編集はとまらない。「エディットツアー@おやこ」のその後

2021/04/24(土)09:53
img POSTedit

 あきらくん、けいすけくん、まみちゃん、ごうくん、ももこちゃん、しおりちゃん、わこちゃん、たまきちゃん、いとかちゃん、みちちゃん。
 4月3日のエディットツアー@おやこに参加した子ども達は、赤ちゃんから小学4年生まで10人。大人10人もまざってワイワイガヤガヤ、春の編集ワークを遊んだ。

 一つ目のワークは景山卓也師範代がナビする「モノしりとり」。
 景山ナビが「オレンジ色の丸いもの」を見せる。これはなんだろう? 子ども達が頭の中のイメージの辞書をくって、答えていくところから始まる。
 手に持っていたのはオレンジ色のピンポン玉だった。
「ではこれに似たもの、つながりそうなものを家の中から探してこよう!」
 30秒もしないうちに10のモノが集まる。バランスボール、果物、ラケット、ペットボトルのキャップ。形、色、切りくちはさまざま、ナビが一口コメントで応じる。みんな同じところと違うところ、両方を併せ持っている。「似たもの」は「ズレたもの」でもあるのだ。ズレは愉快の素である。
 集まったモノの中から一つが選ばれ、それがまたお題となる。ペットボトルのキャップからの「ペットの鳥」、カバーから「かばん」など、コトバでつなげる子どもたちも登場した。「箱入りの本」と「枕」など、普段は一緒にしないものがどんどん混ざり合ってくる。

 2つ目のワークは、松井路代師範代の「春っぽいもの」。 
 家の中で春らしいものを探したあと、「生える」「咲く」「伸びる」「うまれる」など、春の述語を写真と一緒に振り返った。
 ナビがミュートを外してオッケーですと声をかけると、「このお花、幼稚園のところで見たよ」「テントウムシが産卵してる! テレビで見たことがある」。言葉がどんどん飛び出してきた。
 もうみんな「春」は知っている。そのうえで、「春フィルター」を意識することで、次の日から家の中や、公園や野原の見え方がちょっと変わったらいいなというのがワークの狙いだった。何より、ナビ自身がツアーの数日前に、公園に「春っぽいものさがし」をしにいって、普段は見過ごしているような小さいものを見つけたり、今しか見えない姿を見出したりしたからである。

 

 ツアー後、参加のみなさんから返ってきたQシート(アンケート)にこんなメッセージを見つけた。

どこまで集中できるか不安でしたが、前のめりにワークする姿が見れて、親の気持ちとしても嬉しいというか、ほっこりしました。

つい近視眼的になる親ではできない、ナビゲーターからの柔軟なフィードバックは職人技。子育ての極意を見るようでもありました。せっかくの集いなので、オンラインだと難しいでしょうが、子供同士の掛け合いがあるとさらに面白くなりそうだと感じます。

さっそくお風呂で春っぽいものを探してひと盛り上がりしました^^ ありがとうございました。


 次の日どころか、その日のお風呂の中でもう一度遊んでくれてる。早い!
 子どもの編集の一つに「とまらない」がある。
 ワークの時に咲いていたタンポポはもうみんな綿毛になっている。
 次に子ども達に、エディットツアーやイシス子どもフィールドのシーズン・ミーティングで会うときは、「見方」だけでなく、髪の長さや背丈、面構えだってほんの少し変わっているのだろう。




 

 

 

「春」のあれこれ。小さな公園に探しに出ると、テントウムシが卵を産んでいるところに遭遇した。

 

 

◆イシス子どもフィールド
https://edist.isis.ne.jp/post/kodomofield_open/

 

 

 

  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

  • 編集かあさんvol.54「おおきなかぶ」の舞台裏

    「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。 […]

  • 【Archive】編集かあさんコレクション「月日星々」2025/4/25更新

    「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る、編集かあさんシリーズ。 庭で、街で、部屋で、本棚の前で、 子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。 2025年4月25日更新 【Arch […]

  • 編集かあさんvol.53 社会の縁側で飛び跳ねる【82感門】DAY2

      「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]

  • 編集かあさんvol.52 喧嘩するならアナキズム【82感門】DAY1

      「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]

  • 【追悼・松岡正剛】「たくさんの生きものと遊んでください。」

    校長に本を贈る   松岡正剛校長に本を贈ったことがある。言い出したのは当時小学校4年生だった長男である。  学校に行けないためにありあまる時間を、遊ぶこと、中でも植物を育てることと、ゲッチョ先生こと盛口満さんの本を読む […]

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg