座衆の新しい論評を待つ【輪読座「富士谷御杖の言霊を読む」第二輪】

2023/12/05(火)06:00
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急に気温の下がった11月の末、編集工学研究所にほど近い豪徳寺は紅葉と招き猫と三重塔の三位一体が古都っぽさを醸していた。昼になっても10度に満たない寒さだった26日の日曜日、雨が上がる頃にISISに現れたのは輪読師バジラ高橋だ。13時から輪読座「富士谷御杖の言霊を読む」の第二輪が開催されるのだ。

 

驚いたことに高橋は素足に草履姿。末端だけ暑いという。富士谷御杖を読むにはこの熱が必要なのだろうか。聞くに、高橋は空海好きで、空海を友達のように「あいつ」と呼ぶそうだ。平安時代に生きているような人だという声も耳にする。富士谷御杖は江戸時代の人だ。これが、高橋が冬も裸足に草履や下駄を履いた江戸時代の友人に会いに行く出で立ちなのかもしれない。


第二輪は突然はじまった。13時になった途端に吉村林頭が始まりの挨拶もなく、「では、宿題の解説を」とZOOMの向こう側の座衆たちへ告げた。輪読座では、学びを図にして伝えることを求められる。第一輪の学びはどう描かれたのか、他の座衆はどう読んだのか、座に集う全員が注目する時間でもある。指名された座衆が解説を始めようと身構えると、いきなり高橋の声がそれを遮った。

 

◆宿題は疑問をあぶり出す

 

人には忘却力というものがある。1週間たつと人に話せなくなる。だから、読んで自分が理解したことを人に話せる状態にするために必ずやってください。

人に伝えないと輪読座をやる意味がないのだ。

 

約1ヶ月前に開催された第一輪で輪読し、高橋によって解説された『真言弁 上巻』を図解する機会を得たのは2名だ。順に画面に映し出された図象はどちらも手書き。ZOOMの向こう側から解説するS氏とT氏の言葉に高橋は嬉しそうに聞き入る。

 

 

 

座衆Sの図:ダイナミックに複数の境界線を引いてシソーラスを分ける

 

座衆Tの図:印象に残ったという蜘蛛の糸の見立てを描写した

 

高橋の描く図象は明示的だが、輪読座衆の描く図は暗示的だ。神道と時宜と哥道というキーワードを中心に頭の中のシソーラスを取り出し、関係線と境界線で整理したのはS氏。T氏は、手書きだからこそ表現できる繊細な線で蜘蛛の巣と、揺れる糸にとりつく蜘蛛たちの隙間に哥と偏心を絡めて一向心を描いた。難解な古典をアナロジカルに理解しようと試みたことがわかる。描く過程で、「これでいいのか」と考えを深めたのであろう。解説に選ばれなかった他の座衆の図象にも、それぞれの読みと見方と思考の跡が見て取れた。高橋は「ありがとう」と、宿題解説を引き取って座を進める。


宿題は、おぼろげな理解を整理して疑問をあぶり出すためのものなのだ。座衆による解かれざる問題の提起でもある。読んだだけでは読書とは言えない。誰かに言うまでが読書なのだ。

 

◆新しい見方づけを待つ

 

輪読し、疑問を持ち、それを解消していく。さらに、輪読座で高橋は、座衆が新しい論評や見方を出し、考えてもいなかったことを言うのを喜ぶ。

 

俺に遅れを取るようじゃダメなんだよ。俺が知らない領域へ運んでいかないと。

 

高橋は「百年後も残る仕事をしている」との自負を持つが、座衆から「俺」を超える領域へ飛び立つ者が出ることも待ち望む。21世紀なんだから、と。江戸時代から未知を語る場がここにある。

 

我こそは、と思われる方は次回よりコチラから輪読座へご参集を。
第三輪はクリスマスイブの12月24日(日)13時開催。
アーカイブで第一輪から全ての視聴が可能だ。

 

因みに、輪読座に予習はいらない。知らないままで受講するのがいいのだ。予習は、誰かの説をチェックしているだけ。それに縛られてしまわぬように、とは輪読師バジラ高橋の思いだ。

  • 安田晶子

    編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。