ISIS 20周年師範代リレー [第47期 中村慧太 急成長する近大のハニカミ王子]

2022/03/02(水)09:00
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nakamura

2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2020年6月に20周年を迎えた。第45期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、20年のクロニクルを紹介する。

 

◇◇◇

その青年は控えめだった。「編集稽古は役に立ってますか?」「いや…それよりも…」 有用性を語る学衆が多いなか、彼は違った。回答・指南によって思考の自由が広がったという感覚を、うつむきがちに訥々と語った。近畿大学ビブリオシアターの一画で、近大番・山根尚子が興奮していた。「中村くんこそ、編集稽古の可能性を知っている」

 

47[守]どんでんコマンド教室師範代・中村慧太は、現役大学生だった。憧れは参丞・橋本英人。近大生にむけて編集術の重要性を説く、あの語り口に惚れた。あんなふうに話したい。その理想を胸に、アルバイトで資金を貯め、花伝所へ進んだ。学生生活の合間に、地道に演習を重ね、晴れて放伝。近大ビブリオシアターDONDENに由来する教室名を託された。中村は、42[守]以来140名以上の近大生が受講するなか、初めての近大生師範代となった。

 

その指南っぷりは堂に入っていた。親子ほど年齢の離れた学衆をも「愛おしい」と言葉で抱きしめ、中村の教室でこっそりと再受講していた加藤めぐみは「中村師範代の指南にわくわくする」とはしゃいでいた。
中村は、教室以外にも持ち場があった。卒門間際、近大の後輩の前にも姿を見せた。稽古が遅れている学衆には「師範代を驚かせるとか、自分でゲームを作るように稽古を進めればいい」。共読が苦手という学衆には「5分だけやってみる」。師範代然とした明快な応答に、学衆時代から彼を知る近大番・川野貴志は舌を巻いた。「彼は並外れたスピードで成長している。イシスは竜宮城なのか」。

 

局長佐々木千佳、所長田中晶子も目を瞠っている。「大人のなかに一歩ずつ入っていき、コマンドを打って、師範代として局面をクリアしていく感じ」。その成長力を買われ、近大×イシスのプロジェクトにも抜擢される近大のプリンス。いまやハニカミ王子と慕われる中村は、後輩からも大人たちからも憧れのまなざしを集めている。

◎師範代メッセージ◎


 >あのときメッセージ>

47期はコロナウイルスの影響が社会全体を波のように襲いました。それぞれの立場でのルールなどが揺らぎながら過ぎていく時の中、揺らぎに対応していくように社会から多様な編集契機を取り出し、型を使って編集力を高め、切磋琢磨していく期でした。

時代は変わっても型は変わらないのか。時代と型の相互作用がどう起こるのか楽しみです。

 

>これからメッセージ>

これからは量子の時代、その言葉がとても頭に残っていてその言葉がこれからの何を指すのか、考えながら過ごしています。

 

どんでんコマンド教室 中村慧太 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

◯校長の肺がん手術を心配しながら、47[守]は走り出した

1770夜 ミシェル・セール『小枝とフォーマット 更新と再生の思想』

…2021年4月30日

 

◎編集稽古は「代」の実験

1778夜ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』

…2021年7月29日

 

⦿ナスカの地上絵から「しいたけ占い」まで

1780夜 アントワーヌ・フェーヴル『エゾテリスム思考』

…2021年8月25日

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  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。