初バジラにいつかの古本屋を想う 輪読座「富士谷御杖の言霊を読む」第二輪

2023/12/06(水)06:00
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秋から冬への季節の移ろいを感じる11月最後の週末。豪徳寺の編集工学研究所で、輪読座「富士谷御杖の言霊を読む」第二輪が開催された。輪読座はリモート開催であり、全国各地から参加できる講座である。ナビゲーションをつとめるのはバジラ高橋(高橋秀元)。松岡正剛と共に工作舎を立ち上げ、オブジェマガジン『遊』を世に送り出してきたコアメンバーの一人でもある。

 

トレードマークのハットにタバコをくゆらせるバジラ高橋。

 

講座が始まるやいなや「世の中の検索システム化」へとバジラ節が炸裂する。

 

世の中が検索システムになった。検索は自分が知っている言葉しか入力ができず、個人の言語空間はむしろ狭くなっている。
情報回線の利用量は増えているが、コピーが溢れているだけだ。

コピーは100万個あったとしても、情報としては一つのものにすぎない。今は、情報過多でなく、情報はむしろ減っている。

 

未知なものが妙に流通しにくく、孤立しやすい。21世紀はそれを打破しないといけない。情報は知らないことに価値がある。

 

あらゆる情報へアクセスしやすくなった現代。本を買うのもネットでワンクリックで済むようになった。リコメンド機能も手伝い、情報との出会いは増えているように錯覚するが、「未知」との出会いは減っているのかもしれない。

 

「未知へアクセスする努力、未知を取り入れる努力を忘れてはいけない」と警鐘をならすバジラ。

 

座衆への応答にも独特の間合いで魅せるバジラ。私自身、今回が初バジラだったが、その趣きにどことなく神田神保町の古書街にぽつんと佇む古本屋を想いだした。ところ狭しと本が積み上げられた空間。古くなった紙がかもしだす独特の匂い。一見無関係な本同士が隣に置いてあるようで店主の強いこだわりが反映されたキュレーション。並んだ本の隙間に積もったほこりには俗世間と異なる時間の流れ方を感じる。知の巣窟ともいえる雰囲気に背中を押され、名も知らぬ本に手を伸ばすと予期せぬ出会いが待っていたりする。

 

そんなバジラは自身を”初代”輪読師と呼称する。「輪読座」という方法が何百年先も引き継がれていくと確信しているのだ。

 

輪読座の門戸は常時、誰にでも開かれている。アーカイブによる視聴も可能だ。次回の第三輪はクリスマスイブでもある12月24日(日)。バジラ高橋を自分へのクリスマスプレゼントにしてはどうだろう。コチラをクリック。

 

よく見ると足元はサンダル。バジラに冬は関係ない

  • 萩原ヒロキ

    編集的先達:荘子。人材業界の会社員として、営業、労務管理、開発、マーケ、海外事業、広報、人材採用、人事企画を求められるまま次々に異動することも、風に吹かれるすすきや竹のごとき受容力の持ち主である由縁か。野口整体、アレクサンダーテクニーク、ゲシュタルト療法、ヒーリングなどの心身に関わる方法を学び、セラピストとしての活動歴もあり。

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。