漢字よりも数学が人気!? 【51[破]第1回アリスとテレス賞エントリー終了】

2023/11/12(日)23:05
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 数学が旬だ。千夜千冊では数学の本が連打され、松岡校長と数理科学者・津田一郎さんの共著『初めて語られた 科学と生命と言語の秘密』が東京駅の丸善で山積みになっている(かぞえたら120冊以上あった)。編集学校[破]の読書もきっと世の動きに連動している。

 

 本日11月12日(日)18:00、51[破]第1回アリスとテレス賞「セイゴオ知文術」のエントリーが締め切られた。[破]の最初の山場だ。千夜千冊をもどいて一冊の本について書くお題で競う。


 10教室・学衆65名中、エントリーしたのは56名。類児・創児教室、平蔵ひたすら教室、トークン森々教室、カンテ・ギターラ教室は全員エントリーを果たした。おめでとう!!


 選評委員(木村久美子月匠、[破]の師範、番匠、評匠、学匠)は、それぞれ全エントリー創文を読んで選評会議に臨む。結果発表は12月上旬。全エントリー作品に講評がつく。

 

 さて、課題本の人気ランキングを発表する。

 1位『悪童日記』アゴタ・クリストフ 10点
 2位『地球にちりばめられて』多和田葉子 9点
   『心はすべて数学である』津田一郎 9点
 4位『フラジャイル』松岡正剛 8点
 5位『生命誌とは何か』中村桂子 6点
 6位『あなたの人生の物語』テッド・チャン 5点
 7位『椿の海の記』石牟礼道子 3点
  『東京プリズン』赤坂真理 3点
 9位『虫と歌 市川春子作品集』市川春子 2点
 10位『文字逍遥』白川静 1点

 

 『悪童日記』は、前回の5位から1位に躍り出た。戦争の渦中を生き抜く双子の少年が主人公の物語だ。ガザでは、幼い子どもたちに危険が及んでいるという。最近の世界情勢からこの本が選ばれたのかもしれない。また今期、新たに課題本に加わった『心はすべて数学である』に人気が集まったことにも注目したい。冒頭で紹介した『初めて語られた 科学と生命と言語の秘密』の津田一郎さんの著作である。校長が「津田さんの本は難しいゾ~」と言うのだが、51[破]は果敢である。
 マンガ『虫と歌』が2点とは意外。『生命誌とは何か』を読んだ人に読んでみてもらいたい。きっと虫人間の可能性にピンときてしまうだろう。『文字逍遥』を選んだ学衆が1人だったのはちょっと残念だ。漢字の起源のミステリーにもぜひ触れてほしい。深まる秋、数学も漢字も読んでゆこう。

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。