編集学校とは別の編集への入口だ、と2024年末に立ち上がった多読アレゴリアは冬から春へと2シーズンが過ぎた。春シーズンが終わる5月半ばのタイミングで、来し方を振り返り、行く末を想うため、第二回工冊會(こうさつえ)が豪徳寺本楼で開催された。
吉村堅樹チェアマンの全体メッセージの後、大音美弥子冊匠と金宗代代将のボードメッセージ、梅澤光由典元帖主の図書街構想の案内に続き、新しく立ち上がるクラブが紹介される。冬に12クラブで始まり、春に2クラブが新たに立ち上がったアレゴリアは、今後もクラブを新設し、各クラブの定員数も増やすという。秋に開催するアレゴリア祭りの企画も立ち上がり、クラブはそれぞれに見せ場を作ろうと画策中だ。この場に駆けつけた田中優子学長は、江戸の祭り・連についてレクチャーを授けた。祭りには型があり、それを支えるコミュニティが必要で、編集そのものだという。初夏の本楼は活気に溢れ、仲間を増やす期待に満ちていた。
ところで、耳障りのよい「アレゴリア」の音に耳慣れた最近だが、発足当初、「多読アレゴリア」の「アレゴリア」とは何ぞ?と疑問に思わなかっただろうか。この日は、冒頭の金代将のボードメッセージで「アレゴリア」の柔らかい解釈が明かされた。アレゴリアの各クラブの運営陣へ手渡された方法をここで披露したい。
◆「アレゴリア」はコンティンジェンシーの切り札だ
アレゴリーは、松岡校長にとって伝えておきたい別様の可能性を秘めた大事な言葉だった。千夜千冊されている必読の回がこちら。
千夜千冊1813夜『アレゴリー ある象徴的モードの理論』 アンガス・フレッチャー
親しい諸君のために、ちょっと難解だけれどもゼッタイに見逃せないアレゴリーの意義をどうしても伝えておきたいからだ。アレゴリーはぼくが青年期から継続してきた編集力の主要エンジンなのである。
アレゴリーはコンティンジェンシー(別様の可能性)の切り札なのである。
かくて、ひるがえってもう一度言っておくが、「別の話し方をする」(allos+agoreueim)というアレーゴリアの本来のはたらきは、生命情報体としてのわれわれが形成したり表現したりしたことにエピジェネティックでコンティンジェントな「別様の可能性」がありうるということを刻んでおくための編集技法だったということなのである。なんとなくはわかってもらえただろうか。
千夜千冊ではアンガス・フレッチャーによる20の説明が紹介される。金代将はアレゴリアの各クラブの運営メンバーにそれを使った振り返りを促した。難しいフレッチャーの方法は、「アレゴリア」を二文字ごとに分解して使うことで、表現したい情報の手触りがわかるという。
あれ
「あれだよあれ・・!」という時の、思い浮かぶものが「あれ」だ。「あれ」は何だったのか?それを忘れていないだろうか?クラブにとって大切な「あれ」がないと何を伝えたいのかがわからない。メチャクチャ大事なのが「あれ」だ。
れご
レゴのおもちゃは面白く、クリエイティブだ。小さな部品で巨大な作品だって作れる。部分の力が大事。超部分があるかを、チェックする。
ごり
ごりっとしたもの。ゴリラでもいい。ゴリゴリ感や違和感を与えられるか。デモンストレーション(demonstration)、つまり隠れていたモンスター(monster)を外に(de)引き出ことができているか?つるっとして、いかにも世の中にありそうなものになり、編集学校らしさがなくなってないか。
りあ
りあ(rear)は、後ろという意味がある。表と裏。歴史的現在。どういう背景、歴史を背負っているのか。歴史によってがんじがらめになっている我々はどう自由になれるか。
ぶっとんだ説明ながらも穏やかに語られた「アレゴリア」の方法を、場に集ったクラブメンバーはそれぞれのポケットにしまったはずだ。夏以降に向けて、各クラブは来し方を振り返り、大事な「あれ」に注意のカーソルを定めて「部分」を見直し、よりゴリゴリに生まれ変わりデモンストレーションしていくことになるだろう。別様へと飛び立つ可能性の広がりが楽しみだ。
◆参加者の可能性も引き出される
第二回工冊會では、クラブ数が増えて更に多様へと変貌する場、11月開催予定の「アレゴリア祭」のような新しい企てが用意されつつある場としての新生「多読アレゴリア」が見えてきた。編集稽古体験の有無を問わず、むしろ編集学校の外からの来訪を歓迎するこの場は、好奇心旺盛なあなたの訪れを待っている。新しい自分、自身の別様の可能性を見に、ぜひ来られたし。
募集開始★多読アレゴリア 2025・夏スタート!!!!!!!
▼倶楽部撮家
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▼第一回工冊會
安田晶子
編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。
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