マンガにおける短詩系文学といえば四コママンガということになるだろう。四コママンガに革命をもたらした最重要人物の一人である相原コージは、そのものズバリ『漫歌』をものした。
2023年夏の甲子園、8月23日の決勝戦で慶応義塾高校が優勝した。107年ぶりの快挙である。1916年(大正5年)の優勝時、明治から昭和初期の文人・幸田露伴(1867~1947)は数え50歳の現役作家。3年後の1919年には史伝『運命』を上梓している。豪徳寺の編集工学研究所で、輪読座「幸田露伴を読む」第五輪が8月24日に開催された。図象を駆使しながら講師役を務める輪読師・高橋秀元の来楼が遅れたため、一時間遅れの14時からスタート。いつもの宿題確認はパスし、座衆の学ぶカマエを試すように、いきなり解説が始まった。今回、イントロダクションで紹介された『快楽論』と、露伴の弟で日本の歴史学者である幸田成友(1973~1954)をレポートする。
露伴は人間進化と精神向上の原理を追求し続け『努力論』を執筆したことが有名であるが、一対のセットとなる『快楽論』を1915年(大正4年)にかけて雑誌に連載していた。侮るなかれ、単なる動物的で肉体的に溺れる快楽にフォーカスしたモノではない。人間向上の原理としての快楽である。露伴は動物が快楽と思わないモノに対しても人間が快楽と捉えている大きな溝に注意を向け、そこに人間の本質があると発見したのだ。物差しの基準を変え、未知へ遊出していく快楽、対象への見方の相転移が起こって恋に落ちるような快楽である。
次に高橋は幸田成友の重要性について語り始めた。20世紀に評価されておらず、21世紀になってスポットライトを浴び初めている歴史学者だ。明治政府は近代国家であるヨーロッパの仲間入りをするために、彼らと共通の基盤となるランケが用意した世界史のフォーマットを使って自国の歴史本を用意する必要があった。その制作に成友が関わっていたのだ。
いつの時代も国家の存在条件として、自らの歴史を文字として表現し、書物などのメディアを通じて見せる必要がある。アーキタイプを辿れば、大化の改新の後に漢文で書かれた『日本書紀』が制作され、唐や新羅に送られたことで、日本は中国や朝鮮とは別の国として主張することができた。しかし『日本書紀』では近代国家として主張する分には足りない。政府の命を受けた成友は世界史共通フォーマットから外れ、独自の日本フォーマットを構築しようとした。露伴も弟の歴史制作の方法に刺激を受けて物語を執筆していたのだ。兄弟の共振関係が、幸田露伴の物語に大きな影響を与えていた。
イントロダクションの後、本格的な図象解説が行われ、座衆達は高橋から届く声に耳を傾けた。次回の第六輪は9月24日(日)。輪読座ではアーカイブによる視聴がいつでも可能だ。門戸は常時、誰にでも開かれている。幸田露伴の先見性に関心を持たれた方はコチラをクリックいただきたい。
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
<速報>物語のシーン描出に「目のカメラ」を活用しよう/55[破]破天講
師範代たちの振り返りの後、今期の物語編集術のレクチャーが行われました。担当は師範・天野陽子となります。 天野は短歌集『ぜるぶの丘で』を2月に出版し、先月末に第40回北海道新聞短歌賞に選出されていたようです。11月26 […]
11月23日(日)にスタートする多読アレゴリアの別典祭の準備が編集工学研究所で行われていますね。並行して、55[破]破天講が2階の学林堂で開催されていました。師範代は10月の突破講とその後の準備期間によって、すでに破の […]
11/24(月)14時〜16時:ぷよぷよ創造主の思考にイシス病理医がメスを入れる!【別典祭】
本の市場、本の劇場、本の祭典、開幕! 豪徳寺・ISIS館本楼にて11月23日、24日、本の風が起こる<別典祭>(べってんさい)。 松岡正剛、曰く「本は歴史であって盗賊だ。本は友人で、宿敵で、恋人である。本は逆上にも共感に […]
<汁講レポート>角川武蔵野ミュージアム訪問で味わう(55[守]つきもの三昧教室)
「せっかくの遠出だから、角川武蔵野ミュージアムに行ってみよう」 イシス編集学校の55期基本コース[守]の最後のお祭り的なイベント・第89回感門之盟が9月20日(土)に行われていました。私が師範代を務める「つきもの三昧教 […]
<速報>ピッチングマシーンのボールのように飛びながら世界を認識する/55[破]突破講
「クロニクル編集の稽古を通じて、家族との関係性が変わった」 ISIS co-missionメンバーであり、文化人類学者・今福龍太さんが登場した9月27日の第180回伝習座が終わった翌日、55[破]応用コースに登板する師 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-10
マンガにおける短詩系文学といえば四コママンガということになるだろう。四コママンガに革命をもたらした最重要人物の一人である相原コージは、そのものズバリ『漫歌』をものした。
2025-12-09
地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。
2025-12-02
{[(ゴミムシぽいけどゴミムシではない分類群に属している)黒い星をもつテントウムシに似た種]のように見えるけど実はその偽物}ことニセクロホシテントウゴミムシダマシ。たくさんの虫且つ何者でもない虫です。