[週間花目付#21] めくるめく稽古条々

2021/11/02(火)12:17
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週刊花目付

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■2021.10.27(水)

 

 世阿弥の『風姿花伝』は、父観阿弥から口伝された芸の奥義を書き起こした指導書だ。
 技芸の修得に年季が必要なのはもちろんだが、ただ闇雲に苦行を強いるのではなく、芸道の修得段階を年齢ごとに目標設定したり(年来稽古条々)、役づくりの類型を整理して伝える(物学条々)など、その部立てを見るだけでも「カリキュラム」として非常に洗練されていることが窺える。
 松岡校長には「目次だけでなく中身まで読みなさい」と叱られたが、私が美容師としての職能を培った昭和〜平成初頭の時代ですら「技術は目で盗め」と苦行ばかりを強いる育成法が主流だったことを思うと、むしろ伝統芸能の本流に言葉を尽くして語り聞かせる伝承スタイルがあったことには驚かされる。

 

 さてその花伝書に肖った花伝所に、校長から3つの注文がつけられている。

1.ゲート・エディティングにもっと長けて欲しい。
2.花伝所なりの立体的編集ブラウザーを組み立てなさい。
3.花伝所なりのインターフェイスをつくりなさい。

 既に取り組んでいるもの、ますます洗練へ向かうべきもの、まだまだ朧げで覚束ないもの、などアレやコレやがアタマを巡る。

 

 何であれ編集課題をブレイクスルーするためには、一定のコンセントレーションが求められる。そのとき、集中を強いるのか、没入を誘うのか。そこが編集コーチの腕の見せ所だろう。

 


■2021.10.28(木)

 

 先週末から体調を崩して音信の途絶えていた入伝生から、ようやく道場へ第一声が届いた。時節柄、皆が心配していたが、ひとまず回復したようで何よりだ。遅れ馳せ上等。後方からでしか見ることのできないパースペクティブを、是非ともチャンス編集していただきたい。

 

 ところで、編集学校では「遅れ馳せ」とともに「仮留め」を大いに歓迎している。
 どちらも何らかの困難や「わからなさ」を抱えた学衆にエールを送る文脈で声掛けすることが多いのだが、それは決してモラトリアムやエクスキューズを許容しようとしている訳ではない。「遅れ馳せ」は時を跨いだインタースコアであり、「仮留め」はノンリニアなフィードバック編集の実践なのである。

 どんな場面でも別様の可能性を鼓舞するエディターシップを、せめて指導陣は忘ずにいたい。

 

 夕刻、zoomで所長&花目付の作戦会議。講座の初動の振り返りと、ここからの展開について交わす。

 


■2021.10.30(土)

 

 いったい師範代は編集稽古で何をしているのかといえば、

1.編集過程の可視化

2.編集的価値の描出

3.編集可能性の拡張

を徹底的に実践しているのである。この三位一体を「指南の3要素」と呼ぶ。
 詳しくは花伝所で体験学習し、さらには師範代として編集実践することで体得していただく、というのがイシス編集学校の師範代プロジェクトのあらましだ。

 

 指南3要素はどれも欠かせないピースなのだが、とりわけ私は「編集的価値の描出」に力点を置いて考えている。「抽出(ちゅうしゅつ)」ではなく「描出(びょうしゅつ)」である点がイシスならではのダントツだと思う。
 「抽出」はたんにフィルタリングに終始するばかりだが、「描出」となるとエディティング・モデルの交換をともなうインタースコアが顕現する。対象をトレースし、自他を照合し、対称性を見出し、含意を導入し、語り手を突出させなくては「描出」にまで至ることはできないのだ。

 

 抽出と描出。字面は似ているが、その違いは大きい。

 


■2021.10.31(日)

 

 式目演習M1「モデル」の回答締切日。全員揃ってクリアしたのはやまぶき道場だけだった。どうした、36花!しまって行こうゼ!!

 

 こっそり披露しておくが、今期の花伝師範4名は皆、言葉は穏やかだが異口同音に鬼コーチ宣言をしている。
 なにせ、むらさき道場岡本悟師範はラグビーのエディ・ジョーンズ氏を、やまぶき道場吉井優子師範はアーティスティックスイミングの井村雅代氏を、それぞれ指導モデルとして肖ろうとしている。

 

 ふふふ。36花入伝生の諸姉諸兄、めくるめく編集的イリンクス(*)はまだまだこれからよ〜。

 

*イリンクス:

ロジェ・カイヨワによる「遊び」の四分類によると、イリンクスは回転や落下など目眩に近い身体的な快感を追い求めるスリリングな遊びの総称。四分類のうち最も没入感を味わえるカテゴリーだろう。

アゴーン‥‥競いの遊び
アレア‥‥賭けの遊び
ミミクリー‥‥真似の遊び
イリンクス‥‥目眩の遊び

 

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