草むらで翅を響かせるマツムシ。東京都日野市にて。
「チン・チロリン」の虫の音は、「当日は私たちのことにも触れてくださいね」との呼びかけにも聴こえるし、「もうすぐ締め切り!」とのアラートにも聞こえてくる。

イシス編集学校についての本の執筆を続けています。学衆、師範代、師範経験者の言葉に助けていただきながらの執筆ですが、その途中で、出版元になる予定の編集者から、熱意ある檄が飛ばされました。次のようなものです。
インターネット、SNSが普及している時代にあって、比較的若い世代の特徴でもありますが、「相互編集」がなぜ必要なのかの理解がうすく、理解がない現状があります。ここを飛ばすことは危険です。
コスパ重視で、答えだけが欲しい、自分が傷つくのはもっとも避けたい。
最短でコツを知りたい。
「編集する能力」をお互いに鍛えていく必然性をおそらく必要としていないのです。
平たく言えば、「なぜ一人ではダメなのか」。
この編集者からの要望で、「相互編集」こそ、今とこれからの世界が必要としていることなのだ、と私も気づきました。そこで、なぜ必要なのかについて、本に組み入れる前に編集者に以下のように伝えました。みなさんと共有し、「もっとこういうことを書いて欲しい」「相互編集の必要性をこういうことで痛感した」という意見があれば、ぜひ寄せて下さい。
まず、松岡校長の次の言葉を引用しました。
・私たちは、そして、それらは、すでに名前がついている。だから、新たな自由を加えてやるべきだ。それらは、それを待っている。
・私たち(それら)は、すでに記述された中にある。それならば私たち自身を複数の属性によって記述していくべきなのだ。
・私たち(それら)は、すでに組織化されている。
・私たち(それら)は、とっくに何かと関係づけられている
・私たち(それら)は、つねに相互関係ネットワークの中にいる。
・私たち(それら)は、もともと制限をうけている。
このように私たちが「すでに投げ出された存在」であるからこそ、〈自己編集化〉を始められる。そこに〈相互編集化〉がおこる。「私が本書を通して言いたかったことは、この点に尽きている」と、『知の編集工学 増補版』にあります。
編集工学は「自分」とか「私」というものがたくさんの他者や出来事とつながっている、と考えています。あらゆる生物が相互編集世界の中にいます。人間も同様です。その前提があるからこそ、個々人は環境や世界や他者と相互編集しなければ、「今の自分」から自由にはなりません。しかしそのためにはどうしたら良いか? 単に知識をためることでは、私たちは自由になりませんよね。知を編集能力によって、自在に使いこなすことが必要なのです。他者の体験、知見、考えとの相互交換こそ、自己編集のトリガーになるのです。
その能力を拓く仕組みが、イシス編集学校の方法です。
私は以上のように考えていますが、ご意見どんどんお寄せ下さい。
イシス編集学校
学長 田中優子
田中優子の学長通信
No.04 相互編集の必要性(2025/04/01)
No.03 イシス編集学校の活気(2025/03/01)
No.02 花伝敢談儀と新たな出発(2025/02/01)
No.01 新年のご挨拶(2025/01/01)
アイキャッチデザイン:穂積晴明
写真:後藤由加里
田中優子
イシス編集学校学長
法政大学社会学部教授、学部長、法政大学総長を歴任。『江戸の想像力』(ちくま文庫)、『江戸百夢』(朝日新聞社、ちくま文庫)、松岡正剛との共著『日本問答』『江戸問答』など著書多数。2024年秋『昭和問答』が刊行予定。松岡正剛と35年来の交流があり、自らイシス編集学校の[守][破][離][ISIS花伝所]を修了。 [AIDA]ボードメンバー。2024年からISIS co-missionに就任。
【田中優子の学長通信】No.07 問→感→応→答→返・その2
前回は、「問→感→応→答→返」について私が実際に学衆に伝えたことを、書きました。しかしそれだけでは、このことを伝えきれていません。松岡正剛校長は、さらに大事なことを言ったからです。それは次のことです。 イシス編集 […]
【田中優子の学長通信】No.06 問→感→応→答→返・その1
イシス編集学校では、「お題」と「回答」つまり「問」と「答」のあいだに、極めて重要なプロセスがあります。それが「問」→「感」→「応」→「答」→「返」というプロセス・メソッドです。 指南中の学衆からある問い […]
今年2025年3月30日(日)、私は日本女子大で「平和有志の会」主催の講演をおこないました。法政大学総長時代に面識のあった篠原聡子学長からのお声がけでした。ついでに言えば、篠原学長は建築家で、松岡校長と深い縁のあった隈 […]
師範代開始が迫っている私に、「2日に1題、8-10名の学衆さんに指南!」という檄(げき=ふれぶみ)が入ってきました。決して脅しでも励ましでもなく、これは「守」の師範代の「現実」です。 イシス編集学校はこの極めて高い集 […]
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コメント
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2025-07-15
草むらで翅を響かせるマツムシ。東京都日野市にて。
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2025-07-13
『野望の王国』原作:雁屋哲、作画:由起賢二
セカイ系が猖獗を極める以前、世界征服とはこういうものだった!
目標は自らが世界最高の権力者となり、理想の王国を築くこと。ただそれだけ。あとはただひたすら死闘に次ぐ死闘!そして足掛け六年、全28巻費やして達成したのは、ようやく一地方都市の制圧だけだった。世界征服までの道のりはあまりにも長い!
2025-07-08
結婚飛行のために巣内から出てきたヤマトシロアリの羽アリたち。
配信の中で触れられているのはハチ目アリ科の一種と思われるが、こちらはゴキブリ目。
昆虫の複数の分類群で、祭りのアーキタイプが平行進化している。