師範代開始が迫っている私に、「2日に1題、8-10名の学衆さんに指南!」という檄(げき=ふれぶみ)が入ってきました。決して脅しでも励ましでもなく、これは「守」の師範代の「現実」です。
イシス編集学校はこの極めて高い集中を要する指南を中心にまわっていますが、それだけではありません。たとえば「感門之盟」は昨年までとは異なる方法で実施することになっています。その準備も活気を帯びています。さらにイシスのことを外に知らせていくための、さまざまな方法が実施されていて、「遊刊エディスト」はその筆頭です。連載、各種賞の発表、新しく始まった「多読アレゴリア」の紹介、そして『情報の歴史21』を遊ぶ方法など、盛りだくさんです。
アドヴァイザリー・ボードである、イシス・コミッションメンバーのディスカッションもすでに予定されています。座談会や対談や本の執筆など、学長である私のお仕事も、山盛りです。
そして何より、今年度の「守」の開始が迫っています。その緊迫感を嫌が上でも高めてくれているのが、師範代予定メンバーたちの自主的トレーニングです。毎日、模擬回答と模擬指南の大量メールが飛び交っています。中学や高校の教育実習は、これほど活気を帯びてはいませんよ。
ちなみに皆さんそれぞれ、お仕事を持っておられます。それがイシス編集学校の特徴で、師範も師範代もコミッション・メンバーも、編工研のAIDAボードも、多読アレゴリアの主催者たちも、収入を得るための仕事ではないのです。ではなぜ、そういう場に活気が生まれるのでしょう?
たとえて言えば、江戸の火消しは「仕事」ではありませんでしたが、歌舞伎に取り入れられるぐらい知られていて、人気があり、自ら望んでなるものでした。その理由は恐らく「活気」です。時間との競争による緊張感、他者のために尽力する心意気、活動によって生まれる連帯感です。寺子屋の教師も、生活のための仕事ではありませんでした。ほとんどの人は生活基盤となる仕事をもっていて、それ以外の時間を使って、子供達に読み書きと算術と、時には礼儀作法まで教えていました。寺子屋は子供達が学ぶ場であると同時にともだちと遊ぶ場でした。寺子屋の絵を見ていると、こちらまで楽しくなります。教師(師範)たちも同様だったと思います。
なぜこのような活動が活気を帯びるのか? これは今後の社会を考えるにあたって、研究に値します。
イシス編集学校
学長 田中優子
田中優子の学長通信
No.03 イシス編集学校の活気(2025/03/01)
No.02 花伝敢談儀と新たな出発(2025/02/01)
No.01 新年のご挨拶(2025/01/01)
アイキャッチデザイン:穂積晴明
写真:後藤由加里
田中優子
イシス編集学校学長
法政大学社会学部教授、学部長、法政大学総長を歴任。『江戸の想像力』(ちくま文庫)、『江戸百夢』(朝日新聞社、ちくま文庫)、松岡正剛との共著『日本問答』『江戸問答』など著書多数。2024年秋『昭和問答』が刊行予定。松岡正剛と35年来の交流があり、自らイシス編集学校の[守][破][離]コースを修了。 [AIDA]ボードメンバー。2024年からISIS co-missionに就任。
1月25日、今年も花伝敢談儀の日がやってきました。 「今年も」なんて書きましたが、実は私は初めて出席したのです。今まで諸コースを巡り、最後に残っていた「花伝所」をようやく受講し、終えました。 敢談とは […]
あけましておめでとうございます。 イシス編集学校は今年、25周年を迎えました。その記念の年に、私たちは松岡正剛校長のおられないお正月を迎えました。たとえようのない寂しさです。 でも、校長が25年間にわ […]
松岡正剛様。あなたはよく「代理」の重要性を語りました。「代」というのは不思議な、編集上大事な考え方だと、私は理解していました。 私は今そのことを思い浮かべながら、しかし、あなたの代わりになる人は、この世界のどこを探し […]