「可能性を生み出すカオスをいつも保ちなさい」田中晶子所長メッセージ【86感門】

2025/03/15(土)18:36
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 イシス編集学校には学衆から師範代へと衣替えするための編集コーチ養成所「ISIS花伝所」があります。花伝所での5М(Model、Mode、Metric、Management、Making)を通じた8週間の短期間で、師範からのディレクションを受けながら指南の方法を学び、教室のイメージをマネージメントできるのですね。

 今回、花伝所の修了を寿ぐ放伝式のスタートを切った所長・田中晶子からのメッセージにスポットライトを当ててレポートいたします!

 

 

 

 まず今期(2024年10月~2025年3月)、講座ごとに開催している感門之盟の設えを進めていた用意と卒意の達人である師範たちに対する労いのメッセージがありました。師範たちがエディットスパイラル(EDIT SPIRAL)を進めることで、周囲の師範代たち、学衆たち、舞台を支える黒膜衆たちが巻き込まれてゆき、感門之盟の開催へ動いていったのです。

 

 花伝所長としてディレクションすることのある師範たちの編集力をリバースエンジニアリングするにあたり、田中はカオスの中から可能性が生まれることを強調していました。ちょうど放伝式の前に行われた応用コース「破」の師範代たちに向けた出世魚教室名発表で明かされた新教室「カオスの縁子さん教室」が具体例に出ていましたね。千夜千冊1226夜『宇宙の不思議』に書かれていた通り、「カオスの縁」の近辺で「相転移」や「創発」」が起こるのです。

 

 イシス編集学校の校長・松岡正剛が最後に出席した2024年5月の41期花伝所の入伝式では、出席者に対して「引き算」という奥義が託されていたことを田中は振り返っていました。『知の編集術』に「編集は不足から始まる」と記述されていますが、大事なものを伏せることで編集にさしかかることができるのです。

 

 花伝所で5Mを体得して師範代認定証を得た放伝生たちの多くは、春開講の55期の「守」基本コースへと学衆ではなく師範代として舞い戻ります。ロールを変えることで、これまでの教室や講座を360度のカメラを使って俯瞰的に、微細的に観察できるようになりますね。

 

 

 師範代として毎日観察することになる教室に対して、仕組みを通じて生まれる「感知するモノ」を取りこぼしてはならない、と松岡は話していたようです。放伝して師範代ロールを見送った場合でも、日々のコミュニケーションを通じて、花伝所の5Mの型を使いながら新たしい知を生み出してほしい、と田中は強調していました。

 

 イシス編集学校の一番の良さは教室などのトポスにおいて、カオスを保ちながら豊穣なモノにして編集力を起こせることです。突破(「破」コースを修めたこと)された方は、誰にでも宿っている感知センサーの芽を伸ばしながら、相互編集を進めて新しい知を生み出す師範代の方法を体得できる花伝所に向かってほしいですね。

  • 畑本ヒロノブ

    編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025