発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

4月29日開催の「近江ARS TOKYO」まであと11日。打合せのたびに進行表が大きく変わってきた。この後、何度塗り替えられるだろうか。何度だっていい。直前まで変更が入るのは、もてなし・ふるまい・しつらいを担う近江ARSメンバーにとってはいつものことだ。
今回のテーマは「別日本があったって、いい。仏は どこに、おはします?」。「近江」を抜き型にして、どのように日本を語りなおせるのか。松岡正剛が究めてきた「日本という方法」に、もうひとつの軸「仏教」が重なる。近江ARSのもう一人の牽引者、三井寺長吏の福家俊彦が深めてきたものだ。楕円が二つの焦点をもって響きあいながら形をつくってきたように、近江ARSの二つの焦点がキワキワで新たな形を摸索している。
二人以外の出演者の全容も固まった。更新されるたびに数が増えてきた、2021年のキックオフか「染め替えて近江大事」から近江ARSの活動に注意を向け続ける田中優子氏は、自身のフィルターを通して松岡正剛が近江に向かう理由を紐解くという。還生の会に毎度参加してきた女子学研究者の米澤泉氏は、サブカルと仏教との間に対角線を引き、近江ARSの一員である石山寺初の女性座主の鷲尾龍華は、現代を地に「祈り」を語るとのことだ。
さらに千夜千冊エディション『性の境界』のカラー口絵が記憶に新しいドラァグ・クイーンのドリアン・ロロブリジーダ氏は、特別なパフォーマンスを届けてくれる。上杉公志が伴奏するらしいというから、期待はふくらむばかりだ。AIDAボードの一員でもある佐藤優氏は、近江に向かう松岡正剛を徹底分析し、どれほど高速に松岡の方法と日本への危機感を語るのか、松岡が敬愛する戦後の前衛書家の森田子龍を師と仰ぐ稻田宗哉氏は、この場にどのような筆を持ち込み、どのように筆を運ぶのか。
松岡は、編集の本質は変化し続けることにあるという。一定の刺激のみを与えられているだけだと、いつの間に変化は減衰する。それは、自らを変化の渦中に置き続けるには、新たな刺激を課し続けることが肝要ということだ。新たなお題を作りだし、「別」なる編集的自己を現出させようともっとも過激な試みを究めようとする松岡、そして、福家。そこに各界のスペシャリストたちが綿雲のように集う。
近江ARS TOKYOは、二焦点の楕円に留まりそうにない。完成ではなく可能性に向かって、逸脱を試み続ける多焦点な動向は、新たなバロックの出現とも言えよう。この日、いったいどのような形があらわれでるのか。出演者、来場者の境を越えて、誰もが焦点の一つとなる一日。いざ、近江からはじまる「別」を迎えにいこう。
■近江ARS Tokyo|別日本があったって、いい。仏は、どこにおわします?
◎日時
令和6年4月29日(月・祝)13:30~17:30(仮)
◎場所
草月ホール|東京都港区赤坂7丁目2-21草月会館地下1階
◎出演者
松岡正剛 編集工学者
福家俊彦 三井寺 長吏
末木文美士 未来哲学研究所所長
本條秀太郎 三味線演奏家・作曲家
田中優子 江戸文化研究者
小堀宗実 遠州茶道宗家十三世家元
稻田宗哉 書家
ドリアン・ロロブリジーダ ドラァグクイーン
加藤巍山 仏師・彫刻家
佐藤弘夫 日本学研究者
挾土秀平 左官
佐藤 優 作家・元外交官
米澤 泉 女子学研究者
鷲尾龍華 石山寺 座主
和泉佳奈子 百間 代表
ー他にも素敵な出演者が登場する予定ですー
◎もてなし・ふるまい・しつらい | 近江ARS
◎申し込み
HYAKKEN MARKETにてお願いします
◎参考
阿曽祐子
編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso
「近江ARS TOKYO「別日本があったって、いい。――仏はどこに、おわします?」からちょうど一年、近江ARSが、書店を舞台にその姿をあらわす。大垣書店の京滋3店舗で近江ARS『別日本で、いい。』ブックフェアが開催され […]
【多読アレゴリア:群島ククムイ】霧の向こうの青・碧・藍・翡翠色の海
名もなき船長からのメッセージではじまった2024年冬の群島ククムイの航海は、3つの島めぐりから成る。 島は言葉を求め、言葉は島を呼び寄せます。 島々への航海は、だから変異する言葉のはざまをめぐる航海でもあります。 「音 […]
生きることは霧とともにあること――今福龍太『霧のコミューン』発刊記念ISIS FESTA SP報告
あの日、本楼を入る前に手渡された和紙の霧のアンソロジー集には、古今東西の先達の言葉が配されていた。多彩なフォントの文字たちのなかで、水色の「霧」が控えめにその存在を今も主張している。 ISIS FESTAスペシャル「 […]
死者・他者・菩薩から新たな存在論へーー近江ARS「還生の会」最終回案内
近江の最高峰の伊吹山が雪化粧をまといはじめる12月、近江ARS「還生の会」は、当初の予定の通り最終の第8回を迎える。日本仏教のクロニクルを辿りなおした第6回までを終え、残りの2回は、いまの日本を捉えなおすための核となる […]
霧中からひらく新たな「わたし」――今福龍太さん・第3回青貓堂セミナー報告
「写真をよく見るためには、写真から顔を上げてしまうか、または目を閉じてしまうほうがよいのだ」(ロラン・バルト『明るい部屋』より)。第3回目となった青貓堂セミナーのテーマは「写真の翳を追って――ロラン・バルト『明るい部屋 […]
コメント
1~3件/3件
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。