が生まれた。
起業した会社には、ただの記号ではなく、役割を生み、場をつくり、関係を動かす社名をつけたかった。誰かと誰か、何かと何かをつなぎ、新たな意味を編み出していく「結ぶ屋」でありたい。だからこそ、既存の言葉を当てはめるのではなく、自分で編集したのだ。社名を決めたのは、師範代になる前のこと。けれど、この名前を持つことで、師範代としての活動も導かれた気がする。ユイヤとして、学びの場をつなぎ、関係を紡ぎ、互いの思考を編む。師範代としてのわたしの役割は、まさに「結ぶ」ことそのものだった。
▲福地さんが1年前に起業した「yuiya(ユイヤ)」。
紡いできた日々は、わたしの道になる。1本の線は、絡まり、ねじれ、ときにほつれながらも、それでも続いていく。新しい糸が加われば、また新たな模様が生まれる。
「たくさんのわたしに出会いなおした今の自分を、もっと楽しんでください」
感門の場で学衆に伝えたこの言葉は、過去のわたし自身にも向けたものだったのかもしれない。どんな風が吹こうとも、そのたびに編みなおせばいい。ほどいて、撚って、また歩く。新しい風が吹くその先へ、自ら歩んでいけるわたしでありたい。どこかで、まだ見ぬ誰かと、あるいは新しい「わたし」と、また出会うために。
文/福地恵理(51[守]シビルきびる教室、51[破]マラルメ五七五教室)
写真/福井千裕(アイキャッチ)、後藤由加里(文中写真)
編集/角山祥道
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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2025-08-19
エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。
2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。