冬の寒さ極まる1月、アジア最大のワインコンペ「サクラアワード」で、長崎県五島市の醸造所「五島ワイナリー」のスパークリングワインが受賞していました。4000本を超えるワインの中から、全体のおよそ6%しか選ばれないダブルゴールド賞。3月に入り、五島市役所への報告が行われています。
報告と同じ時期、東京世田谷区の豪徳寺にあるイシス編集学校で、ワインとともに味読を楽しむエディットツアー特別編が開催されました。日本文化を中心とした約2万冊が格納された本棚がある秘密の空間「本楼」において、カジュアルにブライダルっぽさを重ねる編集術を使いながらナビゲーターを務めたのは金井良子。日本酒、焼酎、さらにはワインを愛し、編集工学研究所プロデュースのHyper-Editing Platform[AIDA]で師範代(編集コーチ)を務めています。
これまで本楼に何度も訪れた金井は、「ないもの」という意識を持って、お酒が出ない、色気がないと感じていました。これらを与件(ニーズ)として、今回のワークショップでは、なんと、ツアー初となるワインが登場。アルコールの香りで酩酊する前に速報でツアーをレポートいたします!
居酒屋でお酒と一緒に用意するモノといえば、何といっても「肴」。自分自身を酒の肴にしながらの自己紹介「おつまみなわたし」がスタートしました。まずは例示として、金井が「艶のあるガリ」を挙げます。そのココロは、お寿司のお供として食べる機能が人と人とをつなぐネットワークのハブのように見えることです。
人事のお仕事をされている参加者Kさんは「手に粉がたくさん付くポテトチップス」を挙げました。一袋食べるとお腹がいっぱい。エネルギーを要する一つの物事にトコトン集中し、大きな成果が出るとともに気分がリフレッシュしたら、次の案件に直ぐに進む性格を表現されました。
コンサルタントのSさんは「ヘルシーで栄養満点な黒豆」でした。おつまみにもなり、甘いモノとして見るとデザートにもなります。さらには健康に良い。いいこと尽くしのおつまみであることを強調されました。マーケティング・リサーチャーのIさんは「ハードで硬いフランスパン」と回答されました。日本食におけるご飯と同じく、色々な食事に合わせて提供できますね。そのココロとして、どのようなコミュニティに入っても対処できる適応力の高さをアピールされています。
これらの自己紹介では「見立て」という編集の型が使われています。おつまみを自分として見立てることで、新しい自分を発見できますね。さらに、イメージを瞬時に伝えることができる効果もあります。
モノの見方を自由にし、情報収集力を豊かにするための手助けとして「あるもの、ないもの」を思い浮かべる方法の型を金井が紹介しました。自分の知らないモノやコトを取り入れるキッカケになります。本楼に来るまでに「あったもの」を参加者に問います。
移動中の「建物」や「人物」を意識したことで、取り出す情報が増えます。その他、色属性として「赤いもの」とすることで、駅前のファミリーレストランやポストを見つけたりできます。さらに、レストランで「ないもの」に注意することでサービス精神が足りないなど、仕事の中で不足しているモノから、社員教育が必要であるとの方針を立てることもできるようになります。
本楼に「ないもの」を問われたIさんは、本楼にきて白系のモノ、植物、さらには潤いがないことを挙げます。確かに、たくさんの本棚を俯瞰的に見ると全体的に黒属性が多めですね。もう少し輝くモノの配置が必要そうです。
本棚の紹介を行った後、休憩時間では特別編としてお待ちかねのワインが参加者へと振舞われました。今回の商品は2つです。1つ目はフランス・アルザス地方のヒューゲル。2つ目はイタリア・シチリア島のドンナフガータでした。ナッツ、チーズ、クラッカーなどのおつまみを食べながら、参加者たちは興味のある本棚を見学します。
Sさんはワインを飲みながらチェイサーとして「意識と情報のAIDA」とラベリングされたペットボトルを見つめていました。金井は先週終わったばかりのAIDA season4について、師範代ロールに瞬時に衣替えをしつつ、落合陽一さんをはじめとするゲストの紹介など、概要を説明していました。半年後のseason5も楽しみですね。
休憩が終わり、振舞われたワインを通じてどのような連想するのかについて、金井は情報の背景となる「地」を動かすことを勧めます。マスコミで働くKさんはワインから連想の翼を広げ、「畑、土壌、シェリー酒、作り方、イギリスとフランスの戦争、はちみつ、卵」を挙げました。ワインの「地」である歴史や地域を動かし、さらには組合せするモノまでも挙げています。ほろ酔い気分のままに、たくさんの情報を取り上げたところがお見事です。ワインを味わった時の場面を思い出し、そのときの気持ち、さらには流れていた映像や音楽を連続的にアタマから取り出すこともできそうです。
今回選んだ白ワインと赤ワインのルーツについてのトークが始まります。『情報の歴史21』の1640年と1800年のページを交えて、ワインの本場であるフランスの歴史情報も辿りました。途中、金井が無人島に1冊だけ持っていける書物として、『情報の歴史21』を選ぶことを強調しました。歴史情報の間に関係線を引くことで、10年間は飽きずに読めることを豪語します。加えて、政治と軍事の手腕に優れたマリーアントワネットの姉(マリア・カロリーナ・ダズブルゴ)がルイ16世に嫁いでいたらフランス革命が起こらなかった、というIF世界の物語を創りながら遊べることを語りつつ、書物を抱えていました。
その後、参加者同士で本棚から選んだ書物を交換するワークなども行われました。クロージングの段階で参加者たちは、エディットツアーを通じてモノの見方を自由にし、未知を取り入れる実感を得たことでしょう。今回のワインは外国製でしたが、次にエディットツアー特別編が行われる場合、日本製のモノが選ばれる可能性もありますね。連想されるワードも大きく変わることになるでしょう。
最後に5月13日からスタートする基本コース[守]の紹介が行われました。今回のエディットツアーで使われなかった編集術を含む38個のお題に興味を持った参加者は、53期の開講に興味を持ちつつ、本楼を後にしています。申し込みはコチラです。
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
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