私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。

オンラインセミナー真っ最中、ナビゲーターが突然消えた。
つぎの瞬間、女は床の間でヨガポーズを決めていた。
編集はそこから動き出す。
編集学校のオープンキャンパスとして、誰もが編集稽古を体験できるエディットツアー。2020年夏は、全国22ヶ所で開催されている。
オンライン化されても、各会場からは土地々々の匂いがむわりと立ちのぼる。
▼大阪話術「ツッコミ」に迫る
7月28日、地方開催の露払いを買ってでた大阪会場にもそれは満ちていた。大阪の県民性、それは過剰なサービス精神である。
大阪といえば、笑いやろ!
ナビゲーターの山根尚子(45[守]師範)は、暗黙の期待を全身で引き受け、漲る笑顔でレクチャーを始めた。テーマは「ツッコミ」である。
◎ツッコミ
漫才などでボケに対して指摘や合いの手を挟むこと。または、その役割の人、その行為の内容。笑いどころが何処であるか明確にしつつ話を進行する役割を持つ。(実用日本語表現辞典)
山根が教科書に持ち込んだのは、フットボールアワー後藤輝基のツッコミ集。山根は、後藤が「見立てツッコミの名人」であると語る。
うろたえている人に対しての「目泳いでるどころじゃないですよ、遠泳ですよ」は、慣用句のパロディア。乙女な相方・岩尾への「心の三つ編みだしてきよるんですよ」は、女性らしさのメタファー化。
山根は芸人の編集力に本気で感心しながら、「ツッコミは見立てだ」と大阪の話術を解説する。
▼私のカラダがお題です
その直後のことだった。
「いまから私がボケます。ツッコんでください」と言い残し、山根は画面から消えた。ゆっくりカメラがスライドすると、山根は床の間を背に片足で立っていた。すっと両手を天へ伸ばし、遠くを見つめる。
その絵面に、3名の子どもを含む8名の参加者は思わずツッコむ。
「掛け軸か!」
「よう揺れる風鈴やなあ」
「飛行機にみえる」
「あ、スペースシャトルや」
「山根は月まで行ったのであった……」
ツッコミが新たなツッコミを呼び、一座の勢いは大気圏を突き抜けた。
▼過剰さの秘密は「OSAKAN一種合成」
このコテコテのノリ。まさにこれが大阪特有の方法なのであった。
お好み焼きにごはんを添え、神輿を船に乗せ、ヒョウ柄にヒョウ柄を重ねる大阪人。同じジャンルのものを組み合わせ、胸焼けするほどの過剰さを生み出す編集様式を、山根は「OSAKAN一種合成」と名付け、この日はじめて発表した。アメリカンでもメキシカンでもなく、オーサカン。
山根は、筋肉がぷるぷるになるまで身体を張って、大阪国独自の編集術を証明してみせたのであった。
今後も、名古屋、横浜、京都、福島、大分…と全国各地でオンライン・エディットツアーは開催される。旅行以上にディープな学びの90分。千円札1枚握りしめ、お好きな土地にワープせよ。
▽詳細はこちらから https://es.isis.ne.jp/media/festa
あなたなら、何とツッコむ?
▼後日談
「このまえ気づいてんけど」と、大阪・天満出身の福田容子(師範)は切り出した。
「お好み焼きって、ほぼキャベツやん? てことは、お好み焼きってサラダやん? お好み焼き定食ってサラダ定食ちゃうか」
根底を揺るがすツッコミ。OSAKAN一種合成の研究はまだまだ続く。
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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2025-07-03
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2025-07-02
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ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。