■ 湧き出るネタの舞台裏
モニターには、18本の「遊刊エディスト」の記事がミッシリと並んでいる。「実はこれ全て、梅澤奈央記者がほぼ2日間で仕込みました」。「20周年大感門(2020.09)」のサテライト会場・近畿大学の現場で、どうやってそんなことができたのか。48[破]第一回伝習座の講義で、福田容子が画面のウラを明かした。
「(画面:机上のマグロの頭部模型)なにこれ、どういうこと?で一本。(画面:本の裏にびっしりカンペ)それ、どうなってんの? おもろいやん、で一本。(画面:プロのカメラクルー)えっ、なんで関テレ来てんの? で一本」と、コメントに乗って画像がハイスピードで切り替わっていく。二度見したくなるような場面やキャラ立ちしている登場人物を、誰かが面白がり、それに周りが乗っかり評価する。18本のネタは、そんな現場での相互編集から生まれたと福田は語った。
講義のタイトルは<「いいネタ」をどう見つける? ~創文へのBPT~>。[破]の編集稽古で盲点となるのは題材探しだ。再回答を推奨する[破]とはいえ「ダメなネタはどう握ってもダメ(太田香保総匠)」なのだ。
イシス編集学校は方法の学校だ。ネタに頼ることに抵抗のある人もいるかもしれない。しかし、福田は軽快に方法へと切り込んでいく。面白い場面が「いいネタ」になるには、そのウラに詳しく知りたくなる状況(HOW)や理由(WHY)が必要だ。なぜソレを書くのか。意図を明確にしていかなければならない。そこを見切り、見極め、手放すという3ステップを繰り返すことで文章が深まっていくのだと。
さらに記事化の動機へも踏み込む。モニターには「私が書かなければ、なかったことになる」というゴシック体の文字が映し出された。第78回感門之盟で書く理由を問われた梅澤記者の答えに重ねている。大阪の会場が「20周年大感門」で放映されるのは10分か20分。中継の助っ人として名古屋から日帰りで駆けつけた曼名伽組の気前も、直前のSOSを拾いテレビクルーを手配した敷田信之の男気も、会場を見守った近畿大学岡友美子室長の寛容も、2日間現場を統括した橋本英人参丞の奮戦も、梅澤奈央が書かなければ「消えてしまう」。18本のネタのウラには書き手の切実があったと福田は確言した。
梅澤のウラでの奮迅は「なかったこと」にならなかった。現場の組み立てから記事への切り出しまで、場のつくり手として共に関わった福田の眼差しがあったからだ。福田は自他ともに認める裏方志向なのである。
それは伝習座会場、学林堂でも発揮された。直前にカメラ機材の操作をまかされた山本春奈を現場に入る人ごとに紹介する。後半のコーナーで必要な小道具を集める。自分の登壇前に戸田由香の講義を記事にする。いいネタにはウラがあり、ウラには方法がある。ウラに通じる者はネタの目利きになるのである。
そんな福田が[破]という書き手たちの現場のウラで、新たに番匠を務める。4月18日に始まる48[破]が面白くならないわけがない。
野嶋真帆
編集的先達:チャールズ・S・パース。浪花のノンビリストな雰囲気の奥に、鬼気迫る方法と構えをもつISISの「図解の女王」。離の右筆、師範として講座の突端を切り開いてきた。野嶋の手がゆらゆらし出すと、アナロジー編集回路が全開になった合図。
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