チーム渦 – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp Fri, 09 May 2025 23:02:05 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.1 https://edist.ne.jp/wp-content/uploads/2019/09/cropped-icon-512x512-32x32.png チーム渦 – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp 32 32 185116051 『知の編集工学』にいざなわれて――沖野和雄のISIS wave #51 https://edist.ne.jp/cast/isis-wave51_okinokazuo/ https://edist.ne.jp/cast/isis-wave51_okinokazuo/#respond Sat, 10 May 2025 22:54:56 +0000 https://edist.ne.jp/?p=85752

毎日の仕事は、「見方」と「アプローチ」次第で、いかようにも変わる。そこに内在する方法に気づいたのが、沖野和雄さんだ。イシス編集学校での学びが、沖野さんを大きく変えたのだ。

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。51回目の今回は、沖野さんのお仕事エッセイ。沖野さんが仕事のなかで見つけた「型」とは?

 

■■[守]の「型」で会社と仕事の見方が変わった

 

《注意のカーソル》。イシス編集学校の基本コース[守]の初期に学ぶ型だ。これは、誰の頭の中にも備わっているブラウザーのことで、普段は無意識に動かしている。編集学校では、注意のカーソルを意図的に動かすことを覚える。いや、動かさないと、お題が解けない。乏しい知識のストックでは、言葉のインスピレーションが続かない。外に出て周りを見渡し、注意のカーソルを動かし続けることが大事だった。イシス編集学校に出会ったのも、注意のカーソルが偶然にも、それを示したからだ。


その出会いは、しかし、悲しいお知らせからだった。松岡正剛氏の訃報に触れたことで、『知の編集工学 増補版』(松岡正剛・朝日文庫)を知り、この本の中で、自分中で長年求めていたものに出会った気がしたからだ。


私は、自動車会社で商品企画、マーケティング、ブランディングの仕事に携わってきた。今は、交通に新しい価値を付加するMaaS(Mobility as a Service)という分野でアプリの運営に携わっている。専門領域でいえば、企画、マーケティングとなるかもしれないが、大企業で様々な部署を経験しただけともいえる。専門性を問われれば、「資料を作っていました」という感じだ。情報を集め、ストーリーを考え、資料をつくり、説明し、合意形成して、プロジェクトを前に進める。それが私がやってきたことだ。
会社生活も最終盤に入り、自分の専門性について、自問していた。そんな時に出会ったのが、『知の編集工学 増補版』で、私は一読して、「これだ!」と思った。ここには、バラバラのものをつなぎ合わせ、面白くする方法が書かれていた。自分が会社生活で培っていた専門性と重なるのでは? と何かを発見した気分だった。

▲沖野さんが愛読する『知の編集工学 増補版』。付箋の数が読み込み度を物語る。


私の現在の仕事はいわゆる新規事業だ。誰も正解がわからない新しい分野だ。だから、様々なステークホルダーとの共通言語はない。ソフトウェアエンジニアとの間でも、共通言語を探すのに苦労する。そんな時に役だったのが、[守]で学んだ「型」だった。情報を「地」(ground)と「図」(figure)で捉え直す《地と図》、ルール・ロール・ツールを編集する《ルル三条》だ。これらが、相手の立場や、想いを理解するのに大いに役立った。以前の自動車での仕事は、先人たちが培った編集技法により共通言語が行き渡っていたことにも気付かされた。堅苦しいと思っていた社内会議のお作法は、《ルル三条》が洗練されたものだったらしいこと。《要素》《機能》《属性》を用いた情報の整理は、商品のアピールを考える際の基本となるものだった。


一方で、「ありえない言葉」をつくるお題《やわらかいダイヤモンド》では、自分の中の語彙を広げるインスピレーションの乏しさにも気がつかされた。実は、これこそ、人のこころを動かす企画を作る際には大事なことだと思う。会社生活では気づかなかったことだ。そうしてみると、日常の見え方も変わってきた。会社から見える美しい木々が連なる公園の風景は、どの様に言葉で表現できるだろうかと考えるようになった。


会社員としてのキャリアの再整理のために、挑んだ編集学校であったが、自分の新しい面を発見できた。応用コースの[破]で、小学生以来の物語を作るのが、今から楽しみだ。

組織に「専門性」が蔓延ると、事業も制度も人も固定化されやすくなります。一方、「編集がわたしの専門」と気づいた沖野さんには、社内の「型」に気づき、あらゆるものが編集された状態だと見えてきているのでしょう。今後の沖野さんの編集対象は、人々の移動体験。街・人・車といった見える《三位一体》から、雰囲気・音・感触といった見えない《三位一体》まで、《注意のカーソル》を縦横無尽に動かし、新たな物語へと編集していってくれることでしょう。

写真・文/沖野和雄(54[守]たまむしメガネ連教室、54[破]風土粋粋教室)

編集/チーム渦(柳瀬浩之、角山祥道)

]]>
https://edist.ne.jp/cast/isis-wave51_okinokazuo/feed/ 0 85752
『NEXUS 情報の人類史 下』×3× REVIEWS https://edist.ne.jp/nest/nexus02_3reviews/ https://edist.ne.jp/nest/nexus02_3reviews/#respond Thu, 08 May 2025 22:58:22 +0000 https://edist.ne.jp/?p=85682  松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を3分割し、3人それぞれで読み解く「3× REVIEWS」
 歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの最新刊『NEXUS 情報の人類史』(河出書房新社)を読み解く2回目。今回はAI革命をテーマにした「下巻」に挑みます。ハラリは、AIに依存する現代社会の未来をどう予測しているのか。3人の読みを重ねます。


 

『NEXUS 情報の人類史 下――AI革命』×3× REVIEWS

 

1 AI監視社会ではない、別様の社会を想像する
第6章 新しいメンバー──コンピューターは印刷機とどう違うのか
第7章 執拗さ──常時オンのネットワーク

 

上巻の最後は「AIによるルール・ロール・ツールの変化」が語られた。では、AIの進化が、どのような社会を生み出すのか。

 スタバで友人との他愛もない会話。1人でゆっくり読書。そうした時間も24時間監視されていたら。言動だけでなく心という情報まで盗られていたら。リラックスできる時間のない、”常時オン”が求められる社会。これは映画の話ではなく、AI官僚の登場により、刻一刻と近づいている現実である。
 コンピューターに善悪はない。諸刃の剣をどう使うかが今我々に問われているのだ。コンピューターは人間の拡張であるが、同時に人間を変える。chatGPTを学ぶことに必死になる前に、次の社会を想像しなければならない。今こそ新たな物語が必要なのだ。(多読アレゴリア【OUTLYING CLUB】柳瀬浩之)


2 アルゴリズムが自由を阻害する
第8章 可謬──コンピューターネットワークは間違うことが多い
第9章 民主社会──私たちは依然として話し合いを行なえるのか?

 

AIの脅威は、様々な既存システムを壊していくが、その力は、民主主義というシステムにさえおよぶ。

 コンピューターは無垢ではない。独自の根深い偏見を持っている。それは、データベースの中にある人間の差別意識の投影にほかならない。SNSのアルゴリズムの偏りがロヒンギャの虐殺を導いたように、アルゴリズムやAI依存により、自由な討論さえ統制され、民主的な情報ネットワークの崩壊が始まっている。
 皮肉にも、高度な情報テクノロジーでは民主主義の根幹である大多数の合意が難しい。人類は今、生物以外が歴史に関与するという新しいフェーズの中で、あらゆる既存のシステムの破壊が起きている。さらなる破壊か再生となるかは、人の物語の書き直しが必要だ。(55[守]師範・北條玲子)


3 「離見の見」で世界と自分を更新する
第10章 全体主義──あらゆる権力はアルゴリズムへ?
第11章 シリコンのカーテン──グローバルな帝国か、それともグローバルな分断か?
エピローグ

 

AIの登場が、歴史に転換点をもたらす。この先がどのような世界になるかは我々の選択次第だ。何が鍵を握るのか。

 各国のAI開発競争は何をもたらすのか。ハラリは、アルゴリズムによって世界が全体主義に席巻されるデストピアを予言する。世界を滅ぼすのは原爆やウイルスではない。AIが、他者を信じられない社会を生み出すのだ。例えばプーチンのロシアのような独裁主義の国は、容易に権力者がAIに取ってかわられる。ビジネスでも寡占化が進む。今や米国最大の衣料品小売業者はAmazonだ。
 スマホやPCを使っている限り、アルゴリズムから自由になることはできない。ではどうしたらいいか。ハラリの見方に「日本という方法」を重ねるならば、おそらく必要なのは、世阿弥のいう「離見の見」だ。自分の見方や手にした情報をいったん捨て、離れたところから世界をもう一度、見る。自分と情報ネットワークとを常に修正・更新するのだ。私たちはAIの隷属者ではないのだから。(多読アレゴリア【勝手にアカデミア】み勝手・角山祥道)

『NEXUS 情報の人類史 下――AI革命』
ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳/河出書房新社/上下各2200円(税込み)

◆下巻目次

 

第Ⅱ部 非有機的ネットワーク

第6章 新しいメンバー──コンピューターは印刷機とどう違うのか
連鎖の環/人間文明のオペレーティングシステムをハッキングする/これから何が起こるのか?/誰が責任を取るのか?/右も左も/技術決定論は無用

第7章 執拗さ──常時オンのネットワーク
眠らない諜報員/皮下監視/プライバシーの終わり/監視は国家がするものとはかぎらない/社会信用システム/常時オン

第8章 可謬──コンピューターネットワークは間違うことが多い
「いいね!」の独裁/企業は人のせいにする/アラインメント問題/ペーパークリップ・ナポレオン/コルシカ・コネクション/カント主義者のナチ党員/苦痛の計算方法/コンピューターの神話/新しい魔女狩り/コンピューターの偏見/新しい神々?

