開講から1週間経った51[守]では、早くも<勧学会>に「苗床」が生まれつつある。
学衆が自ら「発信するロール」を担った教室もある。吉田麻子師範代の若水尽きぬ教室では、開講翌日の9日に、学衆Mが「こんな情報ありました」と発見したエディストの記事を紹介した。
カルメンおいで教室の伊藤誠秀師範代は、同じく9日、<編集食堂 カルメン>を早くもオープンした。セイシュー大将の食堂には学衆Sが駆けつけ、早速、稽古への思いを込めてAqua Timezの「虹」を披露した。どうやらこの食堂は、カラオケスナックにも早変わりするらしい。
シビルきびる教室の佐土原太志師範代は、学衆FとNから指南感想が届いたという与件を受け、勧学会に<みんなのノート>をぶら下げた。記念すべき第一筆は学衆H。「伸び代No.1を目指す」と頼もしい宣言を書き記した。それを受け、学衆Fも駆けつけた。
ホンロー・ウォーク教室の本間裕師範代は、<草枕のひび>という呟きページを設置。学衆Eの回答のマクラをあえて勧学会で引き取って、<草枕のひび>で応接した。早速Eとの対話も生まれている。
光合成センタイ派教室の山本昭子師範代は、11日早朝の関東地方の地震を受け、「地震大丈夫でしょうか?」と学衆Kに呼びかけた。すぐに「無事です」と応答するK。こうしたやりとりも勧学会ならではだ。
南田桂吾師範代のルイジ・ソージ教室では、学衆Fから「自己紹介が楽しみ」との書き込みがあった。稽古がリズムにのりはじめ、いよいよ「自己紹介」だ。これからお互いの解像度が上がっていくだろう。
編集稽古の<教室>があるのに、なぜ<勧学会>という場があるのか。
疑問に思う人もいるかも知れないが、<勧学会>こそイシス編集学校ならではの「場=苗床」だ。アーキタイプを探るなら、<勧学会>はイギリスのコーヒーハウスであり、フランスのサロンだ。
17世紀後半に登場したコーヒーハウスからは、小説や政党、ジャーナルや広告が生まれた。サロンにはヴォルテールやルソーらの知が集結し、書籍や百科全書、化粧品を流行させる発信基地となった。日本に目を転じれば、茶室と茶席がつくりあげたクラブ・サロンが、楽茶碗や織部焼をなどの文化を生んだ(#1502「クラブとサロン」)。茶の湯自体、連歌という座の文化から派生している。松尾芭蕉はひとりで俳句を詠んでいたわけではない。
そう、文化はひとりでは生まれない。
今や簡単な質問や壁打ちは、ChatGPTに答えてもらえる。ググれば情報が手に入る。14日の39期花伝所・入伝式で、吉村堅樹林頭は「現代はカプタがやせ細っている」と訴えた。カプタ(capta)とは「いろんな見方ができる情報」のことだ。一方で、「意味が固定化した情報」がデータ(data)だ。
たとえば貨幣の交換は、データの交換である。ChatGPTも、ググった情報も、貨幣もデータだ。だが文化はどうか? 意味や価値は、カプタの交換があって初めて生まれる。文化はそもそも、カプタの交換を伴っているのだ。
いろんな見方をいろいろな方法で持ち込める場こそ、<勧学会>だ。アヤシくて香ばしいイシス流「クラブ・サロン」では、夜な夜な、見方の交換が行われる。見方は重ね合わされ、そこから新しい意味や価値が生まれる。そう、ここは、「世界観の苗床」であり、「創発を起こす苗床」なのだ。
51[守]19教室の苗床からは、何が育つだろうか。
(文/51[守]師範 角山祥道)
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
◆エディットツアー特別編 情報の海を発想跳び! ~イメージからマネージへイシス秘伝の連想術~
「判官かなはじとや思はれけん、長刀脇にかいはさみ、みかたの舟の二丈ばかりのいたりけるに、ゆらりととび乗り給ひぬ」『平家物語』 壇ノ浦の戦いで義経はひらりひらりと八艘もの船を軽やかに跳び跳び、辛くも敵将の追跡を逃れた、これ […]
ひと潮から新潮流「映像編集」へ――52[守]師範による突破者インタビュー
完成しているはずの作品のなかに編集の余地があるのを見つけたとき。第83回感門之盟のフィナーレを飾った鴻巣友季子氏と松岡正剛校長との対談のなかで、鴻巣氏が翻訳の妙味をこう語った。イシス編集学校の指導陣も心の内で大きく頷いた […]
【Archive】52[守]クロニクル ~方法を手に走れ!~
濃密に凝縮された15週の編集稽古を終えた52[守]。2023年秋に開講した52[守]は、景山和浩番匠のラグビー見立てそのままに、意図して空けたスペースに異質が転がり出すことすらも楽しむゲーム運びとなった。 何が起こるか分 […]
豪徳寺・本楼で「卒門証」を掲げ、満面の笑みを浮かべるのは、52[守]風月盆をどり教室の学衆、柳瀬浩之さん(写真左)。隣のVサインは飯田泰興師範代。感門之盟のよくあるひとこまのようですが、さにあらず。実は柳瀬さんは、47[ […]
今期、3度目の[破]に向かったのは川上有鹿さん。50[守]での師範代経験も踏まえ、どうやって走破したのか。突破直後のインタビューをお届けします 受講に向け、川上さんはMyルールを2つ設けました。1つ目は「回答に必ず[守] […]