初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。

特別講義「佐藤優の編集宣言」(7月6日開催)まであと一週間という金曜、55[守]最初の番選ボードレールの講評のさなか、特別講義チームによるミーティングが開催された。
数日前に佐藤優さんから課題本『消された外交官 宮川舩夫』が提示され、お題が届いたばかり。
佐藤優さんは何を語るのだろう。みなの関心の中心は講義の内容だが、予測してもしかたない。あてが外れるくらいのとびきり思いがけない語りが待っているはず。
特別講義で本がお題になるのは初めてだ。この夏、松岡校長の新刊が出版されることもあり、「みんなで本を読む」という雰囲気を作るのはいいよねえ、とまずは素朴な感想が飛び交う。
佐藤さんからのお題は「引用」だ。指定された文字数は、400字。結構なボリュームだ。
佐藤さんの本は引用が多い、と師範の北條玲子が『「孫子の兵法」思考術』を持ち出して語ると、「引用」は佐藤優さんの読書の方法なのかもしれない、と番匠阿曽祐子は『読書の技法』を開いて画面に映す。師範の佐藤健太郎が『同志社大学神学部』ではこんなマニアックな引用があった、と読み上げて紹介すれば、去年の多読ジムスペシャルでは「 」でくくる引用は15%までと佐藤優さんが言っていた、と福澤美穂子は記憶をさかのぼる。『十五の夏』には引用はそんなにないが、30ページくらい読んでも、まだモスクワにいるんです、と話がなかなか進まないことを健太郎がつぶやくと、それってとってもロシア文学っぽい、と玲子がふわっと包み込む。
話題は宗教の見方へと転じる。祐子は近江ARSでの佐藤優さんの現代のキリスト教や仏教に対する発言を思い出す。松岡校長と佐藤優さんが参加していた2017年のシンポジウムを書籍化した『宗教と資本主義・国家』を玲子と学匠の鈴木康代が取り出せば、健太郎は佐藤優さんが薦めてくれた『キリスト教神学入門』を誇らしげに見せる。
今年は戦後80年。話は戦争のことにおよぶ。康代は戦争から戻ってきて短歌に打ち込んだ大おじの思い出を語る。今はまた危険な時代になりつつあるのかもしれない。「逆説のつもりで書いた自著が順接で読まれてしまう怖さがある」と佐藤優さんが話していたことを健太郎が冷静に告げる。
課題本『消された外交官 宮川舩夫』以外にもたくさんの本が登場し、話題は行きつ戻りつしつつどんどん広がっていく。
7月6日は、いったいどんな講義になるのか。
佐藤優さんは、どう語るのか。
松岡校長は読書における「前・中・後」の中でも、とりわけ「読前」を重視した。佐藤さんから提示された課題本にアフォードされて、それぞれが連想と仮説を自由に持ち込んだこのミーティングは、読前の充実となった。
アイキャッチ写真/北條玲子(55[守]師範)
文/福澤美穂子(55[守]師範)
Info イシス編集学校第55期[守]特別講義「佐藤優の編集宣言」
編集工学2.0と歴史的現実~正剛イズムをインテリジェンスにどう活かすか?~
*55期[守]師範・師範代・ご受講中の皆さまは教室にてお申し込みください
*多読アレゴリア2025夏にご参加の皆さまへ
当イベントは多読アレゴリア2025夏の無料オンライン視聴特典(7月分)です。多読アレゴリア2025夏の参加者の方は、多読アレゴリアでの案内をご確認ください。
●申込:https://shop.eel.co.jp/products/es_shu_055_toku
●事前お題回答フォーム:https://forms.gle/arp7R4psgbDoczf1A
※ 回答は必須ではありません
●日時:2025年7月6日(日)14:00-17:00
●ご参加方法:オンライン開催 *お申し込みの方にzoomURLをご案内します
●ご参加費:3,500円(税別)
●対象:どなたでも参加いただけます
●ゲスト講師:佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)
●お問合せ先:es_event@eel.co.jp
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
これまで松岡正剛校長から服装については何も言われたことがない、と少し照れた顔の着物姿の林頭は、イシス編集学校のために日も夜もついでラウンジを駆け回る3人を本棚劇場に招いた。林頭の手には手書きの色紙が掲げられている。 &n […]
週刊キンダイvol.018 〜編集という大海に、糸を垂らして~
海に舟を出すこと。それは「週刊キンダイ」を始めたときの心持ちと重なる。釣れるかどうかはわからない。だが、竿を握り、ただ糸を落とす。その一投がすべてを変える。 全ては、この一言から始まった。 […]
55[守]で初めて師範を務めた内村放と青井隼人。2人の編集道に[守]学匠の鈴木康代と番匠・阿曽祐子が迫る連載「師範 The談」の最終回はイシスの今後へと話題は広がった。[離]への挑戦や学びを止めない姿勢。さらに話題は松 […]
目が印象的だった。半年前の第86回感門之盟、[破]の出世魚教室名発表で司会を務めたときのことだ。司会にコールされた師範代は緊張の面持ちで、目も合わせぬまま壇上にあがる。真ん中に立ち、すっと顔を上げて、画面を見つめる。ま […]
55[守]で初めて師範を務めた内村放と青井隼人。2人の編集道に[守]学匠の鈴木康代と番匠・阿曽祐子が迫る連載「師範 The談」の2回目。「師範とは何なのか」――田中優子学長が投げかけた問いが、4人の対話を揺さぶる。師範 […]
コメント
1~3件/3件
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。
2025-09-23
金緑に輝くアサヒナカワトンボの交接。
ホモ・サピエンスは、血液循環のポンプを遠まわしに愛の象徴に仕立て上げたけれど、トンボたちは軽やかに、そのまんまの絶頂シアワセアイコンを、私たちの心に越境させてくる。
2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。