第Ⅲ部 コンピューター政治

第9章 民主社会──私たちは依然として話し合いを行なえるのか?
民主主義の基本原則/民主主義のペース/保守派の自滅/人知を超えたもの/説明を受ける権利/急落の物語/デジタルアナーキー/人間の偽造を禁止する/民主制の未来

第10章 全体主義──あらゆる権力はアルゴリズムへ?
ボットを投獄することはできない/アルゴリズムによる権力奪取/独裁者のジレンマ

第11章 シリコンのカーテン──グローバルな帝国か、それともグローバルな分断か?
デジタル帝国の台頭/データ植民地主義/ウェブからコクーンへ/グローバルな心身の分断/コード戦争から「熱戦」へ/グローバルな絆/人間の選択

エピローグ
最も賢い者の絶滅

 

■著者Profile

ユヴァル・ノア・ハラリ( Yuval Noah Harar)
1976年生まれ。イスラエルの歴史学者。ヘブライ大学歴史学部教授。石器時代から21世紀までの人類の歴史を概観する著書『サピエンス全史』(2011年)は、2014年に英訳、2016年に日本語訳されるなど、あわせて50か国以上で出版されベストセラーとなった。フェイスブックの創始者ザッカーバーグは、同書を「人類文明の壮大な歴史物語と評した。オバマやビル・ゲイツも同書の愛読者と言われる。巨大AIに関しては一貫して警鐘を鳴らし続けている。

 

出版社情報

 

3× REVIEWS(三分割書評)を終えて

 複雑な社会に生きていると、正解がわからず、つい何かにすがりたくなる時がある。法律、科学、尊敬する人の言葉など……今後はそれがAIなのかもしれない。だが私たちは、これからも何かひとつに正解を委ねてはいけないのだろう。安易な答えに走ってはならないのだ。「わたし」も社会も、自分たちの手で修正・更新し続ける決意と覚悟が必要とされている。(チーム渦・柳瀬浩之)

 

『NEXUS 情報の人類史(上巻)』×3× REVIEWS こちら

 

これまでの× REVIEWS

安藤昭子『問いの編集力』×3× REVIEWS

ブレディみかこ『他者の靴を履く』×3× REVIEWS

福原義春『文化資本の経営』×3×REVIEWS

鷲田清一『つかふ 使用論ノート』×3×REVIEWS(43[花])

前川清治『三枝博音と鎌倉アカデミア』×3×REVIEWS勝手にアカデミア
四方田犬彦編『鈴木清順エッセイコレクション』×3×REVIEWS勝手にアカデミア

]]>
https://edist.ne.jp/nest/nexus02_3reviews/feed/ 0 85682
『NEXUS 情報の人類史 上』×3× REVIEWS https://edist.ne.jp/nest/nexus01_3review/ https://edist.ne.jp/nest/nexus01_3review/#respond Tue, 06 May 2025 22:55:36 +0000 https://edist.ne.jp/?p=85667  松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を3分割し、3人それぞれで読み解く「3× REVIEWS」。
 今回は、ビジネスパーソンにも人気の、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの最新刊『NEXUS 情報の人類史』(河出書房新社)を取り上げます。推薦者は、チーム渦のメンバー・柳瀬浩之さん。「虚構を作り出した人間は、人間至上主義からデータ至上主義へ向かっていると喝破したハラリ氏。氏の今回の相手は、編集学校にとっての本丸、“情報”です」。
 他講座からのゲストも迎え、まずは上巻からヨミトキます。


 

『NEXUS 情報の人類史 上――人間のネットワーク』×3× REVIEWS

 

1 人の歴史は情報をめぐる物語だった

プロローグ
第1章 情報とは何か?

 

上下合わせて600ページ超になる本作。第Ⅰ部第1章は「情報とは何か?」という問いで始まる。答えるためには、人類が情報をどう扱ってきたかを知らねばならない。

 「ビッグデータ」という言葉が輝いた時代がある。情報が多いほど真実に近づける。しかし著者はこれを「情報の素朴な見方」と切って捨てる。周囲を見よ。大量の情報が容易に集まる時代なのに、人類は「自滅に近づいている」。ましてやAIだ。情報を意思決定の手段として活用した人間に取ってかわろうとしている。
 では情報とは何か。人類は、情報を「物事を結びつけるもの」として活用し、人とのネットワークを巨大にすることで生き延びてきた。最たるものが「物語」だ。同じ物語を信じることでつながってきた人類。…例えば聖書。しかし真実だけでは不足だ。真実と秩序が揃って人を動かす「力」となる、その源泉が情報だ。(多読アレゴリア【大河ばっか!】筆司・相部礼子)

 

2 誤りを認めて修正できるか否か
第3章 文書──紙というトラの一嚙み
第4章 誤り──不可謬という幻想

 

情報は人を動かす大きな力となりえるが、諸刃の刃ともなる。悪しき物語に対抗したのは、「誤り」に関わる科学の仕組みだ。

 昔、魔女狩りがあった。悪魔と通じ、空を飛んだという罪で多くの無辜の命が奪われた。魔女の物語は、真実が一つも含まれていないにも関わらず、強力な秩序を生んだ。
 人間は間違う生き物だ。著者はここに活路を示す。自己修正メカニズムだ。自己を疑い、誤りがあったときに認め、修正する仕組みが、人間の欠陥を乗り越える。じっさい科学の分野は、自己修正メカニズムを発揮して進歩してきた。
 今日の肉体も日々の自己修正の賜物だが、本書では自己修正メカニズムの主体を「機関」としているのが印象的だ。たとえ一個人の誤りであっても機関が訂正を引き受ける。「あなたの誤りは我らの誤り」が、これからの情報編集の鍵なのかもしれない。(多読アレゴリア【EDO風狂連】風師・吉居奈々)


3 AIがルールの変革を迫る
第5章 決定──民主主義と全体主義の概史

 

物語も自己修正メカニズムも万能ではない。加速する情報化社会の中で人類は溺れかけている。いま、ルールのどこを動かすべきか。

 情報革命が政治の世界をゲームチェンジしつつある。情報の奔流の中、ポピュリズムは分かりやすい対立軸を示すことで仮想敵の隙につけこむ。その先に待つのは無謬を旗印とする全体主義の世界かもしれない。対する民主主義は高速で虚実が入り乱れる情報に振り回され、多様性を包摂しきれていない。自己修正システムも情報の急流に追いつかず、機能不全に陥る始末だ。そして、ツールを超えた人間ではない知性としてのAIの登場はルール・ロール・ツールを決定的に変化させた。これからの政治は人間と人間以外の分断にどう橋渡しをし、ルールメイキングしていくかが問われる。人間の境界が揺らぐ時代の到来だ。(55[守]同朋衆・佐藤健太郎)

『NEXUS 情報の人類史 上――人間のネットワーク』
ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳/河出書房新社/上下各2200円(税込み)

    

◆上巻目次

 

プロローグ
情報の素朴な見方/グーグルvs.ゲーテ/情報を武器化する/今後の道筋

第I部 人間のネットワーク

第1章 情報とは何か?
真実とは何か?/情報が果たす役割/人間の歴史における情報

第2章 物語──無限のつながり
共同主観的現実/物語の力/高貴な嘘/永続的なジレンマ

第3章 文書──紙というトラの一嚙み
貸付契約を殺す/文書検索と官僚制/官僚制と真実の探求/地下世界/生物学のドラマ/法律家どもを皆殺しにしよう/聖なる文書

第4章 誤り──不可謬という幻想
人間の介在を排除する/不可謬のテクノロジー/ヘブライ語聖書の編纂/制度の逆襲/分裂した聖書/エコーチェンバー/印刷と科学と魔女/魔女狩り産業/無知の発見/自己修正メカニズム/DSMと聖書/出版か死か/自己修正の限界

