飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。

「神話的にいうのならどんな橋も“天の浮橋”なのだ」と松岡校長は言った。丹後国風土記によると、“天の浮橋”のかけらが京都にあるという。校長の育った京の都での開催となった【53破】の感門之盟に、「ここ」と「むこう」を同時につくる橋を、架けて渡った師範代たちが揃った。先達文庫とは、師範代に今期の労いと感謝をこめて贈られる書のこと。破の師範代には、学匠のメッセージが入った本を2冊ずつ贈呈するのがイシスの感門之盟の慣わしだ。
破天講に駆け抜けた【53破】の10人、それぞれの師範代に向けて、次はどんな芽が出るかを楽しみに選ばれた「種」でもある「書」。感門表授与の後、ネオ・バロックを目指して研鑽の場を築いてきた原田淳子学匠が、師範代ひとりひとりに手渡した20冊を、ここに紹介する。
◆上原悦子 師範代(アガサ・フィーカ教室)
『名作うしろ読み』 (斎藤美奈子/中公文庫)
『吾輩はライ麦畑の青い鳥』 (斎藤美奈子/中公文庫)
◆内村 放 師範代(カミ・カゲ・オドリ教室)
『甘さと権力』 (シドニー・W.ミンツ/ちくま学芸文庫)
『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』 (北村紗衣/ちくま文庫)
◆織田遼子 師範代(世界にダブルページ教室)
『砂のように眠る 私説昭和史1』 (関川夏央/中公文庫)
『家族の昭和 私説昭和史2』 (関川夏央/中公文庫)
◆菅原誠一 師範代(なんでもデコトラ教室)
『いま、地方で生きるということ 増補新版』 (西村 佳哲/ちくま文庫
『ひとの居場所をつくる ランドスケープ・デザイナー田瀬理夫さんの話をつうじて』 (西村 佳哲/ちくま文庫)
◆大澤実紀 師範代(幕をあけます教室)
『新・建築入門』 (隈研吾/ちくま学芸文庫)
『ぼくらの近代建築デラックス!』 (万城目学・門井 慶喜/文春文庫)
◆青井隼人 師範代(ラップ多義る教室)
『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』 (ガイ・ドイッチャー/ハヤカワ文庫)
『よくわからないけど、あきらかにすごい人』 (穂村弘/毎日文庫)
◆笹本直人 師範代(声文字X教室)
『市場の倫理 統治の倫理』 (ジェイン・ジェイコブズ/ちくま学芸文庫)
『経済の本質―自然から学ぶ』 (ジェイン・ジェイコブズ/ちくま学芸文庫)
◆新井隆子 師範代(触発ボタニカル教室)
『したたかな植物たち 秋冬篇』 (多田多恵子/ちくま文庫)
『したたかな植物たち 春夏篇』 (多田多恵子/ちくま文庫)
◆土田実季 師範代(イメージ・チューナー教室)
『翻訳教室』 (柴田元幸/朝日文庫)
『翻訳教室 』 (鴻巣友季子/ちくま文庫)
◆奥富宏幸 師範代(潮目ディナジー教室)
『タイムバインド: 不機嫌な家庭、居心地がよい職場』 (A.R.ホックシールド/ちくま学芸文庫)
『だれのための仕事―労働vs余暇を超えて』 (鷲田清一/講談社学術文庫)
編集用語辞典には、文庫は和語の「ふみぐら」に当てた字だとある。もともと大切な書物を保管する倉庫のことを指した。今日のこの文庫リストも、歴代の師範代たちに贈られた書とともに、イシスの知のアーカイブとなる。先達文庫発表の直後はネットショップで売り切れが発生することも。気になる本は早速チェックしよう。
安田晶子
編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。
選挙前夜のイシス館で「すずかんゼミ」を体験する〜【『情報の歴史21』を読む ISIS FESTA SP】鈴木寛編
週末に東京都議会議員選挙が控え、全国で参議院議員選挙が始まろうとしている6月20日金曜日の夜、豪徳寺のイシス編集学校で情報の歴史を読むイシスフェスタSPが開催された。16回目を迎えたイシスフェスタに登壇したのは、鈴木寛 […]
あれ・れご・ごり・りあ〜今こそ「アレゴリア」を見直したい【第二回工冊會】レポート
編集学校とは別の編集への入口だ、と2024年末に立ち上がった多読アレゴリアは冬から春へと2シーズンが過ぎた。春シーズンが終わる5月半ばのタイミングで、来し方を振り返り、行く末を想うため、第二回工冊會(こうさつえ)が豪徳 […]
桜の森の満開の下で漫画の妖術師と対談する〜【ISIS Festa Special x 感話集 近藤ようこ氏】
優しいタッチで描かれる花びらと美しい女。満開の桜を思わせるピンクのメインビジュアルの下でISIS FESTA&感話集が開催された。 3月最後の土曜日、イシス編集学校の物語講座の績了式 […]
[遊]物語講座17 綴 ISIS物語アワード受賞者発表ーー【87感門】
ISIS FESTA SP&第 87 回感門之盟 感話集では、17 綴績了式に続いて、ISIS物語アワードの発表へとプログラムが進む。一体、どの文叢の誰の作品が受賞するのか?と、全叢衆の胸が高鳴る時間だ。物語アワードは複 […]
42[花]放伝式・方法を如何につかふ?ーー花伝選書授与【86感門】
花伝選書とは、花伝所で2期以上指導陣をつとめた者に贈られる書だ。今期は、花伝所を統括し束ねたふたりの花目付と、花伝道場の宝刀である5名の花伝師範と7名の錬成師範に贈られた。 ◆花目付 林 朝恵 […]
コメント
1~3件/3件
2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。
2025-08-12
超大型巨人に変態したり、背中に千夜をしょってみたり、菩薩になってアルカイックスマイルを決めてみたり。
たくさんのあなたが一千万の涼風になって吹きわたる。お釈迦さまやプラトンや、世阿弥たちと肩組みながら。