「1時間でわかる○○」といったタイトルが珍しくもないほど、コスパ、タイパが叫ばれる昨今だ。ムダをはぶき、時間を大切にするのはいいが、節約のための節約になってしまっては、ミヒャエル・エンデの『モモ』が描く灰色の世界になってしまう。手間をかけたいところにかけるためのコスパ・タイパだろう。
たとえば[破]には、時間をかけて本を読み、なんども推敲を繰り返してその本について書く、ということにコストをかけたい人たちが集う。
松岡校長の千夜千冊にあやかって、一冊の本を身に沁み込ませるように読み、読み込んだことによって自分におこった感興や、その本に触発されてワカッタカワッタことを書く。
読書は、世界中の知者や歴史上のアーティストとの交際であり、それによって自分を変化させるコラボレーションだ。編集学校ではインタースコアとよんでいるこんなやりとりにこそ、手間と時間を注ぎたい。
本日5月21日(日)18:00、50[破]第1回アリスとテレス賞「セイゴオ知文術」のエントリーが締め切られた。[破]の最初の山場、ミニ千夜千冊を競うアワードだ。
12教室・学衆96名中、エントリーしたのは87名だった。さやさやドローン教室、境域ビオトープ教室、異郷エンシオス教室、全員反攻教室、体内止観教室、外骨マガジン教室は全員エントリーを果たした。おめでとう!!
選評委員(木村久美子月匠、[破]の師範、番匠、評匠、学匠)は、それぞれ全エントリー創文を読んで選評会議に臨む。結果発表は6月。全エントリー作品に講評がつく。
さて、気になる課題本の人気ランキング。ダントツ1位が『地球にちりばめられて』17点、次は『数学する身体』12点。この2作、前期は同数でトップだった。つづいて『生命誌とは何か』『フラジャイル』が各10点、『悪童日記』『虫と歌 市川春子作品集』が各8点、『あなたの人生の物語 』『東京プリズン』が各7点であった。『椿の海の記』が6点、『文字逍遥』が2点。
『地球にちりばめられて』の主人公は、故国がなくなってしまって帰ることができない。ウクライナをはじめ、世界各地で起こっている戦争や紛争への注意が、この本を選ばせたのだろうか。長編の『東京プリズン』、やや難しい『文字逍遥』に果敢に取り組んだ学衆がいたことも嬉しい。
この10冊、いくつか重ねて読んでみると、相互に響き合っているように感じるはずだ。そしてまた新たなヨミの局面を発見してしまうだろう。滋味深い本を手間と時間をかけて読み、私の一部にしてゆこう。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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