第5章 決定──民主主義と全体主義の概史
多数派による独裁制?/多数派vs.真実/ポピュリズムによる攻撃/社会の民主度を測る/石器時代の民主社会/カエサルを大統領に!/マスメディアがマスデモクラシーを可能にする/二〇世紀──大衆民主主義のみならず大衆全体主義も/全体主義の概史/スパルタと秦/全体主義の三つ組/完全なる統制/クラーク狩り/ソ連という一つの幸せな大家族/党と教会/情報はどのように流れるか/完璧な人はいない/テクノロジーの振り子

 

■著者Profile
ユヴァル・ノア・ハラリ( Yuval Noah Harar)
1976年生まれ。イスラエルの歴史学者。ヘブライ大学歴史学部教授。石器時代から21世紀までの人類の歴史を概観する著書『サピエンス全史』(2011年)は、2014年に英訳、2016年に日本語訳されるなど、あわせて50か国以上で出版されベストセラーとなった。フェイスブックの創始者ザッカーバーグは、同書を「人類文明の壮大な歴史物語」と評した。オバマやビル・ゲイツも同書の愛読者と言われる。巨大AIに関しては一貫して警鐘を鳴らし続けている。

出版社情報

ハラリの捉える「情報」の姿が見えてきたところで、怒濤の「下巻」へと続きます。

]]>
https://edist.ne.jp/nest/nexus01_3review/feed/ 0 85667
裏路地にちりばめられた物語の断片を探しに――土田実季のISIS wave #50 https://edist.ne.jp/cast/isis-wave50_tsuchidamiki/ https://edist.ne.jp/cast/isis-wave50_tsuchidamiki/#respond Fri, 02 May 2025 22:53:15 +0000 https://edist.ne.jp/?p=85463

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。

 

好評の連載エッセイ「ISIS wave」、記念すべき50回目に登場してくれるのは、53[破]イメージ・チューナー教室の師範代を終えたばかりの土田実季さん。数奇と散歩と編集をつなげた格別のエッセイをお届けします。

 

■■「わたしフィルター」の地図を手に

 

裏路地を目的もなく歩くことが好きだ。昭和の民家が並んでいるような住宅街は、とくにいい。間口の広いコンクリートの立方体が毅然と立ち並ぶ大通りから、ひょいと一つ裏に入るだけで、形も素材も凸凹で、夕飯の匂いが漏れ出すような無防備な世界が広がっている。私は、そんな一つ裏の景色が好きだった。でも、なんで好きなのかは考えたことがなかった。

 

街歩きが好きな友人と散歩をすると、見ている景色の違いに驚く。「雨樋の端っこ、菊みたいに細工してあ ったの、見た?」「さっきの看板、テープ文字だったね」「あの家、ツバメ専用の入り口がある!」。へぇ、そんなとこ見てたんだ、とやんわり感じていたこの差異は、編集学校に入ると、《フィルター》の違いなのだと気づく。タイルとすりガラスに目がない私は、どうやら「家主のこだわり」をキャッチするフィルターが備わっているようだ。カチャ、と誰かのフィルターと替えっこしたら、違う景色が目の前に広がりそうで、わくわくする。

▲「わたしフィルター」が掛かった地図は誰かとシェアすると何倍も楽しい。

 

編集稽古は心地よくて、どんどん奥に誘われた。鼻歌まじりに進んでいくと、見立て》《メタファー》という方法に出会う。これが、楽しい。街の景色も何かに喩えられるかな? と、推しの水路を思い出す。金沢のまちに広がる用水のネットワークの中でも、私の推しは、立体交差している箇所だ。「用水ジャンクション」とネーミングしてみる。すると、高速道路を走る感覚が想起され、用水が通行可能な移動網のように見えてくる。道を歩くのではなく、水流に乗って街の景色を見たら、どんなふうに見えるだろうか。似たもの同士で関係線を引いてみると、いつもは見えない景色が広がっていく。編集術は、身近な景色をどんどんいきいきとさせてくれるものだった。

▲用水ジャンクション。なぜ、高さの違う用水が? できた年代が違うのだろうか

 

 けれど、この頃ほとんど散歩の写真がない。ちょうど[花伝所]に入伝した頃からだ。のんびり散歩に行く時間がなかったのだなぁと、濃密な日々を思い出す。でも、不思議だ。以前は仕事が忙しいときほど散歩に行きたくなったのに、この一年半はそうではなかった。なんでだろう。Whyを考えると、はたと気づく。私にとって「師範代」を纏っての稽古は、うずうずして仕方ない、裏路地散歩と相似なものだったのだ。

 

 学衆の回答は、ひとつとして同じものがない。それは、最適化された国道沿いの景色ではなく、「らしさ」と戸惑いが凸凹に滲む裏路地の景色のようだった。回答がうまれるまでの思考のプロフィールを想像しながら指南を届ける。対話を重ねていくと、言葉の端々にその人の好きなものやこれまで歩んできた道、見逃せない世界へのモヤモヤが宿っていると分かるようになる。回答は、その人その人の人生の物語の断片なのだ。

 そして、また、ハッと気づく。裏路地散歩を私が好きなのは、「小花柄のすりガラス」や「用水の結節点」といった裏路地にちりばめられた情報の断片から、奥に潜む暮らしぶりや歴史の物語を想像したり、読んだりすることが好きだったのだと。

▲水路に注目して地図を眺めると、住宅街の中に気になる用水の結節点を発見。足を運んでみると、加賀藩時代の「木揚場」の景色の断片の樹が佇んでいた。

 

 「裏路地散歩=裏路地を歩く」と思い込んでいたけれど、学びの場にも裏路地な景色があった。ならば、「地」を本に変えたら裏路地を歩くような読書ができるかもしれないし、裏路地散歩な部屋の掃除だってできるかもしれない。「裏路地」の意味も多様に広がってゆく。

 

 雪解水が用水を潤す、散歩日和の春がやってきた。今年は、どこを舞台に裏の散歩をしようか。奥に潜む物語を読みに、まだ散歩をしたことがない「地」に繰り出したい。

「私」を「私」と意味づけるエディティング・モデル。『知の編集工学』で松岡正剛は、コミュニケーションは「メッセージの交換」ではなく「エディティング・モデルの交換」であると喝破しました。土田さんは散歩をしながら街をリバース・エンジニアリングし、問いを立て、街のモデル(型)と対話しました。こうしてエッセイを書くことによって、街とだってエディティング・モデルを交換できると教えてくれたのです。編集ってやっぱり面白い! という著者の声がエッセイから聞こえてきます。

文・写真/土田実季(50[守]外骨ジャーナル教室、50[破]モーラ三千大千教室)

編集/チーム渦(羽根田月香、角山祥道)

]]>
https://edist.ne.jp/cast/isis-wave50_tsuchidamiki/feed/ 0 85463
編集部が選ぶ、2025年3月に公開した注目のイチオシ記事9選 https://edist.ne.jp/list/ichioshi-mar2025-2/ Wed, 23 Apr 2025 03:30:30 +0000 https://edist.ne.jp/?p=84958 公開されるエディスト記事は、毎月30本以上!見逃してほしくないアノ記事コノ記事。エディスト編集部メンバー&ゲスト選者たちが厳選し、注目の”推しキジ” をお届けしています。

 

今回は、2025年3月に公開された記事の中から選ばれたオシ記事9選をご紹介します。

 

マツコ(編集部)
マツコ(編集部)
今月から編集部メンバーに加えて、ゲスト選者を迎えてお届けしていきますよ~。まずは、時の[守]から、この方!推し記事セレクションに初登場です。

 

    • 1康代学匠’s 推しキジ!  鈴木康代
    •      ー 出遊の春らしさでPick!

 

ついに田中優子師範代の教室名発表!―55[守]新教室名【86感門】 

 

2000年の開校以来、生まれた教室名は1000以上。どれひとつ同じ教室名はない。これほど多様な教室名のある学校が他にあるだろうか。 3月15日に行われた第86回感門之盟の冠界式、5月に開講する第55期[守]基本コースに登板する新師範代18名の教室名が発表された。18名のなかにはあの田中優子師範代の姿も。緊張した面持ちで舞台に立つ新師範代たちの胸の鼓動を想像しながら、生まれたてほやほやの教室名をご覧あれ!

