感門之盟ノ歌「中空の月」【79感門】

2022/09/21(水)07:07
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79回感門之盟の後、“中空”に松岡正剛が鎮座する。

 

49[守]チーム中空プラント、忖度しないわ教室師範代の相部礼子(写真右)と男装いとをかし教室師範代の野住智惠子(写真左)との記念ショットである。[守]では、師範代と師範が教室運営のためにタッグを組むが、相部と野住はそこでのチームメイトだ。

 

普段ビジネススーツ姿の相部はその日、Tシャツ姿で本楼に現れた。胸には教室名かと思いきや、ちょっとちがう──忖度しないわ わたしたち。教室名は松岡校長から師範代へのお題と言われるが、相部がたどり着いた回答がこれだ。忖度がはびこりフラットになっていく社会に抗って、教室の学衆とともにヒダヒダをつくる別様の可能性へ向かうのだ、と。49守を走り切った相部の編集宣言である。そして、Tシャツの背中にはこれだ。

 

  

 

相部は、学衆が選んだ卒門ソングをタトゥーのように背中に刻み込んだのだった。

 


もう一方の野住である(写真左)。45守「すみれの花咲く教室」で初登板、49守「男装いとをかし教室」で再登板を果たした。2つの教室名の対角線が教えるとおり宝塚好き。それが高じて、舞台撮影カメラマンから舞台プロデューサーへと駆け上がった舞台人である。

 

感門の舞台で「カメラは『視線』」と、野住は、自らが教室に向けたカーソルを写真見立てで語った。「装って参りましょう」との師範代の演出に学衆は変容しつづけ、師範代は真夜中にシャッターを切りつづけた。

 


野住のカーソルは松岡校長にも。伝習座でもシャッターチャンスを逃さない。

 


日本神話にはあえて大事なことが書かれていない──その「中空」構造が日本らしさである、と仮説した河合隼雄に肖ったチーム中空プラント。方法日本の提唱者、松岡正剛に、教室のプロフィールを届けて、相部と野住の49守は幕を閉じた。

  • 白川雅敏

    編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025