『スイミー』にはレオーニの根本哲学が潜んでいる。千夜千冊第179夜『スイミー』は、この物語の一般的な解釈を覆す。これはみんなで力を合わせようというだけの話ではない。個々の意識は群れ全体と共振し、有機的な意味をなす。「部分は全体を感じているはずだ」と。
レオーニは絵本作家として有名だが、その一方で、時空のあわいに棲む架空の植物を描いた緻密な研究書『平行植物』も著した。1980年、これを工作舎が翻訳・出版して話題となった。新宿駅から程近い損保ジャパン美術館で開催中の「みんなのレオ・レオーニ展」では、平行植物の絵画や立体作品『幻想の庭』も展示されている。
松岡正剛校長と「間の本」をつくったとき、レオーニは「セイゴオ、次は二人で大人のための絵本をつくろう」と誘う。だが、残念ながら実現しなかった。二人の幻の絵本は「小石が語る」はずだった。展覧会場では小石どうしがお喋りしているキネティック作品がある。大事な秘密を分かち合っているようなひそひそ声は、何を語っているのだろう。「みんなのレオ・レオーニ展」は9月29日まで。
丸洋子
編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。
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