 

田中優子学長は、「著書や講演でイシス編集学校を語ることが自分の役目」と常々話してました。しかし、[花伝所]に進み、やってみたくなっちゃったと師範代登板を決意!そして、師範代として教室名をもらった時の弾けた表情がなんともチャームで記憶に焼き付いています。ただ今、55[守]開講用意中の優子師範代。学衆の回答に指南をすることが今から楽しみでワクワクしていると言葉にしながら準備しています。55[守]師範代の興奮が伝わる3月の推しキジです。いざ、55[守]の出遊の旅へ。─鈴木 康代  -> 記事全文を読む

基本コース[守]の学匠である鈴木康代さん、推し記事選者として初登場してくださいました!パチパチ👏 康代学匠が選んだのは、教室名発表の瞬間をとらえたJUSTライター福井千裕さんの記事でした。ライブ感のある写真と文章で、二度と戻らない”その瞬間”が切り取られました。もちろん、読み返せば、今でもその熱気を感じさせてくれます。康代学匠によれば、今この瞬間に、登板を控えた師範代たちは準備にいそしんでいらっしゃるとのこと。4月28日、18教室の扉が一斉に開きますね!新師範代たちにエールを!!
マツコ
マツコ

 

マツコ
マツコ
そして、編集部からも!!
  • 2後藤’s 推しキジ!  
  •      ー イシスの大スクープ!でPick!

 

ついに田中優子師範代の教室名発表!―55[守]新教室名【86感門】 

 

3月の大事件といえば、学長田中優子の師範代登板でしょう。55[守]新教室名発表の一幕、「生涯で一番緊張しています」と白状し、教室名を拝命した田中優子師範代。壇上から降りてきた優子師範代と目があうと、ホッとしたようににっこり。そのチャームたっぷりの表情が忘れられないワンシーンとして心に刻まれました。さて、気になる教室名は?記事でチェックしてみてくださいね。 ─後藤 由加里  -> 記事全文を読む

 

康代学匠、後藤さんのお二人とも、この記事を選びました。二人が共通の言葉をつかって田中優子師範代を形容しています、それが「チャーム」。田中優子師範代のチャームを、まさに感じさせるように記事を表現してくださったのが、福井千裕JUSTライター!素晴らしい。しかし、この記事、田中優子師範代の様子以外にも、注目したいポイントが盛りだくさんなんです。教室名の一覧をみていただくだけでも、編集学校の楽しさ、自由な文化、編集魂を感じます。55[守]に、編集的自由を求めて、たくさんの皆さんが学衆として参加してくださるといいですね!それぞれの教室模様が、今から楽しみです。
マツコ
マツコ

 

  • 3マエストロ上杉’s 推しキジ!  uesugi
  •      応援ファンファーレでPick!

  •  
  •  

    第85回感門之盟(2025年3月9日@京都モダンテラス)が終了した。これまでに公開された関連記事の総覧をお送りする。-> 記事全文を読む

     

  • 【第86回感門之盟】「EDIT SPIRAL」公開記事総覧

    第86回感門之盟「EDIT SPIRAL」(2025年3月15日)が終了した。これまでに公開された関連記事の総覧をお送りする。-> 記事全文を読む


    【第87回感門之盟】「感話集」公開記事総覧

     

  •  

    第87回感門之盟「感話集」(2025年3月29日)が終了した。これまでに公開された関連記事の総覧をお送りする。-> 記事全文を読む

  •  
  • 半年に一度、講座の修了を寿ぐ感門之盟。
    この春は、初の京都での感門(第85回[破]講座)、指導陣によるタブロイドやイシスいろはカルタなどのクリエイティブが光り、田中優子学長の教室名に会場がどよめいた[守][花]の感門(第86回)、漫画家の近藤ようこさんをゲストに、ひたすら物語の方法知を浴びた物語感門(第87回)と、3日間にわたる開催となりました。
    この3つの記事は、イシスのリアルイベントをスクープするJUSTライターの方々によるエディスト記事を一覧にしたものです。各講座の集大成を、エディスト記事で少しでも触れていただけたら嬉しいです。──上杉 公志

     

  • 3月は怒涛の感門之盟ラッシュでしたね。康代学匠と後藤さんがPickしたオシ記事も、このまとめのひとつに含まれていますよ。いずれの回も、JUSTライターの活躍がめざましい!!! 新しくJUSTライターとして活躍を始められたライターの記事も、今回は含まれています。でもね。JUSTライターといえども、一様ではございません。それぞれの”らしさ”がにじみ出るのも、感門まとめを読む楽しみのひとつです。ぜひ、参加された方も、参加が叶わなかった皆さんも、3月の”熱気3連発”を体感してください!
    マツコ
    マツコ

 

マツコ
マツコ
さてさて、次なる選者は、久々の登場!この方の目を引いたのも、感門之盟の関連記事だったようですね。

4編集かあさん’s 推しキジ! 松井路代
      ─ 「師範の眼差しを広めたい」でPick!

 

ダーニングからオーケストラへ【85感門】

 

風に舞う花びらは、本楼から京都へと運ばれた。[守]の師範代は、[破]の師範代へと変身を遂げ、その笑顔には頼もしさが漂う。 思えば、53[守]の本楼汁講で、土田実季師範代は、その力を発揮したのだった。

  •  
  •  53[守]イメージ・ダーニング教室から出世魚して53[破]イメージ・チューナー教室師範代として指南を全うした土田実季さんをフォーカスした記事です。北條玲子師範が、変身のプロセスを、普段の稽古風景に、汁講や感門之盟などの特別なシーンを織り交ぜながら描き出しています。
     変化は関係の中で起こります。学衆に師範代がいるだけではなく、師範代に師範という「見る」人がいるというイシス編集学校のとびきりの仕組みが柔らかく暗示されています。学校現場の難しさが報道される今、このモデルをもっと表に出し、社会の中に広めていきたいと考えています。── 編集かあさん・松井路代 -> 記事全文を読む

編集かあさんこと、松井路代さんが、選者として久しぶりに登場です。選んだものは師範の目線を表現した感門之盟のJUST記事です。マツコは19[守]で学衆としてはじめて教室に参加したとき、師範代の先に師範というロールがあることに驚きました。これで重層的にサポートしながら、教室環境を創り出しているのか、と。編集かあさんの温かいまなざしがココに向いたかと、ほくほくしました。選者の松井さん、そしてJUSTライター&師範の北条さんの、温かい気持ちを感じる記事でしたね~。土田実季師範代、感門、おめでとうございました~。
マツコ
マツコ

 

5チーム渦:角山’s 推しキジ! 
      ─ 「かさね」でPick!Pick!

 

【86感門】「いろは型かるた」制作秘話

 

2025年3月15日、桃や梅が春の到来を告げる季節。第86回感門之盟「EDIT SPIRAL」の会場である本楼のあちこちで、さまざまな絵柄のかるたが咲き乱れている。このかるたは、イシス編集学校で学ぶ方法の「型」を48枚に込めた、方法の花々である。

 

少し脱線して「記事の裏側」を語りたい。54[守]で「いろは型かるた」を作りあげた、という事件は記事に詳しいが、これを書いたのがJUST記者の上杉公志記者というところに意義がある。今回は感門之盟の前に、守・花のエディスト番とJUSTチームとで事前にミーティングを実施。互いの意図を交換しあったのだ。交わし合いからは、エディスト記事と守別院を結んで盛り立てる「リンクマン」というロールが生まれ、相部礼子師範が本楼とパソコンの向こうを繋げた。記事は、54[守]の稽古模様、感門の準備の様子、松岡校長のエピソードまで、人を重ね、思いを重ね、出来事を重ね……。ここには、十二単のごとき「かさね」の技があった。――角山 祥道 -> 記事全文を読む

編集部メンバーが書いた記事は自分たちでPickすることがないように、という縛りで、推し記事を運営してきた。渦チーム、師範の角山さんだからこそ選んでいただけた記事だ。裏話を聞けて良かったと思いました。ずいぶんと工夫が満載の凝った記事だと思ったんですよね、そんなていねいな事前準備があってこその記事だったと知り、納得です。活動もすばらしい。カルタづくりが、編集の実践となり、みなさんの血肉となったに違いないですね。アッパレ!
マツコ
マツコ

6吉村編集長’s 推しキジ! 
      ─ 「師範の眼差しを広めたい」でPick!

