今、あなたがパソコンで開いているブラウザのタブを見て欲しい。
「今日のニュース」に「検索したカフェ」、「ショッピングサイト」や「お気に入りのスポーツチーム」など、さまざまなタブが並んでいるのではないだろうか。
極端なことをいえば、「カンブリア爆発」から「今日の天気」まで、時間も場所も種類もレイヤーも違うものが、一列にフラットに並んでしまう状況が、目の前にある(フラットネス)。ここには時間の制約はなく、歴史も未来も区別がない(ナウネス)。
ケバケバもなければ、突起もない。深さもなければ、意外性もない。こんなのっぺりとした現実の中で、どうやって「新しいこと」を生み出していけばいいのか。
メディア美学者の武邑光裕さんは、AIDAボードメンバーでもあり、松岡正剛校長の盟友でもあり、校長が信頼を寄せるひとりだ。その武邑さんは、すべてが平坦化、現在化しているこうした状況を、「Big Flat Now(ビッグ・フラット・ナウ)」と呼ぶ。
武邑光裕■たけむら・みつひろ
1954年東京都生まれ。メディア美学者、「武邑塾」塾長、「AIDA」ボードメンバー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学などの教授職を歴任。1980年代よりメディア論を講じ、インターネットやVRの黎明期、現代のソーシャルメディアからAIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2015~21年まで独ベルリン在住。著書に『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』『プライバシー・パラドックス―データ監視社会と「わたし」の再発明』など。
武邑さんはいう。
「ビッグ・フラット・ナウという言葉は、ベルリンで誕生したコンセプトです。現代社会を見事に切り取っているといっていいいでしょう。実際、歴史は繰り返されているだけで新しい思想は生まれず、ChatGPT(生成AI)は、膨大な過去の情報を滑らかにつなぎ直しているだけです」
ではビッグ・フラット・ナウな現実の中で、私たちはどうしたらいいか。どうやったら「新しいもの」を生み出せるのか。
この現代的「問い」を考察する場として用意されたのが、武邑さんによる「特別講義」だ。
イシス編集学校の基本コース[守]では、2022年下半期から各界の著名人による公開講義を開催している。52[守]の受講生は参加費無料だ(受講生以外の方は、有料での参加枠あり)。
少しだけ、武邑さんに明かしていただこう。
「今後10年くらいで、3度目の“ルネッサンス”が起こると予測されています。12世紀にイスラム圏とヨーロッパ圏の邂逅から起きた『イスラムルネッサンス(12世紀ルネッサンス)』、ギリシャやローマの文化を復興しようとした14~16世紀の『イタリアルネッサンス』、それに続く、3度目の芸術、思想上の転換です。ビッグ・フラット・ナウの時代に対峙するためには、人間の再生が重要になってきます」
人間の再生とはどういうことか。
武邑さんは、これを「編集の再生」と言い換える。
「現在、私たちは思考やプロセスを、ChatGPTなどのAIに外注化してしまっています。言い換えれば、編集を放棄している、ということです」
では「編集=人間」を再生するためには――。
2024年1月21日、武邑流の再生の方法が、明かされる。
▲松岡正剛校長と熱心にかわしあう武邑さん
(写真/後藤由加里)
イシス編集学校第52期[守]特別講義●武邑光裕の編集宣言
●日時:2024年1月21日(日)14:00~17:00
●ご参加方法:zoom
●ご参加費:3,500円(税別)*52[守]受講生は無料
●申込先:https://shop.eel.co.jp/products/detail/622
●お問合せ先:es_event@eel.co.jp
◎武邑光裕さんをもっと知るには
【AIDA】メディア美学者・武邑光裕氏インタビュー~メタヴァースは〈マ〉を再生するか~
現代≒中世?! メタヴァース時代に「デジタル農奴」に陥らないために【ISIS FESTA SP速報】
【AIDA】「新中世」時代に考えるメタヴァースの将来(武邑光裕ロングインタビュー)
【AIDA】リアルが持っている代替不可能な感覚情報がAIDAで鮮明になった<武邑光裕さんインタビュー>
◆イシス編集学校 第52期[守]基本コース募集中!◆
日程:2023年10月30日(月)~2024年2月11日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中(左のQRコードからどうぞ)
【募集◆限定30名】「鴻巣友季子を読む」 多読スペシャル第4弾
余計な説明はいらない。 まずは、この目次を読んでほしい。 序章 「翻訳教室 はじめの一歩」のための一歩 第1章 他者になりきる―想像力の壁をゆるがそう 第2章 言葉には解釈が入る―想像力の部屋を広げる準備体操 第3章 […]
事典! 辞典! ジテン! ――52[守]師範、数寄を好きに語る
数寄のない人生などつまらない。その対象が何であれ、数寄を愛でる、語るという行為は、周囲を巻き込んでいく――。 52期[守]師範が、「数寄を好きに語る」エッセイシリーズ。ライターでもある角山祥道師範は、「旧友」たちを引っ張 […]
イシス流リスキリングのすすめ――51[守]ピテカントロプス対談
なぜ、また学びたくなるのか。 今夏幕を閉じた51[守]には、イシス編集学校黎明期に師範、師範代として活躍された数名が、学衆として戻って来ていた。「ピテカントロプス」と呼ばれる面々だ。 彼らにとって、20余年ぶりの編 […]
背番号51といえば、メジャーで活躍したイチローが有名だが、プロ野球界では「51」といえば、出世番号だ。巨人の浅野翔吾選手をはじめ、多くの球団は期待の高卒選手にこの番号を背負わせる。 そうなのだ。「51」という数字を背 […]
【多読ジム募集】読書のフィジカルを鍛えよ season16・秋
2023年秋の[多読ジム season16]で、読衆(受講生)は、湯気が立った状態の「千夜千冊エディション」を手に取ることになる。9月末発売予定の『千夜千冊エディション 性の境界』だ。 少し中も覗いてみよう。 リン […]