「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。

私たちの日常は、情報のインプットとアウトプットの連続です。その情報のINとOUTの編集稽古を読書に特化させたのが多読ジム。とにかく読んで、書いて、読筋を鍛えていきます。しかし、アウトプットは「書く」という行為のみならず。写真を撮ったり、映像化することも「読み」の上に成り立っているアウトプットに他なりません。
そして、本を読みまくる〈多読ジム〉と本を撮りまくる〈倶楽部撮家〉がコラボして、新たな企画が立ち上がりました。それが《一人一撮 edit gallery》です。多読ジムSeason15(2023年夏)の特別お題で『千夜千冊エディション』を撮影し、エントリー作品の中から佳作として選出された作品が、イシス編集学校のインスタグラムで公開されるというアワードお題です。撮影にあたり倶楽部撮家から「必撮イメマネ5ヶ条」として、イメージを写真としてマネージするためのヒントが手渡されました。作品を選出・講評するのは倶楽部撮家です。
それでは、《一人一撮 edit gallery》インスタ掲載2作品とエントリー作品への寸評をお届けします。今回は倶楽部撮家を代表して、後藤由加里が講評を行います。
まずは、インスタ掲載2作品の紹介です。
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インスタ掲載作品
インスタ掲載作品:重廣竜之
日本風の古い蔵と『物語の函』という取り合わせに意外さを感じましたが、配置、配色、ボケ感とよく考えられた一枚です。自然光をうまく取り込み光沢のある表紙を際立たせているのも◎。本を主役にして撮影されたことがはっきりと伝わってきました。欲を言えば、帯をとってしまい、ドン・キホーテの視線を活かす手もあったでしょう。
インスタ掲載作品:船山一樹
一見、これは置きにいったかな?と思いましたが、それを差し引いても画の切り取り方と画面右側の緑の抜け感に好感を持ちました。本の赤色が立つような色のバランスも絶妙です。一方で本が添え物になっている感じも否めません。次回はエディションと真っ向勝負してみてくださいね。
西洋文学を扱った『物語の函』をあえて日本風の場所で撮影された2作品が奇遇にも並びました。『物語の函』を撮るには大変な変化球。これはありなのか?第一印象としては正直悩みましたが、写真として私の好みであったこと、加えて『物語の函』のシソーラスを広げられた姿勢を評して、インスタ掲載作品といたします。
続いては、エントリー作品への寸評をお届けします。
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エントリー作品
中原洋子
渡會眞澄
石井梨香
市川鉄彦
大塚宏
松井路代
堀田幸義
チカーラ(スタジオネーム)
アクヤン(スタジオネーム)
ウトウトベンチプレス(スタジオネーム)
福澤美穂子
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初めての試みとなったこの企画。本の中でも多層で重層な『千夜千冊エディション』を撮るのは、それなりの負荷がかかるもの。そして、一枚の写真には、撮影者の視線も含めて恐ろしいほどたくさんの情報が写ってしまうものです。そのキケンを顧みず、今回お題に挑戦されたみなさんには、敬意と拍手を贈ります。次回の果敢な挑戦もお待ちしてます。
アイキャッチ画像:後藤由加里
おまけ
アイキャッチ画像は、倶楽部撮家インスタ企画「冬に読みたい千夜千冊」の一環で撮影した『物語の函』。本をアンナ・カレーニナに見立てて、黒レースを纏わせ、配色は黒・赤・白の3色に絞って表紙の世界観に寄せてみました。もう少し艶かしく撮ってみたかったですが、ややカタくなっていますね。
イシス編集学校Instagram更新中!(@isis_editschool)
https://www.instagram.com/isis_editschool/
後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。
2025-09-04
「どろろ」や「リボンの騎士」など、ジェンダーを越境するテーマを好んで描いてきた手塚治虫が、ド直球で挑んだのが「MW(ムウ)」という作品。妖艶な美青年が悪逆の限りを尽くすピカレスクロマン。このときの手塚先生は完全にどうかしていて、リミッターの外れたどす黒い展開に、こちらの頭もクラクラしてきます。