 

萌えよ!ヴィジュアル・アナロジー 53[破]五十三次道連れアート展レポート

 

自分史をビジュアル化し、一枚のグラフィック・アートにする――クロニクル編集術の「全然アートなわたし」は、突破要件に入らぬ番外稽古ながら、[破]の講座で学んだ方法を味わい尽くせる格別なお題だ。感門之盟を一週間後に控えた3月1日、このお題に回答した53[破]の学衆と講評を担当する指導陣、そして旅めくワールドモデルに誘われた道づれチャット衆の総勢24名が、オンラインの画面上で一同に会した。

 

自分史をグラフィックにする。[破]のクロニクル編集術では、自分史と一冊の本から歴象を取り出し、それを一つの年表にした後に、さらに3つのトラックに分類し直す。自分の歴史ですら、読みかえ可能であって、編集可能であることを体得できる編集術だが、それがさらにグラフィックに仕立て直すとなると、そこに新たな見立てが入ることになる。それぞれのヴィジュアルクロニクルが一堂に会して、師範による寸評ZOOMセッションの番外稽古。贅沢な仕立てである。記事はセッションと寸評を混ぜたかたちになっているが、それぞれのクロニクル物語にも踏み込んで読んでみたい気になる。── 吉村 堅樹 -> 記事全文を読む

むかーし昔、あるところに[破]を2回やることになったマツコという人がいました。(1回目は突破ならず。物語講座に進みたくて、2回目の破に挑戦したのでした)その頃には図解のお題は[破]で経験することはできませんでした。図解お題があるのは[離]だけだったんですよね。今の[破]には、図解が含まれていていいですね。そのあたりのことは、本文の後半に記されています。書き手は、物語の名手・吉田麻子師範。流れるような言葉に魅せられるうちに最後まで一気読みできることまちがいありません! 作品の数々は、”らしさ”にじみ出る秀作ぞろい。53[破]の皆さんの熱気がむんむん伝わりました。
マツコ
マツコ

 

マツコ
マツコ
続いてのこのお方も、推し記事選者としての初登場ではないかな?!イェイ、八田律師~!!!

7八田律師’s 推しキジ! 
      ─ 気になる特別講義でPick!

 

編集工学2.0×生成AIで「別様の可能性」に向かうー―イシス編集学校第54期[守]特別講義●宇川直宏の編集宣言レポート

 

「生成AIの時代、作家はどこに存在しているのか?」--現“在”美術家でライブストリーミングチャンネル・DOMMUNE主宰の宇川直宏さんはこう問いかける。

 

各界の著名人による特別講義。現“在”美術家でDOMMUNE主宰の宇川直宏さんによる編集工学2.0講義のレポートです。ヘンリー・ダーガー(1892-1973)のグロテスクでファンタジックな作品や、2024年に動画生成AIで作られたMVなども紹介しながら、現在美術のクロニクルを辿れる贅沢なレポートです。生成AIとどう関係していけばいいのか。拒絶するのでもなく、全部受け入れるのでもなく、エディットしていくための問いが生まれます。 ── 八田 英子 -> 記事全文を読む

まあ、なんと石黒好美さん!!すごい!!!読み応えのある記事をつくってくださいました!!!!!宇川直宏さんがどんなふうに時代を読んでいらっしゃるか、編集工学を、松岡正剛校長を、どんなふうに見つめていらっしゃるか、編集学校のどのあたりに可能性を感じていらっしゃるか、つぶさにわかるまとめ記事、圧巻です。マツコは宇川直宏さんがなぜ「現”在”美術家」とおっしゃっているのか、理解が進んだ気がしています。八田律師の”エディットしていくための問い”というフレーズにもきゅんときております。
マツコ
マツコ

8金 副編集長’s 推しキジ!もうひとつ!!!! 
      ─ タイトルネーミング でPick!

 

 

【ほんのれんラジオ:恋愛6】ディカプリオが金髪水着モデルばかりを選ぶ理由?スウェーデン発のコミックエッセイ『21世紀の恋愛』を読んで、資本主義社会で恋愛が難しくなった理由を考えた

 

ほんのれんラジオの最新エピソードが公開されました! イシス編集学校で世界読書奥義伝[離]まで了えた4名(ニレヨーコ、おじー、はるにゃ、ウメコ)がお送りするほんのれんラジオ。 ほんのれん vol.23の問いは、「これって恋愛? 〜この世界を動かす欲望〜」です。

 


「ディカプリオが…」はエディスト史上、最大級に週刊誌的なネーミングではないかと思う。エディストにはこういう攻めたタイトルがあまりない。ほんのれんには、これからもガンガンいってもらいたい。とはいえ、記事を書くときに「ディカプリオ」「金髪水着モデル」のようなキラーワードを使えるケースはなかなかない。そういうときに「面白い」を狙いすぎると、わけのわからないタイトルになってしまう。「面白い」から「伝わる」に切り替えた方がいいこともある。その点では「87感門」は何を伝えたいのかがよく伝わってきた。短いタイトルに5WHが敷き詰めてある。── 金 宗代 -> 記事全文を読む

なっがーいタイトル。最近のウェブ記事っぽくていいですね。ほんのれんのメンバーたちだからできる技がありますね。編集会議で、けっこうよく話題になるのが、タイトルの付け方について。金さんがかかれているように絶妙な感じを出すのは、そうとう腕がいることなのですよね。離で表彰されるメンバーたちがいるからこそできることもあるのか?!こんどそんな話をラジオで語ってもらえたらうれしいかもですね!そうそう、東京でほんのれんの棚を体験できる本屋さんができたらしいですよ。虎ノ門だとか。みなさん、足を運ばれてはいかがですか? 飛行機や新幹線で東京にアクセスする方にとっては、確実に豪徳寺へより、行きやすい(笑)。 
マツコ
マツコ

 

マツコ
マツコ
今月の推し記事、最後を飾るのは再びこの方なのです。もうひとついいですか、と、2つ目をPickしてくださっていたのでした。

9康代学匠’s 推しキジ!もうひとつ!!!! 
      ─ 裏推しキジ、”矛盾から始まる春” でPick!

 

【多読アレゴリア:身体多面体茶論】 日暮里の土耳古でベリーダンスを食す!(イベントレポート編)

 

2025年3月14日金曜日、日暮里「夕やけだんだん」の片隅に北は埼玉、南は沖縄から身体多面体茶論の茶人たちが集まった。

 

[多読アレゴリア]のネーミングは、なんともユニークなものばかりで、名前を見ながら何が行われているのか遊刊エディストの記事から想像しています。
今回は、身体多面体茶論の怪しく矛盾を綴ったレポートに注目!

身体と資本主義、ゆっくり語りたいけど落ち着かない、食べたいけど踊りたい、感門之盟前だけど行きたい、という葛藤を抱えながらも固定化され疲弊した社会に杭を打つ決意も感じられ、次のシーズンにも期待したくなるレポートでした。─鈴木 康代  -> 記事全文を読む

裏推し記事とは、今月号の最後を飾るにふさわしい絶品の響き。鈴木康代学匠の注意のカーソルが向いたのは、摩訶不思議な単語がたくさん出現する現場レポートでした。ディープなトルコ文化の中で、いったいどんな会話が繰り広げられたのか、興味しんしんになりますね。ベリーダンスを踊りに舞台にあがった皆さんの身体を写真で見てみたかった!!!と思うマツコなのでした。身体多面体茶論からのまたのレポート、お待ちしております。ぜひ身体の写真多めでPlease! :-p
マツコ
マツコ

 

 

以上、2025年3月の記事から、エディスト編集部の”イチオシ” を厳選してお届けしました。みなさんのオシは、見つかりましたか?

 

次に選ばれるのは、あなたの記事かもしれない!

