【追悼】笑顔と緩性の師範:山根尚子さんインタビュー(後編)

2023/12/28(木)09:37
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山根尚子師範インタビューの後編です。前編からお読みください。タイトルの「緩性」とは、師範初登板の際、松岡校長から贈られた二文字。


 

44[守]師範・山根尚子さんインタビュー後編。
ヨガと編集稽古の共通項とは、そして彼女に起きた変化とは?

 


■編集学校に入って、ヨガはツールになった

――編集学校に入ってから、ヨガクラスで語る言葉は変わりました?

変わりました、変わりました! 「ヨガを方法として使ってください」って言うようになったのが一番の変化だと思います。

――ほう! ヨガはツ―ル?

ポーズができるようになることが目的じゃないですよって、言ってます。ヨガをして健やかになった身体で、いっぱい旅行に行きたいとか、自信をもちたいとか、そういう目的のために、ヨガを使ってもらいたい。そういうふうにお伝えしていますね。

こういう気持ちになりたいからこのポーズする、とか、自分なりの「ヨガ辞典」を作ってもらいたい。そんな気持ちになりました。

――松岡校長の言う「単語の目録・イメージの辞書・ルールの群れ」をヨガでも作るっていうことですよね。

そうですね。吉村林頭もよくおっしゃってるけど、誰だって、人や場をイキイキさせたいじゃないですか。私にとってはそのツールがヨガで、編集。そんなふうに並列で考えられるようになりましたね。

――まさに「アタマ∞カラダ編集中」ですね。

▲師範代時代のシグはキラッキラ。


■師範だって揺れるんです

――師範代として[守][破]を終えたあとは、[守]師範にロールを変えて、編集稽古に関わっておられますよね。師範としてのおもしろさはなんでしょう?

いま師範として3期目なんですけど、発見だらけですね。教室は師範代と学衆さんがが作りあげるものなので、師範は見守るのが基本です。でもね〜、師範もね〜揺れるんですよ(笑) 私だったらこうするのに、って反射的に思うこともそりゃあります。でも、みんな、やり方が違って当然ですよね。

学衆さんがイキイキとお稽古しているのを見ると、「そうか、こういうやり方もあるのか!!」と、自分の視野がどんどん広がります。そういう体験があるから、安易に「こうしたほうがいい」とか言えないです。私には作れない教室を、師範代が目の前で作っている。そこに立ち会うのは、とっても幸せですね。

――「みんな違ってみんないい」をいちばん体感するのが、師範かもしれませんね。初めて師範代するときって、みんな不安だと思うんですが、心がけたほうがいいことってあります?

いったんね、自分がやりたいようにやりきったらいいと思うんです。そうしないと、自分の持ち味もでてこないですし。それでうまく行かなかったら、そのとき考えたらいい。編集学校は、思いっきり挑戦させてもらえる環境と、失敗したとしても手を差し伸べてくれる体制が万全ですから。私も師範として、全力でサポートしますし。

今期の私のテーマは、転ばぬ先の杖は出さないように。転んでからいっしょに考えよう、です(笑)

■アフォーダンスされ続ける喜び

――編集学校って、やっぱり成長しあうコミュニティですよね。稽古のうえでは師範代が学衆を導くけれど、学衆がいてこそ師範代になっていく。互いの力を引き出すような仕組みを魅力に感じます。

それはありますよね。変な話かもしれませんが、私、編集学校にいると「あなたがいてくれてありがとう」って思うことばっかりですよ。師範ロールは3期目ですが、いつも「違う私」が出てきます。学衆・師範代時代には考えられなかったドSモードとか(笑)

そういうのは、みなさんに引き出してもらうんですよね。「こんな言葉が私から出てくるなんて!」って、自分でも驚きます。

――自分でも知らなかった「たくさんの私」があるんですよね!

そうそう。師範代したことある人はわかると思うんですが、指南を見返して「私、こんなこと言ったっけ?!」って驚くことありますよね。「この人に、なんとしても伝えたい!」って思うと、今までとはまったく違う、新しい言葉がおりてくる。そのとき泣きそうになりますね。あなたがいるから私の言葉が生きるの、って。

目の前の人にアフォーダンスされ続けることで、私がどんどん変わっていく。編集学校では、その楽しさのトリコです。

▲自分のヨガポーズがISISマークになるという、想定外の編集も受け入れて。

 


イシス編集学校での歩み
山根尚子さん

 

大阪・高槻出身。山本ヨガ研究所にてヨガ・インストラクターをされるかたわら、ご友人の藤田小百合師範のお声がけを機に、2015年10月 イシス編集学校入門。以来、一期もあけることなく、6年間を駆け抜ける。[守]師範として信頼も篤く、驚異の5期連続登板。12もの教室を守り育てる。

 

 36[守]毎日フィギュール教室   山田小萩師範代/阪本裕一師範
 36[破]ホットワイナリー教室   岡本悟師範代/前原章秀師範
 26[花]わかくさ道場       三津田知子師範
 39[守]千里チャクラ教室 師範代 猿子修司師範
 39[破]千里チャクラ教室 師範代 岩野範昭師範
 42[守]チ―ムテ・ムルマ  師範 根本真奈未師範代・三津田恵子師範代
 43[守]チ―ムBこりじょん 師範 菅野祥子師範代・佐藤悦子師範代
 44[守]チ―ムトリコナ   師範 華岡晃生師範代・中山有加里師範代
 45[守]チーム・モーデル     師範 佐藤玲子師範代・川島司師範代・古野伸治師範代 

 46[守]チーム☆彡レッЁノウ師範 関根まなか師範代・角山祥道師範代・大塚宏師範代


2021年4月に癌がみつかり、35花錬成師範を一旦引き受けるも治療のため辞退。2023年1月3日 逝去(享年47歳)

 

山根さん、「会えてありがとう」はこちらのセリフです。

ほんとうにほんとうに、ありがとうございました。


  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。