初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。

映画『国宝』が連日大ヒット記録を更新している。その原作は吉田修一氏による同名の長編小説で、3年間歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋に入った経験を活かして書き上げた。どうしたら歌舞伎っぽくなるか、この作品の「らしさ」を出せるかということをずっと考えていたという。歌舞伎の「つもり」を描いたことが、読者や観客の魂に触れ、「ほんと」の風姿となって小説と映画の大ヒットにつながっているのだろう。
週刊キンダイ、今回は特別企画。
近畿大学側からの声を届けたい。ということで、楽屋に入っての潜入取材です。
もう、8年目になります。
近畿大学運営本部アカデミックシアター学生センターの杉浦 綾沙子氏(以降、杉浦さん)は「そんなに経ったのですね…」と、驚いたように振り返る。コロナ禍の数年を挟み、試行錯誤を重ねてきた。
大学と企業の垣根を超えてモノづくりに挑戦するプロジェクトで、杉浦さんは企画や応募から選考、広報への支援、運営相談などを行っている。
その中でも、オンライン編集力講座は人気があるんです。
近畿大学は東大阪、奈良、大阪狭山、和歌山、広島、福岡と複数のキャンパスがある。そのため、いつでも、どこでも受講できる、イシス編集学校の講座は近大生にぴったりなのだ。オンライン編集力講座は守講座のこと。55[守]も25名の応募があり、21名が受講している。
編集という概念を知ってもらって、施設を理解して活用してもらいたい。ただ図書館があるだけって思ってもらいたくないんです。
ビブリオシアターをただ漫然と使うのと、近大INDEXを知って活用するのとでは、深さと面白さがまるで違うのだそう。それを知る入口となるのがオンライン編集力講座なのだ。
本はしっかり読みたいので、働いているとなかなか時間がとれないんです。でも、目次で読んでいいんだよ。と教えてもらったことが目から鱗でした。
杉浦さんご自身は、さまざまなプロジェクトを編集工学研究所と企画しており、編集の考え方を理解することで意識も変ってきたという。大学職員だからこそ、理解したことを仕事の成果につなげたいと考えている。
在学中に、もっと編集に夢中になってほしい。
大人になってからでも時間はある。しかし、学生時代に使える時間とは質と量が違うのだ。そのための施策を練り、実行していくことが杉浦さんのモチベーションにもなっている。
最後に、現在55[守]講座を受講している人にメッセージをお願いした。
1日の内、”5分のスキマ時間もない”なんてことはありません。息抜きでもいいから、毎日お稽古をしてほしい。編集力講座を卒門することができたら、新しいものが必ずみえてくるはずだから。
メールをひらいて、一文字だけでもいい。打ち込みましょう!
大学の生活が見えないと「学生は何かと忙しくて稽古できないかもしれない。」と師範代は及び腰になってしまうことが多い。しかし学生センターの杉浦さんが言うのだから、問題なし。55[守]の卒門日は8月24日(日)。それまでに全番回答するよう守全体で盛り上げ、杉浦さんが担当してきた8年間で近大生の卒門率が一番高い期になることを目指したい。
初対面でも気軽に話してくれた杉浦さん
編集力講座にはオンラインだけではなくリアル編集力講座もある。各地の産地や遺産を訪れ、フィールドワークを通じて、その“編集“方法を学ぶ。この経験が日本に、世界に、日々累積していく様々な課題を解決するための”探し方”を体得することにつながるのだ。
今はまだ社会にでた「つもり」で学んでいるだけだと思うかもしれないが、”探し方”を知って、社会に出れば、やがて「ほんと」の課題解決に繋がっていくだろう。
歌舞伎役者の血縁関係や師弟関係を一門という。そうだ、55[守]も卒門を目指すのだから教室の仲間は血縁や師弟関係のように、濃い時間を共にすごしながら南を目指す同門であり、一門なのだ。近大生はさらに、大学の門もある。
杉浦さんも近畿大学のご出身。
だからこそ、目の前の学生たちの背中を、黒子としてぐいぐいと押してくれている。その姿が何より心強い。
アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/一倉 広美(55[守]師範)
週刊キンダイ 連載中!
週刊キンダイvol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
週刊キンダイvol.002 ~4日間のリアル~
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
花伝所の指導陣が教えてくれた。「自信をもって守へ送り出せる師範代です」と。鍛え抜かれた11名の花伝生と7名の再登板、合計18教室が誕生。自由編集状態へ焦がれる師範代たちと171名の学衆の想いが相互に混じり合い、お題・ […]
これまで松岡正剛校長から服装については何も言われたことがない、と少し照れた顔の着物姿の林頭は、イシス編集学校のために日も夜もついでラウンジを駆け回る3人を本棚劇場に招いた。林頭の手には手書きの色紙が掲げられている。 &n […]
週刊キンダイvol.018 〜編集という大海に、糸を垂らして~
海に舟を出すこと。それは「週刊キンダイ」を始めたときの心持ちと重なる。釣れるかどうかはわからない。だが、竿を握り、ただ糸を落とす。その一投がすべてを変える。 全ては、この一言から始まった。 […]
55[守]で初めて師範を務めた内村放と青井隼人。2人の編集道に[守]学匠の鈴木康代と番匠・阿曽祐子が迫る連載「師範 The談」の最終回はイシスの今後へと話題は広がった。[離]への挑戦や学びを止めない姿勢。さらに話題は松 […]
目が印象的だった。半年前の第86回感門之盟、[破]の出世魚教室名発表で司会を務めたときのことだ。司会にコールされた師範代は緊張の面持ちで、目も合わせぬまま壇上にあがる。真ん中に立ち、すっと顔を上げて、画面を見つめる。ま […]
コメント
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2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。
2025-09-23
金緑に輝くアサヒナカワトンボの交接。
ホモ・サピエンスは、血液循環のポンプを遠まわしに愛の象徴に仕立て上げたけれど、トンボたちは軽やかに、そのまんまの絶頂シアワセアイコンを、私たちの心に越境させてくる。
2025-09-18
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『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。