編集稽古は学衆だけのものではない。
師範代はもちろん教室を見守る師範もだ。校長の松岡正剛でさえ編集稽古をしている。
イシス編集学校では、ネーミングを重視する。
その最たるものが「教室名」だ。この世に初めて誕生した教室は、命名されたことで新たな意味と別様の可能性へと変容し、「宿命の教室」になっていく。50[守]に集まる20のふしぎな教室名だが、教室を複数束ねて「チーム」を結成しているのもイシス編集学校のスタイルだ。
もちろん、チームにも名前はある。教室名は校長と師範代との共同編集なのに対して、チーム名は師範が名付け親になる。
師範は師範代にとって親であり、同志なのだ。
教室名や師範代のらしさをイメージして、練りに練り上げた師範によるネーミング編集を総覧いただきたい。
たまくしげ
師範 相部礼子
釣果そうか!教室 稲森久純師範代
悠阿弥アメリ教室 仁禮洋子師範代
八尾市出身者の師範代二人がチームになった偶然を相部は逃さない。言葉をコンパイルする。八尾では有名な「玉串川の桜並木」。由来する「玉櫛笥」まで遡り、「たくましげ」に読み違えることも別様の可能性の契機に。虚が実になった両師範代の逞しき姿。
つちのね
師範 阿曽祐子
ダルマ・バムズ教室 小野泰秀師範代
厳選タングル教室 川村眞由美師範代
阿曽は、両師範代の並々ならぬ覚悟に大地のうねりと根源を想起した。「土と遊び、土に学び、土に還る」。
阿曽自身「どろんこコクーン」の教室名をもつ。三人は宿命の同志となり、学衆との対話も活発。読みかえの余地をひらがなが語る。
Takt・世・Worker(タクト・ヨ・ワーカー)
師範:阿部幸織
ミネルバ・ロードス教室 黒田領太師範代
代々ビオトープ教室 森川絢子師範代
「世」の漢字は3つの十で構成されていることに注目。3人チームに宛がわれたナンバー3がリズムとなって、教室に潜む意味を混ぜた組み合わせの妙味。阿部の軽快なタクトがチームでの対話を弾ませている。
先日行われた「伝習座」でのチームミーティングの様子。師範の問いに師範代が応える。本楼での言葉に熱がこもる。
さかい洋果子転(さかいようがしてん)
師範 新井和奈
モモめぐむ教室 中村裕美志師範代
傑作ペパーランド教室 西村洋己師範代
みな関西人という偶然を起点に大阪・「堺」の漢字を分節化して界・際・境目だと意味づけした。師範代の名前すら編集対象となる。胡椒と桃の果実をイメージしたとおり、実は熟れて師範代然とした姿勢が頼もしくなってきた後半だ。
拍結Q(はっけっきゅう)
師範 尾島可奈子
アスレ・ショーコ教室 紀平尚子師範代
歓察めげない教室 恩田偉志師範代
音読すると白血球。マクロファージの闘う特性に注目した。守りと攻めの相互関係、教室の内外に起こることと重ねている。
オーケストラとバスケという師範代の属性もヒントとなったチーム名。尾島のきりりとしたふるまいが、チームを一段引き上げる。
希穹儀(ききゅうぎ)
師範 加藤めぐみ
参画さしかかる教室 三浦一郎師範代
とれもろドローン教室 高本沙耶師範代
師範代の幼な心に注目。教室名の動的なイメージを重ねて、穹(そら)という漢字がもつ多様な意味がたくさんの発見に繋がっていくことに願いを込めた。その先を見通していく師範の目利きが師範代の可能性を大きくしている。
晴コウ・雨どく(せいこう・うどく)
師範 佐藤健太郎
みちのく吉里吉里教室 林愛師範代
外骨ジャーナル教室 山下雅弘師範代
コツコツとひたむきに応接する両師範代の得手を掬い、四字熟語にらしさを投影した。分節して文字を置き換えることで遊びの余白を設けたのは、佐藤からの愛のメッセージだろう。チームではもっと相互編集を仕掛けていきたい師範の目が光っている。
明星クラムボン(みょうじょうくらむぼん)
師範 森本康裕
異次元イーディ教室 新坂彩子師範代
カッパらくらく教室 川上有鹿師範代
「かぷかぷ笑う」クラムボンのように多様な見方を師範代に期待する森本。チームへの声がけの速さがそれを物語る。ここぞという時、金星のように輝いてほしい。一部では「おとうさん」と呼ばれている森本の親心が叶いつつある。
オンラインでこことむこうの師範代を繋ぐ。緊張を解きほぐすせば、時折笑みもこぼれる。
遊わく走(ゆうわくそう)
師範 堀田幸義
得原 藍師範代 柑橘カイヨワ教室
遠藤健史師範代 止観エンドース教室
「身体」が共通項の3人。カラダの半分以上を占める要素「水分」に着眼した堀田は、瑞々しくかつワクワクと湧く水のごとく動的な「走」を合成。今や遊び心を忘れない両教室だ。『見立て日本』の「水分(みくまり)」も潜んでいる。
ムぅ~ゲン
師範 渡辺恒久
50gエンシオス教室 田中志歩師範代
ここいら普門教室 大塚剛史師範代
三人それぞれが惹かれ合う対象をどう繋ぐか、渡辺は悩む。関係の糸をあちこちに伸ばし結び目を作っては諦めるの繰り返し。閃いた先にアーキタイプが出現した。夢の源、夢幻、無限。文字が躍る。挨拶は「ムぅ~ゲン!」。師範が楽しむ空気は伝播する。
師範たちが編集道のその先を見据え、願いを込めたチーム名はいかがだっただろうか。完成に至るまでの思考のプロセス、そして変化する今を少しばかりご紹介した。
編集稽古後半にさしかかる今、学衆と師範代との関係が深くなっている。師範と師範代との関係もチームという場によって、見えない糸が強くなっていく。
編集稽古は止まらない。
師範の編集だって止まらない。
只今、師範たちは「同朋衆」に着がえ、「第一回番選ボードレール」にエントリーした124作品を編集中。
番ボー講評は12月下旬予定だ。
50[守]学衆のみなさん、ネーミング編集にうずうずしたら、やがて来る『多色ネーミング術』稽古に全力投球されたし。
「見立て」で新たな概念工事を【50守伝習座 学匠メッセージ】
https://edist.isis.ne.jp/just/denshuza_50shu_gakusyo_message/
次は[守]の出番 第1回番ボースタート―50[守]
https://edist.isis.ne.jp/just/50syu_013banbo01/
教室という世界編集の「途上」【50守伝習座・フライヤー発表】
https://edist.isis.ne.jp/post/50syu_denshuza1/
50[守]教室名一覧】らくらく?ゆるゆる?さしかかる? 松岡正剛のネーミング編集術【79感門】
https://edist.isis.ne.jp/list/kanmon79_50shu_names/
次の港へ向かう「そうてん座」
若林牧子
編集的先達:白洲正子。長身たまご顔にキュートな声、すきをつくる編集力と天然発言で、アシスタントにしたいNo.1師範。四国と東京をつないで活躍する食と農のコーディネーターでもある。通称は若まっこ。
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