もし、黄色を意味するさまざまな名前を知らなければ。道端のタンポポも果物屋のレモンもむくどりの小さなくちばしも、その色味の違いは消え失せ、すべてが真っ黄のペンキで塗りつぶされる。画一的な言葉では、乱暴で貧弱なラベリングしかできない。
イシス編集学校はそれに抵抗する。編集は可能性を増やす方向へむかい、編集は新しい価値や意味をつくるのだ。そのひとつのあらわれが、過剰なまでのネーミングである。
初音ミク太郎にエディット・ピラフ。バニー蔵之助や丹田シャネル
Googleさえもまだ知らぬ名前をもつのは、教室だけではな
教室の仲間とのオフ会には「汁講」、回答の評価をおこなう目利きは「同朋衆」、師範代や師範たちの研鑽の場は「伝習座
開講1週目を迎えた46[破]でも、10のユニー
ほろよい麒麟教室 ●尾島可奈子師範代
調音ウラカタ教室 ●石輪洋平師範代
あたりめ乱射教室 ●森本康裕師範代
アジール位相教室 ●畑勝之師範代
互次元カフェ教室 ●品川未貴師範代
望眺世界塔教室 ●高橋陽一師範代
多項セラフィータ教室●戸田由香師範代
ジャイアン対角線教室●角山祥道師範代
ゆかりカウンター教室●後藤陽子師範代
王冠切れ字教室 ●大塚宏師範代
[破]の教室名は、「四次元カフェ」が「互次元カフェ」へと進化したように[守]時代の名に化粧がほどこされ、いっそう賦活されたものである。この暗号じみた数文字には、師範代の来歴から憧れまでが折りたたまれている。
46[破]を構成する言葉の圧縮ファイルは、これだけではない。教室のほかにも「チーム」がある。2人の師範代に1人の師範が伴走し、1期を駆け抜ける。このチームへの命名には、師範たちが腕をふるう。
名付けの方法はさまざまだ。
■ちゃっきり文
師範代や師範の集うチームラウンジで、まっさきに小気味よい音を響かせたのは「46破イチの狼藉モン
■嫋joe
音は音でも、同音異義語に着目したのは、初登板にして歌人の天野陽子師範。天野は、校長松岡がマスタープログラムと呼ぶ「故実十七段」を引用してきた。チーム師範代が「気になる」と言及した方法だ。引かれたのは『連塾ⅱ 方法日本 侘び・数寄・余白』(春秋社)のこの一節。
「緊張から均衡へ、さらに異質なもののあいだの交流も生じる。これを私は「嫋々」というふうに見立てました」
そして付けた名前は、「嫋joe(じょうじょう)」。たおやかな
■たかく族
師範として32期登板、イシス史上第2位の記録をもつ北原ひでお
■ストロー区
夏にむかう今期、いちだんと涼しげなチーム名を付けたのは、初登板のバニー新井陽大師範だ。46[破]でダントツに早く名付けら
■彡rium
いっぽう、「読めない名前」を投げ込んだのが歴戦の福田容子師範
チーム名は「彡rium」。「サンリウム」と読ませるこのチーム
名付けとは「呪」。ものやひとに、あらたな命を授けるの魂振りの編集である。10名の師範代は、校長松岡の「代」としての名を改め、先達からチーム名という護符を懐にしまう。67名の学衆を乗せた舟は大海へと漕ぎだした。
写真:原田淳子
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梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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