破の花だ、花火だ!【50破】アリスとテレス賞物語編集術エントリー

2023/07/16(日)23:39
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 正午前に東京が37℃を超えるなど日本各地が猛暑にみまわれるなか、50[破]の学衆・師範代はアリスとテレス賞物語編集術エントリーに向けて、投稿連打していた。

 7月16日(日)18:00、エントリーが締め切られた。12教室・学衆96名中、エントリーしたのは71名。異常な暑さの中で、それぞれの事情や都合もある中で、集中を切らさなかった学衆、師範代を讃えたい。

 

 物語編集術は、人気映画の型を読みとり、それをもとに別様のワールドに翻案するというものだ。物語には母型があるという神話学の成果を踏まえ、英雄伝説の型をあてはめて映画を読み解く。そこで見出した物語の骨組みを、別の時空間と組み合わせると、新しい物語が生まれる。「ロミオとジュリエット」が「ウェストサイドストーリー」になるようなものといえば、わかるだろうか。これも素晴らしい翻案だが、編集学校ではもっと深く物語の原型に迫り、もっと思い切った変容を狙う。

 

 選評会議は1週間後の7月23日。月匠、番匠、評匠、師範、学匠そろって全作品を読み合う。結果発表は、8月上旬。全エントリー作品に講評がつく。

 5つの課題映画のうち、50[破]の人気イチバンは「男はつらいよ」「ミッションインポッシブル」が17点で同点、以下「スター・ウォーズ」16点、「クレヨンしんちゃん」が11点「エイリアン」が10点だった。前回3点だったエイリアンが大躍進。真夏を冷やすような怖い話を期待しよう。

 

 物語編集術の稽古は、自分の書きたいことを自由に書かせてもらえない。あくまでも型によって書くことを求められる。ルールと制約のなかで物語を組み立て、書いてゆくうちに、「自分が書きたかったことはこれかもしれない…」と思うようなメッセージが立ち上がってくる。先日の大澤真幸さんの『編集宣言』では、「言葉にならないことだけが本当に言葉にするに値する」というお話しがあった。簡単に言葉にできてしまうことは、それくらいのことでしかない。型という制約は、自分でも気が付かなかった「真に書きたいこと」を見出すための装置なのだ。「本当に?」と思う向きには、ぜひ、[破]で物語を編集してもらいたい。物語編集術は[破]の花、今宵、71発の花火がイシスの夜を彩った。

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg