コナラの葉に集う乳白色の惑星たち。
昆虫の働きかけによって植物にできる虫こぶの一種で、見えない奥ではタマバチの幼虫がこっそり育っている。
因みに、私は大阪育ちなのに、子供の頃から黄色い地球大好き人間です。

太陽のもと白球を巡り火花を散らせる高校球児もいれば、太陽を花火に見立てた回答に想いを巡らせる学び手もいる。夏の甲子園で沖縄県代表・沖縄尚学が優勝を果たしたのと同日、8月23日に行われた花伝エディットツアーをレポートする。
この日、全国各地からZoom上に集った参加者たちは、編集の型を使った「自己紹介ワーク」で緊張をほぐしたあと、熱気冷めやらぬ沖縄から講義を届ける平野しのぶ花目付の言葉に耳を傾けた。「世阿弥が仕立て上げた能のプログラムやカリキュラムの作り方にヒントをもらった」という花伝所では、わずか8週間で学衆が師範代へと衣替えをする。その方法と秘訣は、とてもこの時間だけでは伝えきれない。参加者たちは「なるほど」と「わからない」が入り混じった表情を浮かべながら、世阿弥と花伝所のあいだに次々と対角線を引く花目付の語りに引き込まれていく。
花伝所への興味と謎が深まった後は指南の体験だ。
自分のアタマの中に分け入り、覗きこまれているような感覚を覚える指南。「師範代はどうやってこの指南を書いているのか?」編集学校で学ぶ学衆の誰もが一度は抱くであろう問いだ。その謎がここでちらりとあかされる。
参加者に指南の肝を伝授するのは吉井優子師範、森本康裕師範、新垣香子師範の3名。基本コース[守]で出題されている実際のお題と回答を使って、師範たちからの問いに答えていくことで、参加者は「この回答は面白い」という感想ではなく、「どうして面白いのか」「どのように興味をひかれたのか」を言葉にする方法に気づいていく。
太陽を何かに見立てるお題で、気になった回答として「焚火」「梅干し」「ひまわり」などの中から「花火」をあげた参加者Tは、数ある中からこの回答を選んだ理由として「すぐに(太陽に)関係づけられるものではなく、少し考えないとわからないものだったから」と答えた。発見的に回答を見ることで、自他の視点を交差させる感覚を味わうことができるのだ。
<お題ー回答ー指南>という編集学校の学びのサイクルの中で、AIになくて私たちにあるものは、花伝所の演習でも繰り返し出てくる「問感応答返」の「感応答」、つまり「あいだ」の部分だ。指南とは、洞察によって時と場に相応しい仮説を動かすアブダクションなのである。(『インタースコア』(春秋社)より)
ツアーの最後に、次期56[守]登板予定の新師範代5名が、花伝所での体験をそれぞれのエディティング・キャラクターを活かしながら語った。
●杜本昌泰師範代
花伝所はホップ・ステップ・ジャンプの最後の部分。さまざまなものの「あいだ」「・(ナカグロの部分)」を一歩立ち止まって考えられるようになった。苦しいけれど楽しい。大人になってからの最高の遊び場が花伝所ともいえる。
●木島智子師範代
「ちょっと覗いてみよう」という感じだったが、師範代になる「つもり」でやってきたら終わる頃には師範代登板宣言をしていた。不安はあるが今後また新たな自分が増えることへの期待やわくわく感、やってきたことへの自信も今はある。
●三尾夏生師範代
花伝所は[守][破]での学んだ型を、対話するために学ぶ場。バックトゥザフューチャーのようにタイムマシンにのって自分の学衆体験を振り返る体験でもあった。先に進むのが怖いときは周りを頼る。自分を周りから動かす方法もある。
●板垣美玲師範代
前に出ることが苦手だったので、花伝所ではあえて突き進むようにしてきた。花伝所では今まで伏せられていたことが玉手箱のようにあけられた感じ。日常でも「問感応答返」の型で考えることで周囲と考えを共有できるようになった。
●高橋剣師範代
指導を受ける中で、学衆の回答を上から目線で見てしまっていたところが変わった。「これはおかしいのでは?」から「こういう見方があったんだ」という驚きに。モノの見方はいろいろあるということに気付いた。
8週間かけて師範代になるための方法を学んできた新師範代たちの言葉は、自分の中に生まれた内なる「あらわれ」を外なる「あらわし」に変えようとしたからこそ滲み出た、今この時でしか紡ぎだせない言葉だった。その一言ひとことは、参加者たちの心に響いたに違いない。
「あらわれている」と「あらわす」のあいだには、かなりの変換がおこる。内なる「あらわれ」が外なる「あらわし」に変わるからだ。(松岡正剛『擬』春秋社)
今回のエディットツアーの参加者の胸中には、「面白そう」「この先を見てみたい」「ワクワクする」と「まだよくわからない」「ちょっと不安」「ドキドキする」が同時に生まれたのではないだろうか。その両方を抱えたまま、「わかるとかわる」「かわるとわかる」を体験できるのが、花伝所なのだ。
アイキャッチ/山内貴暉
写真/林朝恵、森川絢子
文/森川絢子
第44期[ISIS花伝所]編集コーチ養成コース
【ガイダンス】2025年10月5日(日)
【入伝式】2025年10月25日(土)
【開始日】2025年10月25日(土)
【稽古期間】2025年10月26日(日)〜2025年12月21日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/kaden)から。
未入門の方は、まずは[守]へ
第56期[守]基本コース
【稽古期間】2025年10月27日(月)~2026年2月8日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/syu)から。
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森川絢子
編集的先達:花森安治。3年間毎年200人近くの面接をこなす国内金融機関の人事レディ。母と師範と三足の草鞋を履く。編集稽古では肝っ玉と熱い闘志をもつ反面、大多数の前では意外と緊張して真っ白になる一面あり。花伝所代表メッセージでの完全忘却は伝説。
43[花]「つもり」のままその先へ【花伝敢談儀─ようそこ先輩─】
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2025-08-26
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2025-08-21
橋本治がマンガを描いていたことをご存じだろうか。
もともとイラストレーターだったので、画力が半端でないのは当然なのだが、マンガ力も並大抵ではない。いやそもそも、これはマンガなのか?
とにかく、どうにも形容しがたい面妖な作品。デザイン知を極めたい者ならば一度は読んでおきたい。(橋本治『マンガ哲学辞典』)
2025-08-19
エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。