 

 


 

★無料!編集力チェックはこちら

★毎週のメルマガ登録はこちら

★無料の学校説明会へどうぞ

 


 

 

]]>
84958
風越と子育てと師範代のわたし――長谷川絵里香のISIS wave #49 https://edist.ne.jp/cast/isis-wave49_hasegawaerika/ https://edist.ne.jp/cast/isis-wave49_hasegawaerika/#respond Tue, 22 Apr 2025 23:00:57 +0000 https://edist.ne.jp/?p=84648

軽井沢風越学園は3歳から15歳までが体験を通して遊びと学びを深める探究型混在校だ。軽井沢にあるこの学園の卒業式に特別な思いで臨んだのが、長谷川絵里香さんだ。娘の学園での最後の半年間と重ねるように、長谷川さんは54[守]師範代として登板した。

 

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
好評の連載エッセイ「ISIS wave」、今回は長谷川さんの母&師範代体験です。

 

■■ないものづくしの卒業式

 

 ここには、卒業式っぽい、当たり前のものがなかった。
 2025年3月、長女が3期目の卒業生として「軽井沢風越学園」の中学校を卒業した。
 風越の卒業式には「来賓挨拶」がない。そもそも来賓がいない。卒業式の「全体練習」もない。在校生から卒業生へ贈る言葉のセレモニーもない。スタッフ(風越に「先生」の呼称はない)の指導もない。
 《地》はどこまでも子ども達で《図》には彼らが必要とするものだけがあった。司会、台本、照明、音響、掲示物、動画撮影、設営……ほぼすべてのロールを子ども達が担った。卒業式自体、子ども達がつくるプロジェクトなのだ。在校生とその保護者は、まるで「推しのライブ」かのように、卒業生の名を呼び、歓声をあげ、共に涙した。

 

▲25名の卒業生が一人ずつレッドカーペットを歩いて登場し、300名ほどの参加者を前に思いを語る。卒業証書を渡すスタッフは子ども自らが指名し、登場の仕方、音楽、服装、言葉、その全てにその子らしい編集が光る。

 

 「子どもこそがつくり手である」という学園の理念通り、長女は風越での5年間、ゼロから自由に色々なものをつくった。小説を書いて本好きの友達と2回も本を出版し、軽井沢町を巻き込んで地元の小中高生とブックイベントを開催した。制服も自分たちでつくった。
 自由につくると言えば聞こえはいいが、実際はうまくいかないことの連続だ。始める自由があれば、やめる自由もある。楽しそうに報告してくれていたプロジェクトを道半ばで「やめた」と聞けば、私の心はざわめいた。

 長女は卒業間近、風越を「休憩所」と捉えるか「ジム」と捉えるかによって、自由の持つ意味が大きく変わると教えてくれた。

 

▲長女の考える風越の「自由」。

 

 きっと、休憩所とジムの間を行き来しながら、不安も、葛藤も、衝突も、挫折も、喜びも、達成感もたっぷり味わってきたのだろう。そしてその過程で、たくさんの新たな私と、私たちに出会った。普段「しんさん」と呼ばれている理事長が、卒業式で読み上げた型破りな卒業証書は、イシスの型《たくさんのわたし》で溢れていた

 

▲一行ごとに《三間連結》になっていることにお気づきだろうか。

 

 風越最後の1年間、受験勉強をする長女は「わたし」という小さな灯りを頼りに、暗いトンネルの中を歩いていた。同時期に54[守]師範代として初登板した私も、そのプロセスで感じる不安や葛藤は同じだった。毎週一緒に図書館へ行き、時に弱音を吐いては励ましあった。受験期の親子は衝突しがちだが、同志のような存在になれたのは、お互いの苦労や喜びに心底共感しあえたからだ。

 

 私が師範代になるなんて思ってもみなかった。風越の理事長であり54[破]風土粋粋教室の師範代、本城慎之介さんの「面白いですよ」の言葉に、進むほどに変わる景色を私も見てみたかったのだ。

 

 卒業式の1週間前は、第86回感門之盟だった。54[守]センス歩く教室の学衆に卒門証を渡し、私の師範代生活は終了した。明るくて自由でとても熱心な学衆たちだった。
 教室クローズの3日前、「指南が終わらない」と緊急SOSを出した私に、師範から届いたのは、方法と「エリカ師範代ならできます」という予想外の言葉だった。それは信用ではなく信頼だ。その瞬間、自分も知らない驚くほどの力が溢れ出た。その数、2日で27指南。
 送り手と受け手、主客が入れ替わることで、モノの見え方、感じ方がガラリと変わるのが師範代の面白いところだ。想像では辿り着けない。実際に体感したことで、自分の中の感情や価値観がぐわんぐわんと揺さぶられた。
 正解があるようでない編集道は、風越の自由にちょっと似ている。自ら進まなければ何も始まらず、発見する面白さや自分で掴む手応えもあれば、不安や焦りに立ち竦むこともある。
 今年、長女に続き、次女が風越を卒業する。当たり前を問い、主客をくるくる入れ替えながら、今日も私は休憩所とジムの間で彼女を見守っている。

問いが“give”され、問いを“find”して、問いを“make”する。松岡正剛校長は、これが編集の基本動作だと明言しました。教師主導で粛々と行われることの多い卒業式を、仲間と共に作った長谷川さんの長女も、師範代として指南と教室運営をした長谷川さんも、渦中で「問いの編集」の基本動作を体感したのでしょう。長谷川さんの師範代生活は終了しましたが、これからは家庭や実社会で生き生きとした場を築いていくことを期待しています。

文・写真/長谷川絵里香(51[守]若水尽きぬ教室、51[破]トークン森々教室)
編集/チーム渦(角山祥道、大濱朋子)

]]>
https://edist.ne.jp/cast/isis-wave49_hasegawaerika/feed/ 0 84648
書かれた言葉の裏側に潜むもの――青井隼人のISIS wave #48 https://edist.ne.jp/cast/isis-wave48_aoihayato/ https://edist.ne.jp/cast/isis-wave48_aoihayato/#respond Sat, 12 Apr 2025 23:45:42 +0000 https://edist.ne.jp/?p=83937

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。

 

青井隼人さんは、イシス編集学校の基本コース[守]、応用コース[破]の師範代を経て、5月12日開講の55期[守]では師範を務める。
現在、大学で教える青井さんは、イシスを経て指導の仕方が変化したという。どう変わったのか。好評の連載エッセイ「ISIS wave」、48回目の今回は、青井さんに訪れた変化をお送りします。

 

■■師範代を経験して

 

 大学院生だった僕は、指導教員からのコメントを見るのが怖かった。送った論文の草稿はいつも真っ赤になって返ってきた。不足を的確に突くストレートな言葉が胸に刺さる。大学院の指導とはそういうものだと受け止めようとするが、どうしても1日置いてからでないとメールを開く気にはならなかった。
 イシス編集学校に入門したのは、大学院を修了してから6年後、2022年のことだった。師範代から初めてもらった指南は、秋風のように心地が好かった
「同じ意味なのに、アタマに浮かぶイメージって変わってきませんか? 編集学校では、このような違いを大切にしています。正解も不正解もありません。それぞれでいいんです」
 正解も不正解もない? それでも指南によって回答は評価され、次に目指すべき方向性が示された。指南の言葉に励まされた僕は、すぐにお題の回答に夢中になった。[守]コースの17週間は、いつも指南が待ち遠しかった。
 [守]コースを始めてひと月ほど経ったころ、大学に職を得た。博士学生の研究とキャリア開拓の支援を担当する専門教員として採用されたのだ。その頃には、すべての回答を受け止め、思考の過程を掬い取り、その先を見せてくれる指南にすっかり魅了されてしまっていた。どうしたら学生を励ます研究支援ができるだろう。自分も指南が書けるようになりたい。[守]コースで編集稽古を終わりにするわけにはいかなくなった。
 2024年春、師範代養成コースである[花伝所]を修了し、斜格多義る教室の師範代として登板した。受容と評価と問いの《三間連結》を基本の型とする指南は、相手の不足を不足として単純に突くだけの方法ではなかった。不足が次の編集可能性であることを相手に気づかせるための方法が指南だったのだということを、師範代を経験して改めて理解した。
 [守]の師範代を経験したことで、学生指導の言葉も変わった。これまでは提出された文書に書かれた言葉を添削するだけで、なぜ学生がそのように書いたのか、どのように考えてそう書いたのかについて、想像しようともしなかった。書かれたものが僕にわかるかどうか、そこだけが評価の対象だったからだ。しかし指南はそうではない。相手がその文章をどんな風に考えて書いたのかを想像できなければ、指南を書くことはできない。指南の型を覚えてからの僕は、学生の思考にできるだけ寄り添い、受容することを意識するようになった。
 「聴いてくださって本当にありがとうございました。そして今の私に必要な言葉をかけていただいたように思います」

 あるとき、博士論文の執筆相談に来た学生が、そうお礼を伝えてくれた。受容という方法を知らなければ、ここまで深く学生と関われることも、きっとなかったと確信している。

▲編集学校で学んだ読書の型のエッセンスを取り入れた、青井さんのオンライン読書会(ゼミ)の様子。

教師の授業とも違う。講師の指導とも異なる。編集学校の「指南」は、編集の「型」を媒介にした自他のエディティング・モデルの交換です。この交換を通し、学ぶ側は別様の可能性に気づいていきます。イシス編集学校の秘伝ともいえる「指南」の方法は、[花伝所]でしか学べません。学ぶとどうなるか。青井さんがそのひとつの答えを見せてくれました。

文・写真/青井隼人(50[守]厳選タングル教室、50[破]ダルマ・マントラ教室)
編集/チーム渦(角山祥道)


 

