2021年10月16日、Hyper-Editing Platform[AIDA]Season2が始まった。2020年のSeason1「生命と文明のAIDA」に続き、Season2では「メディアと市場のAIDA」をテーマに、半年間で全6回の講義を行って編集的世界像を問いつづける。その間、座衆たちはネット上の「連」でAIDA師範代の指南を受けながら、メディアと市場のAIDAについて探求し、最後に「間論」という形でこれからの社会像を仮設する。
第一講は松岡正剛座長を囲み、Season2の7名のボードメンバーが豪徳寺に勢揃いした。Season1から続投するのは4名だ。
田中優子さん●2014年から2021年まで法政大学の総長を務め、現在はイシス編集学校・物語講座14綴を受講中でもある江戸学の第一人者。最新著は『遊廓と日本人』(講談社現代新書)。
大澤真幸さん●『〈世界史〉の哲学』(講談社)シリーズをはじめ、鋭い思考で社会の新しい見方を提供しつづけている。イシス編集学校では、多読ジムSPコース「大澤真幸を読む」でも尽力いただいている。
山本貴光さん●ゲーム作家として活躍するかたわら、『記憶のデザイン』(筑摩選書)、『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)など、情報編集や知の見方に関わる著書を何冊も出している。
佐倉統さん●「サイエンスZERO」コメンテーターを務める進化学と科学史の専門家で、『科学とはなにか』(ブルーバックス)では、社会における科学技術の意味をあらためて問い直している。
さらにSeason2では、強力な3名に新たなボードメンバーに加わっていただいた。
村井純さん●インターネット黎明期から技術基盤構築などに関わり、この国のデジタルのかたちを考えつづける「日本のインターネットの父」。最新著は『DX時代に考える シン・インターネット』(共著・インターナショナル新書)。
武邑光裕さん●やはりインターネット黎明期からデジタル社会を見つめるメディア美学者。近著『プライバシー・パラドックス』(黒鳥社)ではデータ監視社会とプライバシー問題に警鐘を鳴らす。ベルリンとヨーロッパの事情にも詳しい。
佐藤優さん●神学、インテリジェンス、政治権力、創価学会、民主主義、左翼、ファシズム、沖縄などを縦横無尽に論じ、『国家の罠』『自壊する帝国』(ともに新潮文庫)を皮切りに数えきれないほどの著書・共著書を出しつづけている。
AIDA Season2 第一講では、松岡座長と「七巨頭」が、メディアと市場のAIDAについておおいに問題提起した。この日の冒頭、編集工学研究所の安藤が、スラヴォイ・ジジェク『事件!』(河出ブックス)を紹介し、「事件!」とは「世界を知覚し、世界に関わるときの枠組みそのものが変わること」だと説明したが、そもそもこの八人が一堂に会して話しあったこと自体が「事件!」であり、きっとこれから座衆の知覚の枠組み、世界に関わるときの枠組みを変えていくだろう。
AIDAセッションで提起された「問題」の一部を紹介する。
★★★
日本のゲーム業界は想像力を軽視してきた結果、中国に抜かれつつある(山本)
★★★
精神的な問題を抱える人々がWeb空間でイキイキと活躍できるのだから、バーチャルが現実を変えてもよいのでは(田中)
★★★
メタバース社会が来れば、終末論的なユダヤ・キリスト教の人たちが権力をたやすく握ることになるだろう。それでよいのか(佐藤)
★★★
みんなAIを意思決定に使いたがるが、危険ではないか(佐倉)
★★★
意思決定は最大でも国家レベルだが、インターネットは世界中がつながっている。そこに意思決定上の問題がある。(大澤)
★★★
インターネットは世界史上はじめて誕生した「グローバルスペース」であり、我々は誰もまだグローバルな意思決定の訓練を十分に積んでいない(村井)
★★★
メディアこそがメッセージだ。メディアの強大な影響力を市場のなかで考える必要がある(武邑)
★★★
既存の器で語りえないものを扱う「イメージメント」の方法がまだ存在しないことが問題だ(松岡)
国家権力も絡んで、メディアと市場のAIDAにある多様な問題が出揃った。第二講以降はゲストを迎えながら、松岡座長、ボードメンバー、座衆、AIDA師範代が交りあってさらにAIDAを探求していく。
米川青馬
編集的先達:フランツ・カフカ。ふだんはライター。号は云亭(うんてい)。趣味は観劇。最近は劇場だけでなく 区民農園にも通う。好物は納豆とスイーツ。道産子なので雪の日に傘はささない。
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