昆虫の巨大な複眼は、360度のあらゆる斜め目線を担保する無数の個眼の集積。
それに加えて、頭頂には場の明暗を巧みに感じ取る単眼が備わっている。
学衆の目線に立てば、直視を擬く偽瞳孔がこちらを見つめてくる。

通りを歩けば紫陽花を見かける季節がやってきた。
土の酸性度によって色が変わるこの花は、現在進行形で変化を続ける入伝生の姿にも重なる。
6月になり錬成期間に入った入伝生は師範代になりきって指南を書きまくる日々を送っている。旅行の予定を変更して錬成にどっぷり浸る人、海外出張で飛び回りながら時差を乗り越え指南を書く人、仕事・子育て・花伝所の隙間を行き来する人。それぞれの場で地殻変動を起こしながら編集を続ける彼らを支えているのが、教室名だ。本番では教室名は授けられるものだが、花伝所はまだリハーサルの段階なので、仮の教室名を入伝生が自作して、その世界観を纏いながら指南を書く。今日は特別に29名の仮想教室名を披露しよう。
◆放浪に遊ぶ
小径よりみち教室
てくてく♪マンボ教室
歩いてロケハン教室
遊覧オデッセイ教室
露草シフターズ教室
◆おいしく遊ぶ
前回り受け身りんご教室
砂漠にりんご教室
刻々夏みかん教室
泳げソーメン教室
なると追加で教室
夢見るグルメ猫教室
◆秘密基地で遊ぶ
路地裏けんけんぱ教室
新緑かくれんぼ教室
スイスイ燕子花教室
上燗ミラーボール教室
マイナス二畳教室
イマジナリー河川敷教室
月に仏像教室
くれない星キラキラ教室
◆コンセプトに遊ぶ
電解トロール教室
影観マーヒーヤ教室
官能感応教室
【侘・踊・縁】教室
波羅蜜多るんるん教室
ぽっとキワキワ教室
ジャストFUN教室
虚実デスティーノ教室
ティンク・トング教室
あふぉう傳トイシ教室
わかるようでわからない。一体どんなことが起きるのだろう?と想像が枝葉を伸ばす教室名ばかりだ。学びの場でありながら、思いっきり遊ぶことが示唆されている。もしも編集学校以外の人に「教室名をつけてみて」と頼んだとして、こんなユニークな教室名が並ぶだろうか。ISIS co-missionメンバーでDOMMUNEの主宰でもある宇川直宏さんは編集学校の教室名を見て「なんてナンセンスで面白いんだ」と絶賛していたほどだ。でも、これは、たまたまできた名前ではない。漢字、ひらがな、カタカナ、英語を使った絶妙でナンセンスな言葉の組合せを作り出せるのは、ネーミング編集術があってこそ。型があるから生み出せる自由な言葉の世界であり、言葉の方から編集を自由にするのだ。その型を模倣する入伝生の中には、きっと松岡正剛校長の編集ミームが継承されているのだろう。
アイキャッチ・文 林朝恵
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林朝恵
編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。
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コメント
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2025-07-29
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それに加えて、頭頂には場の明暗を巧みに感じ取る単眼が備わっている。
学衆の目線に立てば、直視を擬く偽瞳孔がこちらを見つめてくる。
2025-07-27
ただ今フランスのマルシェあちらこちらで縦縞の赤肉メロンが山盛りだ。自然界が生んだデザインはじつに美しい。赤肉にくるりと生ハムを巻けば、口福ともいうべき大人の欲望が満たされる。
2025-07-25
九州出身のマンガ家は数多いが、”九州男児”っぽさを前面に押し出している作家といえば、松本零士に小林よしのり、そして長谷川法世ということになるだろう(みんな福岡だが…)。なかでも長谷川法世『博多っ子純情』は、その路線の決定版!
これこれこの感じ。まさにこれが九州男児バイ!(…と、よそ者の目には見える…)