メディア美学者・武邑光裕氏の52[守]特別講義、開催決定!

2023/10/26(木)08:00
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 今、あなたがパソコンで開いているブラウザのタブを見て欲しい。
「今日のニュース」に「検索したカフェ」、「ショッピングサイト」や「お気に入りのスポーツチーム」など、さまざまなタブが並んでいるのではないだろうか。
 極端なことをいえば、「カンブリア爆発」から「今日の天気」まで、時間も場所も種類もレイヤーも違うものが、一列にフラットに並んでしまう状況が、目の前にある(フラットネス)。ここには時間の制約はなく、歴史も未来も区別がない(ナウネス)。
 ケバケバもなければ、突起もない。深さもなければ、意外性もない。こんなのっぺりとした現実の中で、どうやって「新しいこと」を生み出していけばいいのか。

 

 メディア美学者の武邑光裕さんは、AIDAボードメンバーでもあり、松岡正剛校長の盟友でもあり、校長が信頼を寄せるひとりだ。その武邑さんは、すべてが平坦化、現在化しているこうした状況を、「Big Flat Now(ビッグ・フラット・ナウ)」と呼ぶ。

 

武邑光裕■たけむら・みつひろ

 

1954年東京都生まれ。メディア美学者、「武邑塾」塾長、「AIDA」ボードメンバー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学などの教授職を歴任。1980年代よりメディア論を講じ、インターネットやVRの黎明期、現代のソーシャルメディアからAIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2015~21年まで独ベルリン在住。著書に『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』『プライバシー・パラドックス―データ監視社会と「わたし」の再発明』など。

 

 武邑さんはいう。
「ビッグ・フラット・ナウという言葉は、ベルリンで誕生したコンセプトです。現代社会を見事に切り取っているといっていいいでしょう。実際、歴史は繰り返されているだけで新しい思想は生まれず、ChatGPT(生成AI)は、膨大な過去の情報を滑らかにつなぎ直しているだけです」

 ではビッグ・フラット・ナウな現実の中で、私たちはどうしたらいいか。どうやったら「新しいもの」を生み出せるのか。

 この現代的「問い」を考察する場として用意されたのが、武邑さんによる「特別講義」だ。
 イシス編集学校の基本コース[守]では、2022年下半期から各界の著名人による公開講義を開催している。52[守]の受講生は参加費無料だ(受講生以外の方は、有料での参加枠あり)。

 

 少しだけ、武邑さんに明かしていただこう。
「今後10年くらいで、3度目の“ルネッサンス”が起こると予測されています。12世紀にイスラム圏とヨーロッパ圏の邂逅から起きた『イスラムルネッサンス(12世紀ルネッサンス)』、ギリシャやローマの文化を復興しようとした14~16世紀の『イタリアルネッサンス』、それに続く、3度目の芸術、思想上の転換です。ビッグ・フラット・ナウの時代に対峙するためには、人間の再生が重要になってきます」

 

 人間の再生とはどういうことか。
 武邑さんは、これを「編集の再生」と言い換える。
「現在、私たちは思考やプロセスを、ChatGPTなどのAIに外注化してしまっています。言い換えれば、編集を放棄している、ということです」

 では「編集=人間」を再生するためには――。
 2024年1月21日、武邑流の再生の方法が、明かされる。

 

▲松岡正剛校長と熱心にかわしあう武邑さん

 

(写真/後藤由加里)

 


イシス編集学校第52期[守]特別講義●武邑光裕の編集宣言

 

●日時:2024年1月21日(日)14:00~17:00
●ご参加方法:zoom
●ご参加費:3,500円(税別)*52[守]受講生は無料

●申込先:https://shop.eel.co.jp/products/detail/622
●お問合せ先:es_event@eel.co.jp

 

◎武邑光裕さんをもっと知るには

 

【AIDA】メディア美学者・武邑光裕氏インタビュー~メタヴァースは〈マ〉を再生するか~

現代≒中世?! メタヴァース時代に「デジタル農奴」に陥らないために【ISIS FESTA SP速報】
【AIDA】「新中世」時代に考えるメタヴァースの将来(武邑光裕ロングインタビュー)
【AIDA】リアルが持っている代替不可能な感覚情報がAIDAで鮮明になった<武邑光裕さんインタビュー>

【AIDA】DOMMUNE版「私の個人主義」!!!!! by武邑光裕

 


◆イシス編集学校 第52期[守]基本コース募集中!◆
日程:2023年10月30日(月)~2024年2月11日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg