ハイパーの肝は組み合わせ:第6回P-1グランプリ結果発表【82感門】

2023/09/17(日)19:54
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ひも・コップ・痛みをテーマにしたハイパーなミュージアムづくりを。3教室の学衆と師範代はリハーサルで厳しいダメ出しを受けながらも直前まで編集し続けた。

 

ひもミュージアム、モーラ三千大千教室土田実季さん

 

コップミュージアム、全員反攻教室市川恵幸さん

 

痛み分かち合いミュージアム、さやさやドローン教室品川唯夏さん

 

[破]の編集稽古の総決算「プランニング編集術」。ここで仕上げられた50破12教室の全プランの中から、特に際立つ作品のプランとプレゼンテーションが披露される[破]の晴れ舞台。それが「P1グランプリ」だ。

 

司会は[破]の稽古を見守り続けた戸田・白川両師範だ。

 

6回めを迎える今期の特徴は「インターナショナル」。校長松岡正剛の本の中国語訳を多数手がける孫犁冰(ソン・リビン)氏、50[破]で50gエンシオス教室の田中志保師範代のご主人で、日本文化にも大きな関心を寄せるトーマ氏、世界読書扇伝[離]火元組の小西別当師範代が審査員に迎えられた。

 

トーマ氏と田中志歩師範代

 

孫犁冰(ソン・リビン)氏

 

グランプリを制したのは、あえてモノではなく抽象的な概念である「痛み」をテーマにした「痛み分かち合いミュージアム」だ。プランナーはさやさやドローン教室、品川唯夏さん。若干19歳の挑戦だ。デジタルだらけの時代であっても、痛みを実感のあるものとして捉えたい。今、痛みを説明するものがない。その痛みを誰かと分かち合いたい。そんな切実から始まったチャレンジだ。

 

ミュージアムは築50年の日本家屋。201号室は痛み、202号室は悼み、203号室は傷みを紹介する部屋となっている。だが、唯夏さんはこれらは言葉に縛られすぎていて、自分の今の痛みを表していない。当たり前のように存在する1本のリップの中にも、疼きがあり痛みがあると語り、校長松岡正剛にリップを手渡してプレゼンテーションを終えた。

 

赤いリップを受け取った校長松岡正剛

 

孫氏は「学びながら楽しんだ」、トーマ氏は「こたえではなく問いを多く示したところがよかった」と評価した。一方で小西別当師範代からは「痛みの奥にある何かも見たい」と期待を込めたリクエストもあった。最後に校長は「痛み・コップ・紐と何かを組み合わせることで生まれるものにまで踏み込んで」とハイパーになるための方法を手渡した。

 

グランプリに輝いたさやさやドローン教室には、校長の『松丸本舗主義』が、共に激走した参加者にはイシスキャラメルが贈られた。

  • 清水幸江

    編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg