コナラの葉に集う乳白色の惑星たち。
昆虫の働きかけによって植物にできる虫こぶの一種で、見えない奥ではタマバチの幼虫がこっそり育っている。
因みに、私は大阪育ちなのに、子供の頃から黄色い地球大好き人間です。

[守][破][離][花伝所]を終え、その間に[風韻講座]や[多読ジム]や[物語講座]を経験しながら、この春夏はついに、師範代になりました。
指南とは何か、指導や教育や添削とどこが違うかは、[花伝所]で身に染みましたが、指南をする中で一層、その違いを感じました。
気がついたのは、学衆がそれぞれ「異なる人間である」ということです。当たり前なのですが、学校教育ではそれぞれ違うという前提がありながら、極端に言うと「できるだけ同じような人に育て上げる」ことを目標にします。社会に出てから困らないように、ということなのです。そこで「問題」は「正解」と組み合わせ、その正解に辿り着くように導きます。読書は、その内容の要約ができるようにする。文章は主語をはっきりさせながら、誰にでもわかりやすく論理的に書けるようにする。そうすると、読書も文章も、そのテーマの範囲をできるだけ出ないように集中する習慣が出来上がります。つまらなくとも、脱線してはならないし、他の本に目移りしてはならないのです。もちろん、問題に回答する前に他の人の回答を見るなど、とんでもありません。それは「カンニング」つまり「ずるをすること」とされます。
しかしイシス編集学校では、回答の前でも後でも、他の学衆の回答をどんどん見てください、と勧めます。それは、正確が無いからです。しかし不思議なことに、絶対に同じ回答になりません。学衆は他の回答を参考にしながらも「違う回答にしよう」と思っているとは思います。でも、そう思わなくても、同じことは書けないものなのです。しかも、どういう回答が面白いか、その感じ方もさまざまでした。
人は個々、別々の身体を持っています。身体は感覚器官の集まりです。そうすると、インプットの段階でまず感じ方が違う。感じ方が違うので、応じ方が異なる。そして文章になると身体のリズムや、記憶にある語彙が異なるので、書き方が違ってきます。その結果、アウトプットも異なるのです。
論文などでは剽窃が問題になることがあります。それは、事実関係や調査・実験結果など、自分が調べてもいないのに、自分で調査したり実験したことにして発表することです。しかしその場合でも、文章は同じにはなりません。従って、引用元を明らかにした上での「引用」は、良いことになっています。イシス編集学校では、引用はもちろん、松岡校長が使っている言葉や、千夜千冊の一節等々、どんどん使うことを勧めています。本はよそ見しながら複数の本を同時に読むことも、勧めています。閉じこもらない。開いていく。繋がっていく。いくらそれをしたとしても、あなたは、あなただからです。そのあなたを、広く豊かにして欲しいからです。
[守]を卒門したら、ぜひ[破]に進んで欲しい。[破]を突破したらぜひ、 [花伝所] に進んで欲しい。なぜなら、見える景色が違うからです。借りものの範囲が広がり、読むことと書くことが面白くなるからです。
皆さん、次の扉を開けて、他の世界に入ってみてください!!
イシス編集学校
学長 田中優子
田中優子の学長通信
No.10 指南を終えて(2025/09/01)
No.09 松岡正剛校長の一周忌に寄せて(2025/08/12)
No.08 稽古とは(2025/08/01)
No.07 問→感→応→答→返・その2(2025/07/01)
No.06 問→感→応→答→返・その1(2025/06/01)
No.05 「編集」をもっと外へ(2025/05/01)
No.04 相互編集の必要性(2025/04/01)
No.03 イシス編集学校の活気(2025/03/01)
No.02 花伝敢談儀と新たな出発(2025/02/01)
No.01 新年のご挨拶(2025/01/01)
アイキャッチデザイン:穂積晴明
写真:後藤由加里
田中優子
イシス編集学校学長
法政大学社会学部教授、学部長、法政大学総長を歴任。『江戸の想像力』(ちくま文庫)、『江戸百夢』(朝日新聞社、ちくま文庫)、松岡正剛との共著『日本問答』『江戸問答』など著書多数。2024年秋『昭和問答』が刊行予定。松岡正剛と35年来の交流があり、自らイシス編集学校の[守][破][離][ISIS花伝所]を修了。 [AIDA]ボードメンバー。2024年からISIS co-missionに就任。
【田中優子の学長通信】No.09 松岡正剛校長の一周忌に寄せて
8月12日の一周忌が、もうやってきました。 ついこの間まで、ブビンガ製長机の一番奥に座っていらした。その定位置に、まだまなざしが動いてしまいます。書斎にも、空気が濃厚に残っています。本楼の入り口にしつらえられた壇でお […]
イシス編集学校「多読アレゴリア」で私が宗風をつとめる「EDO風狂連」は、時々外に出て遊山をしたり、催し物を仕掛けたりと、普段と違うことをおこないます。それを「遊山表象」と呼んでいます。7月20日、夏の遊山表象「江戸の音 […]
【田中優子の学長通信】No.07 問→感→応→答→返・その2
前回は、「問→感→応→答→返」について私が実際に学衆に伝えたことを、書きました。しかしそれだけでは、このことを伝えきれていません。松岡正剛校長は、さらに大事なことを言ったからです。それは次のことです。 イシス編集 […]
【田中優子の学長通信】No.06 問→感→応→答→返・その1
イシス編集学校では、「お題」と「回答」つまり「問」と「答」のあいだに、極めて重要なプロセスがあります。それが「問」→「感」→「応」→「答」→「返」というプロセス・メソッドです。 指南中の学衆からある問い […]
今年2025年3月30日(日)、私は日本女子大で「平和有志の会」主催の講演をおこないました。法政大学総長時代に面識のあった篠原聡子学長からのお声がけでした。ついでに言えば、篠原学長は建築家で、松岡校長と深い縁のあった隈 […]
コメント
1~3件/3件
2025-08-26
コナラの葉に集う乳白色の惑星たち。
昆虫の働きかけによって植物にできる虫こぶの一種で、見えない奥ではタマバチの幼虫がこっそり育っている。
因みに、私は大阪育ちなのに、子供の頃から黄色い地球大好き人間です。
2025-08-21
橋本治がマンガを描いていたことをご存じだろうか。
もともとイラストレーターだったので、画力が半端でないのは当然なのだが、マンガ力も並大抵ではない。いやそもそも、これはマンガなのか?
とにかく、どうにも形容しがたい面妖な作品。デザイン知を極めたい者ならば一度は読んでおきたい。(橋本治『マンガ哲学辞典』)
2025-08-19
エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。