『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

先日11月23日は勤労感謝の祝日。アメリカの方は第4木曜日の感謝祭だった。祭りの次の日はどの店舗も黒字になることから伝統的にブラックフライデーと呼ばれている。アメリカのイベントデーに連動し、ビッグ・テックGAFAの一角であるAmazonも大セールを始めた。同時期、豪徳寺のイシス編集学校において、応用コース[破]の教える側となる師範代が相互に学びあう場「伝習座」が開催された。コース後半の試練となる物語編集術とプランニング編集術のお題を方法的に指南するためのビッグセールが行われていたので突撃レポートする。
オープニングでは編集学校の運営を行う学林局の八田英子が登場して伝習座のルールを伝えた。私たちは通常の会話で何気なく「良かった」という単調な回答してしまいがち。編集学校で普通の返事は許されない。これは学ぶ側の学衆との対話でも同様だ。あえて創(キズ)を入れることで、四つ葉のクローバーが育つ可能性が拓かれる。
破講座を総括する学匠・原田淳子が登場し、編集学校は日常の社会に属していないことを強調した。これまでの50期分続いた稽古を通じて、新しい物語やプランニングが次々と生まれている。フラット化する世界に反抗し、日常のリアリティに対して生み出したモノとの関係線を結び付けてほしい想いを語る。破講座の期間は2024年2月上旬まで。すでに中盤に差し掛かっている。学衆と師範代の教室での回答と指南のサイクルは残り2か月強。社会を再編集する力を身につけ、後で後悔することの無いように迷ったら踏み込むカマエを破の師範代に伝承した。
編集学校では映画を題材にして物語を創文する際、英雄伝説五段階
1.【原郷】からの旅立ち
2.【困難】との遭遇
3.【目的】の察知
4.【彼方】での【闘争】
5.彼方からの【帰還】
の因果関係に基づくフロー構造に肖りながら、主人公が成長してゆく。学匠とともに講座を運営する番匠・野嶋真帆が物語編集術のレクチャーを行った。背景情報の乗り換え、道具の持ち替え、モードの着替えなどの方法を使うことでゼロから物語を創作するよりも編集的になる。
映画の中の主人公の特徴を「らしさ」「っぽさ」を使った柔らかいイメージすることで、既存の物語の枠組みの中に隠れているモノが連想的に見える。ストーリーよりも先にIFとTHENを使った仮説を立てながらワールドモデルを決める理由を明らかにした。世界舞台の設定を詰めていくことで、どのようなモノが土台の上に乗るのが相応しいのか次第にわかるのだ。編集学校の多読ジムスペシャルに登場した作家・村田沙耶香の「水槽」という具体的なワールドモデルが示され、新たな編集を与えるための物語創文の方法が師範代に伝授されていった。
レクチャーの後にグループワークを行い、お題で観る映画中のキャラクターにまつわる連想シソーラスを取り出す。すべて教室での指南メッセージを多様にするため段取りとなる。もう1つのプランニング編集のレクチャーでも方法のビッグセールが催された。伝習座での試練を乗り越えた師範代による格別の指南が届くことを51[破]コース稽古中の学衆は期待すればよいのだ。
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
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コメント
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