動くたびにバルーン袖が揺れる。NTTデータ研修の講師は、桂大介師範だ。キュートなモードと起業家の肩書は、受講生の既成概念を冒頭から揺さぶる。
千夜千冊第1604夜『勝手に選別される世界』がスクリーンに映る。「今の社会では、検索数や評判数が価値そのものかのように勘違いされていますよね。実のある意味の束や価値をビッグデータからいかに発見するか、それが本日のテーマです」
コップのお題で広がる多様な見方が、受講生の別様の思考回路を開く。新たな価値を引きだす型のワークを経て、講義は情報の構造化へ向かう。ここで桂師範は、非定型なデータから意味を発見する型を紹介する。誰の心にも備わった物語回路だ。
ヒット商品の実例を読み解き、人間の欲望やその解決の鍵を握る物語母型を浮き彫りにする。私たちの思考法や価値観を支える物語の普遍性と共感力をユーザー体験と重ねる。新しい価値をデザインする情報の見方と仮説の両輪が揃い、一日研修は終わった。
部屋を出ていく社員が桂師範に語った。「編集学校で型を学んで、仕事に生かしたいと思います。ミーティングをやっても堂々巡りのことが多いんです」。
丸洋子
編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。
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