外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。
正月事始めの日でもある12月13日、豪徳寺のイシス編集学校本楼では、10月に開講した[遊]物語講座18綴のリアル稽古となる「蒐譚場(しゅうたんば)」が開催された。蒐譚場に集った18綴の叢衆と指導陣を迎えたのは、物語講座の創設者で、稽古の場を支えてきた木村月匠の柔らかい眼差しだった。
編集学校が15期を終えた頃、破の物語編集術を使った新しい講座を作ろうと、松岡校長のディレクションで物語の要素をベースにして本を作った。それを『物語編集術』として発行した直後に[遊]物語講座は誕生した。木村は物語講座の成り立ちから語り始めた。その物語講座を特別にしているもののひとつが教室名だ。イシス編集学校の教室名は唯一無二。物語講座の教室は文叢と呼び、名前は師範代の選ぶ二冊の物語から一種合成することにした。この18綴までに巡ってきた物語は130にも及ぶのだという。
そのうちの6冊となる、18綴の3文叢名に選ばれたの物語の本は以下のとおりだ。
◆堀田幸義師範代
『宇宙のランデヴー』(アーサー C クラーク著、 南山 宏訳)
◆地球星人服従
ミシェル・ウェルベック著、大塚 桃訳)
◆沼地の果ての温室
『沼地のある森を抜けて』(梨木 香歩)
『地球の果ての温室で』(キム・チョヨプ , カシワイ)
今期の師範代が選んだ本は、「多読スペシャル」で紹介された多読講師に縁がある本が多い、と木村は続けた。「多読スペシャル」は、松岡正剛の多読術をベースにした「多読ジム」の中にできたプログラムだ。ジムの学衆は、意外とフィードバックが少ないと言う本の著者たちを多読講師に迎えて直接に交わし合う贅沢な時間を持つことができる。ジムの読衆だった物語講座の師範代たちにも創作意図が伝わり、著者が身近に感じられた結果でもあるのだろう。
『の違和感をとりだしつつ話を交わした。『服従』は、近未来の世界の激動と個人と自由の果てを描き、ヨーロッパで衝撃をもたらした作品で、第5回のゲスト講師であった佐藤優さんが解説する。『沼地のある森を抜けて』の文庫版のあとがきを書いているのは、4回目のゲスト講師だった鴻巣友季子さん、という具合だ。
蒐譚場にはそれぞれの2つの物語をクロスしながら、差し掛かる「編伝1910」へのヒントが満載の六用意されている。
木村は松岡校長の言葉を引用する。
”多読術で本を読む。だけど読んだだけではダメだよ、アウトプットしなくては。行ったり来たりしないと本を読んだことにならない”
”「物語する」は、「編集する」と同義に近い”
読み、読み解くことで、行ったり来たりする編集は物語編集へもつながる。「物語編集力はすべての創意工夫の根本に繋がっています。物語の機能、物語の秘密、物語の回路に触れながら、講座を通して編集稽古をすることで編集力は身に付きます。集中して聞いて、感門之盟に向けた学びの一日にしましょう」
そう結んだ木村の言葉を、「18綴の特徴は参稿期限を守る叢衆ばかりだということ。感門之盟は見えていますね」、と嬉しそうに小濱創師が拾う。確かに叢衆たちの表情には余裕も見えていた。
その後、物語のタイトルに肖って、それぞれの「らしさ」を漂わせた3つの、短い時間を使って真剣に、しかし和気藹々とワークに取り組む文叢の姿があった。
安田晶子
編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。
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