メガネの奥の瞳と髪型が類似的な49[破]の北原ひでお評匠と50[守]の鈴木亮太師範、苗字と佇まいが相似形な藤木不二人師範代と木藤良沢師範(藤木藤・ふじきとう)など、イシスには並べてみたい二人がいる。
50[守]ダルマ・バムズ教室師範代小野泰秀と師範の渡辺恒久もそんな二人だった。福岡県宮若で世界中の民具や工芸品、鉱物や宝石を扱うギャラリーを運営する小野とハワイ・マウイ島在住の身体術トレーナー渡辺は、野口整体や身体技法という興味の向きにも、雰囲気や風貌にも共通するところがある。
しかし、伝習座や感門之盟のオンライン開催が続き、チームも別、住んでいる場所も遠い二人。開講以来、直接顔を合わせることはなかったが、[守]の出題もあと1題となったダルマ・バムズ教室第2回汁講の前日、師範陣が集まるラウンジで渡辺がつぶやいた。
小野師範代と全く話さないまま
ここまで来てしまったので、
顔出そうかなと思っていましたが、
指導陣満員のようなので遠慮しときます。
ダルマ・バムズという教室名は、ジャック・ケルアックの『ザ・ダルマ・バムズ』に肖っている。そのダルマ・バムズのひとり、小野の憧れの人でもあるゲーリー・スナイダーと渡辺は面識があるという。小野とチームを組む師範、阿曽祐子が「ここで遠慮させるわけにはいかない」と即応し、Zoom越しではあるが対面のチャンスが生まれた。
渡辺の汁講参加を伝えると、普段は落ち着いた口調の小野から弾んだ声が届いた。
僕の方は恒久師範に喜んでお願いしたいです!
身体を通じた編集にシンパシーを感じていたので、
個人的に色々とお話ししてみたいと思っていました。
身体操作における意識と無意識のあいだも聞いてみたいなぁ。
汁講で小野は、学衆の回答を「触れると浄化される純度の高い水晶」に、教室を「芽吹く前の種」にたとえた。渡辺は、回答に自信がないと言う学衆に、「回答をつくって出すところで終わるのではなく、その回答を種子として生まれる指南、そしてその指南を読んで自分の中に生じるすべてを含める、その全プロセスが編集稽古。どの回答も全体の編集に貢献するのだから、自信なんて本当に要らないんだよ」と伝えた。Zoomにあたたかく澄んだ風が流れた。その場の一人一人に注意を向けて、発せられた言葉は静かだけれども、熱が残る。小野と渡辺の共通項は言葉の紡ぎ方だったと感得する汁講でもあった。
汁講後の勧学会には、「同じ教室になれて日々が彩られたように私は感じていまして、できればみなさまと卒門したいです」「メンバー全員で最後の景色を見たいと思います」などの言葉が寄せられている。汁講の風を受けたダルマ衆の卒門風景とその後の歩みにも、言霊身体派の二人の行方にも注目だ。
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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