週刊キンダイvol.013 ~門を掠めて~

2025/08/06(水)12:15 img
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キンダイ

 映画『国宝』が連日大ヒット記録を更新している。その原作は吉田修一氏による同名の長編小説で、3年間歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋に入った経験を活かして書き上げた。どうしたら歌舞伎っぽくなるか、この作品の「らしさ」を出せるかということをずっと考えていたという。歌舞伎の「つもり」を描いたことが、読者や観客の魂に触れ、「ほんと」の風姿となって小説と映画の大ヒットにつながっているのだろう。


 

週刊キンダイ、今回は特別企画。

近畿大学側からの声を届けたい。ということで、楽屋に入っての潜入取材です。

 

もう、8年目になります。

 

 近畿大学運営本部アカデミックシアター学生センターの杉浦 綾沙子氏(以降、杉浦さん)は「そんなに経ったのですね…」と、驚いたように振り返る。コロナ禍の数年を挟み、試行錯誤を重ねてきた。

 大学と企業の垣根を超えてモノづくりに挑戦するプロジェクトで、杉浦さんは企画や応募から選考、広報への支援、運営相談などを行っている。

 

その中でも、オンライン編集力講座は人気があるんです。

 近畿大学は東大阪、奈良、大阪狭山、和歌山、広島、福岡と複数のキャンパスがある。そのため、いつでも、どこでも受講できる、イシス編集学校の講座は近大生にぴったりなのだ。オンライン編集力講座は守講座のこと。55[守]も25名の応募があり、21名が受講している。

 

 

  • 近畿大学で掲示されているポスター

 

 

編集という概念を知ってもらって、施設を理解して活用してもらいたい。ただ図書館があるだけって思ってもらいたくないんです。

 

 ビブリオシアターをただ漫然と使うのと、近大INDEXを知って活用するのとでは、深さと面白さがまるで違うのだそう。それを知る入口となるのがオンライン編集力講座なのだ。

 

本はしっかり読みたいので、働いているとなかなか時間がとれないんです。でも、目次で読んでいいんだよ。と教えてもらったことが目から鱗でした。

 

 杉浦さんご自身は、さまざまなプロジェクトを編集工学研究所と企画しており、編集の考え方を理解することで意識も変ってきたという。大学職員だからこそ、理解したことを仕事の成果につなげたいと考えている。

 

 

在学中に、もっと編集に夢中になってほしい。

 

 大人になってからでも時間はある。しかし、学生時代に使える時間とは質と量が違うのだ。そのための施策を練り、実行していくことが杉浦さんのモチベーションにもなっている。

 

 最後に、現在55[守]講座を受講している人にメッセージをお願いした。

 

 

1日の内、”5分のスキマ時間もない”なんてことはありません。息抜きでもいいから、毎日お稽古をしてほしい。編集力講座を卒門することができたら、新しいものが必ずみえてくるはずだから。

 

メールをひらいて、一文字だけでもいい。打ち込みましょう!

 

 大学の生活が見えないと「学生は何かと忙しくて稽古できないかもしれない。」と師範代は及び腰になってしまうことが多い。しかし学生センターの杉浦さんが言うのだから、問題なし。55[守]の卒門日は8月24日(日)。それまでに全番回答するよう守全体で盛り上げ、杉浦さんが担当してきた8年間で近大生の卒門率が一番高い期になることを目指したい。

 

初対面でも気軽に話してくれた杉浦さん

 

 

 編集力講座にはオンラインだけではなくリアル編集力講座もある。各地の産地や遺産を訪れ、フィールドワークを通じて、その“編集“方法を学ぶ。この経験が日本に、世界に、日々累積していく様々な課題を解決するための”探し方”を体得することにつながるのだ。

 今はまだ社会にでた「つもり」で学んでいるだけだと思うかもしれないが、”探し方”を知って、社会に出れば、やがて「ほんと」の課題解決に繋がっていくだろう。

 

 歌舞伎役者の血縁関係や師弟関係を一門という。そうだ、55[守]も卒門を目指すのだから教室の仲間は血縁や師弟関係のように、濃い時間を共にすごしながら南を目指す同門であり、一門なのだ。近大生はさらに、大学の門もある。

 

 杉浦さんも近畿大学のご出身。

 だからこそ、目の前の学生たちの背中を、黒子としてぐいぐいと押してくれている。その姿が何より心強い。

 

 

アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)

文/一倉 広美(55[守]師範)


 

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