◆イシス編集学校 第55期[守]基本コース募集中!◆
稽古期間:2025年5月12日~8月24日
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu

]]>
https://edist.ne.jp/cast/isis-wave48_aoihayato/feed/ 0 83937
橋向こうの景色――53[破]感門ルポ https://edist.ne.jp/post/53hakanmonrepo/ https://edist.ne.jp/post/53hakanmonrepo/#respond Fri, 11 Apr 2025 00:53:08 +0000 https://edist.ne.jp/?p=84291  世界には境界がある。「こちら」と「向こう」を分けている境界線だ。

 向こう側を覗いてみたい、知りたいという抑えきれない好奇心と編集という方法が2つの世界を繋ぐための“橋”を生み出す。どんな世界が広がっているのだろうか、未知への期待と少しの恐怖が渦巻きながら、私たちはいくつもの“橋”を架けることに挑み続ける。

 

 まだ冷たい風が吹く3月9日。感門之盟は別院のコンセプト「東海道53次」のようにリアルでも東京「本楼」を飛び出し、京都市左京区の「京都モダンテラス」で行われた。まさに“出遊する感門”である。平安神宮に隣接するモダニズム建築は、一歩室内に入ると冷たい風が止み、柔らかな陽射しが降りそそぐ。「Bridge Over the Bridge」と名付けられた感門は、橋をキーワードに場所、時代、そして人へと橋を架けることを様々なアプローチでコンテンツにしていく。この式自体がまさに編集の実践の場だった。

 

 美味しい料理とアルコールを口にし歓談する参加者の様子は、いつもの本楼での感門之盟とは一味違う雰囲気を作り出していた。慣れた本楼での開催ではなく、京都への出遊に踏み切った理由を知りたくなった私は、[破]の原田淳子学匠にこっそりと尋ねてみた。

▲登壇者に耳を傾ける参加者たち

 

 「いつも東京に来てくれる関西に住む学生の師範代が、“一度でもいいから関西でやってほしい”とこぼしていたんですね。この言葉に応えたくなりました。それに今なら面影となった松岡校長がどこまでもついてきてれる。だからできると思いました」

 原田学匠はいつも通り穏やかに、でもいつもより熱く語ってくれた。

▲本棚の上の松岡校長の本と写真

 

 当日は福田容子評匠や奇内花伝組といった関西にゆかりのあるイシス編集学校のOB、OGが準備のためにたくさん集まった。橋を渡る決断の裏には、イシスが架け続けた橋の存在があったのだ。

 

 53[守]に師範代として登板した私は、53[破]に進んだ同期師範代、そして自分の教室から進破した学衆に直接お稽古の話を直接聞きいてみたいと、今回、京都を訪れた。53[破]への橋を渡った師範代達は指南の難しさや葛藤と師範代だけが味わえる格別の楽しさについて語ってくれた。「師範代」と呼び掛けてくれたのは私の[守]の教室の学衆の2人だ。「難しい」、「大変だった」と橋を渡った未知の世界での景色を振り返りながら、溢れる笑顔で話してくれた。イシス編集学校には[守]と[破]、そして[花伝所]へと繋がる橋がある。「向こう」側での経験は、自分の見方や考え方をぐっと広げていく。

 

 「編集という刀を使って、橋を架け続けてください」

 原田学匠の言葉は、53[破]師範代という目の前に架かる橋に気づきながら、渡ることをやめてしまった私にぐっと刺さった。この痛みを感じたのはきっと私だけではないだろう。仕事で、日常で、あらゆる場面で橋を架けることを諦めている人にも、深く刺さったのではないか。でも私たちはこれが痛みだけで終わらないことも知っている。この「痛み」も、編集という方法を使うことで、もう一度橋を架けることに挑戦する「勇気」へと変えることができるのだから。

 

 

文/山口奈那

アイキャッチ/大濱朋子  

文中写真/中村裕美

]]>
https://edist.ne.jp/post/53hakanmonrepo/feed/ 0 84291
AI×編集――佐藤龍太のISIS wave #47 https://edist.ne.jp/cast/isis-wave47_satoryuta/ https://edist.ne.jp/cast/isis-wave47_satoryuta/#respond Thu, 03 Apr 2025 22:54:11 +0000 https://edist.ne.jp/?p=83780  

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。

 

AI時代に、イシス編集学校の「学び」はどう生かされるのか。情報の編集にはどのような価値があるのか。こんな疑問を胸に、基本コース[守]に入門した佐藤龍太さん。その探究心はとどまるところを知らず、ついに編集AIを作ってしまった。その顛末とは?
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。今回は、佐藤さんのAI×編集研究記です。

 

■■AI時代に情報の編集は必要なのか

 

 不足は完全を凌駕する。
 不足とは欠けることではなく、創造のために必要な余地である。
 そのような不足の価値を知らしめたのは、[守]の稽古での経験だった。

 

 私はもともとソフトウェアエンジニアでシステム開発を専門としてきた。いまはデータやAIを利活用しながらクライアント企業の生産性向上や、業務効率を支援する会社を立ち上げて取り組んでいる。そんな私が[守]を受けた理由の一つに、「これから確実となるAI中心の社会で情報の編集にはどのような価値があるのか?」があった。AIがこのまま進化すれば、膨大な知識をもとに人間の言葉を自由自在に扱っていくだろう。この時勢に情報の編集が本当に必要なのか? 実際に[守]を体験することでその是非を確かめたかった。

 

 [守]の稽古は38のお題からなるが、そのお題すべてに正解は用意されておらず、正解を求められることもなかった。すべて自分の頭で考えて、自分が納得したら回答する。番ボーと呼ばれるエントリー型講評お題の「即答・ミメロギア」もそうだ。ミメロギアでは、6つのお題が出る。一対の言葉に形容をつけて関係づけ、新たな「対比」を発見するお題だ。例えば「ひややっこの漱石・テリーヌの鴎外」というように、異なる要素に共通点を見出し、新たな視点を提示する。
 何度も回答を推敲してお気に入りの作品をエントリーすることができたが、入選作品はそのうち1つのみ。なぜ選ばれなかったんだろうと、悔しさを抱えながら他の守学衆全員のエントリー回答と講評をAIで分析した。同時に分析結果をAIに与えてミメロギア回答を相当数作らせてみた。
 例えば、AIは「草枕の漱石・舞姫の鴎外」「千円札の漱石・医学書の鴎外」といった回答を弾き出した。理解・技術ともにクリアしているが、「ひややっこの漱石・テリーヌの鴎外」と比較するとわかるように、どこか奥深さが表現できていない。面白味もない。入選している作品には人間特有の不完全さから生まれる遊び心や活き活きとした偶発性が存在していた。人間は知識や論理に穴があるからこそ、思いがけない発想の飛躍や意外な組み合わせを生み出せる。その「不足」が創造の余白となり、そこに奥深さが宿るのだ。

 

 さらに[守]の指南をAIで再現できるかを試すため、卒門と同時に復習を兼ねて「ISIS Dojo」というAIシステムを自分用に開発した。過去のお題すべてに対して、何度でも自由に回答ができ、師範代の言葉を学習して指南をしてくれるAIである。それも数秒で指南が返ってくる。

佐藤さんが個人用に開発した指南AI。「AIコミチコ師範代」が数秒で指南を返してくれる。


 けれど、これも何かが足りない。[守]の稽古では必死に考えて回答をした後に、指南がくるまで少なくとも数時間はかかる。その間、PCの向こうにいる人間の師範代は回答からみえる《たくさんのわたし》のプロフィールを読み取り、今回はどの「わたし」が顔を出しているのかということを踏まえて指南をしてくれる。師範代と私の関係がそこに存在するのだ。AIは師範代の指南の言葉を容易に真似ることはできるが、私との関係線をそこに引くことができないし、そこに余白や遊びを付け加えることもまだまだ難しい

 

 [守]の稽古と師範代の指南を通して、私は「不足の価値」を改めて認識した。AIを自在に扱えても、まだまだAIは人間の不足から生じる奥深さは表現できないし、人間の中に「らしさ」を見出したうえで指南することは難しい。AIで追求できる「完全さ」よりも、人間特有の不足が生み出す予測不能な創造性や関係性にこそ価値がある。そこに情報の編集を学び続ける意義を感じた。
 AIが進化していく時代だからこそ、人間同士が「不足」を介して響き合い、互いの「らしさ」を映し出す情報編集の場に、私は新たな可能性を見出している。

「何かが足りない」と感じる心が創造の扉を開ける。佐藤さんのAI時代への問いは、「感」をゆり動かす編集稽古の場で、扉を開ける鍵の一つを手にしました。速さや正しさではない血のかよう人との交わし合いが、(クエスチョン)から(エディット)へ、EからQへのスパイラルを生んだようです。4月14日から始まる54[破]でも、まだ見ぬ扉を開け、さらなる関係の発見に挑んでくれることでしょう。

文・写真/佐藤龍太([54守]チリモンどんたく教室)
編集/チーム渦(大濱朋子、角山祥道)


 

◆イシス編集学校 第55期[守]基本コース募集中!◆
稽古期間:2025年5月12日~8月24日
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu

]]>
https://edist.ne.jp/cast/isis-wave47_satoryuta/feed/ 0 83780
エディスト編集部のイチ推しセレクション [2025年3月] https://edist.ne.jp/list/ichioshi-mar2025/ Sun, 30 Mar 2025 23:34:01 +0000 https://edist.ne.jp/?p=83741 公開されるエディスト記事は、毎月30本以上!そのなかからエディスト編集部メンバーが厳選した、もう一度読みたい注目の”今月の推しキジ” をお届けしています。

 

今回は、2025年2月に公開された記事の中から選ばれた記事をご紹介します。それでは、さっそく先月の推しキジ、発表~です!!

 

    • 1後藤’s 推しキジ! 
    •      ー 江戸に学び、江戸を展き、EDOと遊ぶでPick!

 

<速報>ISIS FESTA「江戸・蔦重の編集力」突入レポート

多読アレゴリア「EDO風狂連」主催のISIS FESTA SP「田中優子の江戸・蔦重の編集力」の開催レポートが届きました。江戸と一言でいってもその歴史は長く、時代を把握するにはとっかかりが必要です。今回のISIS FESTA SPでは、江戸を〈ものづくりに没頭した時代〉という地において、00枚はゆうに超える図版を用いて多数の事例を紹介しながら江戸時代を立ち上がらせます。事例の中には「物尽し絵」もありましたが、たくさんの図版で江戸をつくす圧巻の講義!江戸を浴びた1日でした。

 

第二部はEDO風狂連クラブメンバー限定の歌合の会が行われました。月をまたいで3月の記事になりますが、こちらもあわせてお読みください。

我々はいかにしてEDO人となりしか

後藤 由加里

 

大活躍!JUSTライター畑本ヒロノブ名人による記事が選ばれました。読み進めると、あ、これは畑本名人が書いた記事かなと思わせる、畑本風味がわかってきたマツコです。いつも読みごたえがあります。そして、細部に分け入ります。そんな畑本フィルターを通して見えたISIS Festaは、参加していない方に、ああ、これは見逃して惜しいかったなと思わせる記事になっていますよね。後藤さんは、2月に続き、3月もお江戸の記事オシでした。ちなみに1月は、こちらの記事でしたね→「べらぼう絢華帳 ~江戸を編む蔦重の夢~ その一」。
マツコ
マツコ

 

後藤由加里
後藤由加里
お江戸といえば、田中優子学長の学長通信が毎月1日にエディストに登場します。こちらは1月の記事へのリンク→「田中優子の学長通信」!どうぞあわせてお見逃しなく。

 

マツコ’ Plus One! 🐶

なぜ畑本ヒロノブ師範代は「畑本名人」と呼ばれるようになったのか?は、こちらの記事を要チェック~!

 

★2025新春放談 其の参 – イシス随一のマエノメリな姿勢が武勇伝をつくる

 

  • 2 マエストロ上杉’s 推しキジ!  uesugi
  •      応援ファンファーレでPick!

     

    53[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!アリストテレス大賞 小笠原優美さん

     

    イシス編集学校の[破](応用)コースでは松岡校長の仕事術を4つの編集術として学ぶことができる講座です。そのうちの一つ、「物語編集術」では、モデルとなる映画作品を換骨奪胎して、3,000文字の物語を書き上げます。この記事では、53[破]で提出された48の物語の中から最優秀賞に選ばれた作品を紹介しています。

    完成された物語とその講評だけでなく、どのようなプロセスで物語が形となり、書き手にどのような変化がったのか。普段おもてにはなかなかあらわれない稽古の一端を、この記事は取り上げてくださっています。

    優秀作品を紹介するこちらの2つの記事もあわせてご覧ください。──上杉 公志

     

    53[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!アリス大賞 高橋澄江さん

     

    53[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!テレス大賞 石黒好美さん

     

     

  • マツコ
    マツコ
    すばらしい作品が、また新たに[破]から生まれましたね。そして、記事を担当してくださった白川さん、戸田さん。指導陣自らの記事執筆に情熱を感じます。なんといっても、1)受賞された物語を、なんと”全文”まるっと読むことができる、2)師範代の振り返りコメントもいただいて、3)講評を担当した評匠の評価が読める、という、大盤振る舞いです。イシス編集学校では、2008年に『物語編集力』という書籍を発行して、当時の編集稽古から生まれた作品を紹介していますが、令和版『物語編集力』はエディストで読めるとは!受賞された小笠原さん、高橋さん、石黒さん、おめでとうございました!

 

マツコ’ Plus One! 🐶

応用コース[破]で物語編集に魅せられたら、次は[物語講座]へ行くしかない!

3/29には、物語講座の修了式である「績了式」が行われましたので、エディストに旬なJUST記事が公開されています。こちらにもお届けします~

 

【87感門】感話集 物語づくしのスペシャルな1日に(司会・鈴木花絵メッセージ)

[遊]物語講座17 綴 ISIS物語アワード受賞者発表ーー【87感門】

物語は世界を創る方法 綴師・創師績了式メッセージ【87感門】

「講座の中で最高に面白い」吉村林頭が語る「物語の力」とは【87感門】

 

チーム渦:柳瀬さん’s 推しキジ! yanase
      ─ 生成AIと編集力でPick!

 

  • ⦿【ISIS co-mission INTERVIEW04】鈴木健さん AI時代に求められる編集力とは?

    Google先生からchatGPT先生へ。いまや生成AIは必須ツールとなりつつあります。特に要約させたらピカイチです。いやー、ほんとに便利。もう手放せません。でもツールが便利になると思い出すのは、マーシャル・マクルーハン。生成AIは脳の拡張かもしれませんが、同時に人間にどんな影響を与えるのでしょうか?その1つの答えは、「情報に身体が抜け落ちる状況を加速させる」のかも。生成AIの答えで知った気になってはダメだ。もっと自分の体験から紡いだ言葉に編集せよ。私は、そんなメッセージをこの記事から受け取りました。── 柳瀬 浩之

マツコ
マツコ
柳瀬さんには、鈴木健さんの言葉をPickしていただきました!梅澤奈央さんのプロの筆力ですね。マツコは、鈴木健さんと柳瀬さんから、”AIで分かった気になるのではなく、身体で学習してつかみ取るのだ!”と、メッセージいただいた気がします。そういえば、先日、3月20日には、ISIS co-missionの全体会議があったのです。鈴木健さんはアメリカにすんでいらっしゃるのですよね。オンラインで参加された鈴木健さんが、生成AI時代の編集学校に、様々にアドバイス・コメントを寄せてくださっていました。いずれその時のご発言が記事になることを楽しみに、まずは皆さんには、この記事に目を通しておいていただきたいものです。

 

マツコ’ Plus One! 🐶

生成AIに、色々と挑戦してきている編集学校ですが、その関連でマツコのおすすめ記事3選!!

 

おすすめ1:

2025年の年始に、編集部がお届けした新春放談から。寺田充宏[離]別当師範代が、松岡校長はどんな風にAIを語っていたかを共有してくださっています。

2025新春放談 其の肆 – [離]・[AIDA]・[多読アレゴリア]をまたにかけ、創跡を残す

 

おすすめ2:

生成AIといえば、もう一人のISIS co-missionメンバー宇川直宏さんのインタビューも併せて読んでおきたいところです

【ISIS co-mission INTERVIEW03】宇川直宏さん― 生成AI時代の編集工学2.0とは

 

おすすめ3:

外部の記事ではありますが、Wiredのレポートを。鈴木健さんが台湾のオードリー・タンさん他と共に登壇された記録です。

オードリー・タン、グレン・ワイル、鈴木健らが問う多元的な未来とその実現に向かって──WIRED UNIVERSITY × Miraikan夏期講座レポート!(wired.jp)

 

 

以上、2025年2月の記事から、エディスト編集部の”イチ推し” を厳選してお届けしました。みなさんのオシは、見つかりましたか?

 

次に選ばれるのは、あなたの記事かもしれない!

 

 


 

★無料!編集力チェックはこちら

★毎週のメルマガ登録はこちら

★無料の学校説明会へどうぞ

 


 

 

]]>
83741